[DIESEL(ディーゼル)]が年に4回、世界中の様々なアーティストを招いてエキシビジョンを行うDIESEL ART GALLERY。2014年第一弾となる今回は、ブラジルのアートシーンを代表するアーティスト、Stephan Doitschinoff(ステファン・ドイチノフ)によるエキシビジョンを開催。彼にとって日本初となるエキシビジョン『JUREMA PRETA』が2月28日(金)よりスタートした。
日本ではまだあまり知られていないが、母国ブラジルはもとよりアメリカ、ヨーロッパ諸国でエキシビジョンを行い、各地で好評を博してきた彼。ブラジルの民族文化とバロック様式の宗教アートを独創的に組み合わせる作風が高く評価され、多くの賞を受賞してきた実力の持ち主だ。今回、日本初の展覧会が始まる彼に、アーティスト活動を始めるに至った経緯や、自身の創作に対する想いなどを語ってもらった。
【Stephan Doitschinoff インタビュー】
—日本では初の展覧会となりますが、日本の印象はいかがですか?
ドイチノフ:日本に来たのも初めてで、まだ着いたばかりだけど感動しているよ。今まで行った場所の中でも一番だよ。ブラジルのビーチを除いたら、ってことだけどね(笑)。
—どのようなきっかけでアーティスト活動を始めたんですか?
ドイチノフ:元々ミュージシャンを目指していて、自分のバンドをやりながら友達のバンドのためにレコードジャケットを作り始めたんだ。絵はその頃から描いてたけど、収入にはならなかった。しばらくして、友達の勧めもあって雑誌社に自分の絵を売り込みに行くようになったんだ。ブラジル版VOGUEからELLEといった女性誌にL’OFFICIEL HOMMEとか、ブラジルのあらゆる雑誌のために絵を描いたよ。それから作品集を出したらブラジルで一番名誉ある賞を受賞して、それがきっかけで、ビッグなバンドやビッグネームから声が掛かるようになってきたんだ。ストリートアートを始めたのはそれからさ。
—今回の展覧会はどういったコンセプトによるものなのですか?
ドイチノフ:僕は陶器作品や木版画を作ったり、インスタレーションやペインティング、作品集も作ったりと様々な作品を手掛けているので、今回の展覧会では自分の作品の多様性を皆さんにお見せしたいと思っていたんだ。どの作品にもストーリーがあって、それはすべて自分の身近なものと密接に関係している。例えば今回の展覧会のタイトルにもなった『JUREMA PRETA(ジュレマ・プレッタ)』は、もともとミモザという植物を指す言葉で、ブラジルでは瞑想に使ったり集中力を高めるときに使う神聖なものなんだ。それと同時に女性を意味する言葉でもあって、今回は二つの意味をもったその言葉をインスピレーションにした作品をメインの作品にしたんだ。
—ブラジルには有名なストリートアーティストも数多くいますし、街中のいたるところにアート作品があって、ストリートアートが盛んな国として有名ですよね。ブラジルのアートが持つ、他の国のアートと違った特徴は何だと思いますか?
ドイチノフ:ストリートアートにおいて、ブラジルが世界で一番有名な国だとも、特別だとも思わないよ。ストリートアートが一番盛んな国はアメリカだし、イギリスのBANKSYやフランスのJRの方が世界的に有名だし。色んなアーティストが世界にいる中で僕らも同じアーティストとして良い作品を作っているというだけさ。でも僕たちには、アメリカにもヨーロッパにも無い独自のスタイルがある。僕たちは自分たちの文化を大事にしていて、作品も自分たちのルーツから影響を受けているんだ。これは僕もそうだし、周りのブラジル人アーティストもそうだけど、アート製作をするときはいつも自分の内面を深く追求しようとしている。自分の内面を突き詰めた作品は人々の目に留まると思うし、見る人はそこから作り手が作品に込めた想いを見抜いてくれると僕は信じているんだ。
自身の創作活動について終始落ち着いた佇まいで熱心に語ってくれたステファン・ドイチノフだが、2008年に出版され今では完売してしまった初の作品集『CALMA』がオークションで800ドルの値がつけられていると知らされると、思わず驚きをあらわにする一面も。会場では第二作となる作品集『CRAS』が販売されており、彼の作品を深く堪能できる一冊となっている。ブラジル北東部のある村を一面アートで埋め尽くしたプロジェクトなど、スケール違いの彼のアートはアートファンならずとも楽しめるはずだ。今後はパリとニューヨークで個展が控えており、そちらもますます注目を浴びることとなるだろう。この機会に、地球の裏側から届けられたアートの世界に触れてみてはいかがだろうか。
【DIESEL ART GALLERY EXHIBITION:”JUREMA PRETA”】
開催期間:2月28日(金)~5月23日(金)
開館時間:11:30~21:00
会場:DIESEL ART GALLERY
東京都渋谷区1-23-16 cocoti B1F
TEL 03-6427-5955
キュレーション:Gestalten
休館日:不定休
入場:無料
www.diesel.co.jp/art
後援:駐日ブラジル大使館
協賛:マルニ額縁画材店
協力:嶋田洋書/Case Studyo/en one tokyou inc./Jonathan LeVine Gallery/TRNK