Amsterdam Dance Event 2013 レポート

by Mastered編集部

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運河を結ぶ無料フェリーに再び乗り、降り立ったすぐ先にあるTorenで開催されていたWAKYO&VASTのパーティー。先に述べた通り、ADEオフィシャルパーティーの中で唯一の日本人オーガナイズとなったこのパーティーはSUSHIと日本酒を振る舞いながら、A Guy Called Geraldをゲストに3時間のエクスクルーシブセットを披露。今夏にオープンしたばかりのTorenはオーガナイザーであるKnock氏が以前からパーティーをやりたいと思っていた場所で、タイミングがADEと重なったこともあり、正式な段取りを踏んで、開催へと至った。オフィシャルとして認定されるには企画書を提出し、審査を受け、通ったらようやく認定される。こういった情報からもADEがいかにダンスミュージックビジネスを真剣に捉えているかが伺える。ガラス張りに高い天井、広々としたラウンジ、壁にはアート作品が展示され、ラグジュアリーなライティング、デコレーションアートが設置されたオープンエリアは天気が良ければとても気持ちが良いであろう開放的な空間が広がっていた。Geraldはサンセットパーティーに合わせたライトめなセットから深い時間になるに連れて徐々に重低音でディープなセットへ。来場者には日本人も多く、日本人ならではの温かみある演出はとても居心地が良く、緊張しっぱなしだったADEの中で一番ほっと出来た瞬間だった。

先に述べた“アムスミラクル”の様な良いことばかりではない。個人的にどうしても行きたかったMoodymann、Nina Kravizなどが出演するDEKMANTELのパーティーはキャンセル分の当日券が出たかどうかも教えてくれないまま、当然の様に会場前で門前払いとなった。この他、Ostgut TonなどDEKMANTELのパーティーは全てSOLD OUTになっていたと聞く。人気のパーティーのほとんどが前売りの時点でSOLD OUT、当日入場は一切受付けない。たとえキャパシティーに達してなくても入場させないというのがADEポリシーのようだ。ここでも日本の常識は完全に覆されてしまった。

今回で18回目となったADEはアムス市内のクラブ80ヶ所で450のパーティー、2000組以上のアーティストが出演し、30万人以上という過去最高の動員数を誇った。今年は政府のバックアップがなくなり、メインスポンサーにSamsungが付いたことにより、エントランスフィーの急激な値上がりが気になったが、どのパーティーにおいても必要以上に収容することはせず、音を楽しめる環境を徹底しているように思えた。海外(特にヨーロッパ)へ行くとクラブカルチャーの捉え方の違いに落胆させられることがある。求める側であるオーディエンスと受け入れる側であるクラブやアーティスト、そして政府までもが同じ目線でいれるということは、パーティー全体に圧倒的なクオリティーの違いが出る。日本においては奇跡の様にさえ思える。存在さえ危ぶまれている日本において、自分のルーツにさえなったこのカルチャーを終わらせたくはない。外で学んだ多くのことを自分の言葉で可能な限り伝え、広げていきたいと強く思った。

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宮沢香奈

筆者プロフィール

宮沢香奈(みやざわ かな)

セレクトショップでのプレス経験を経て、インディペンデントなPR事業をスタート。レーベルやフェスなど音楽PRも手掛けている。その他、フリーライターとして執筆活動も行う。近年ではヨーロッパを中心とした現地取材を行うなど海外での活動の幅を広げている。
http://www.redbull.com/jp/ja/disciplines/1331579450301/creativity
http://www.houyhnhnm.jp/blog/miyazawa_kana/