対談:相澤陽介(White Mountaineering)×オオスミタケシ(PHENOMENON)

by Mastered編集部

2011年秋冬シーズンより[メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)]をメインスポンサーに迎え、『Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO』として新たなスタートを切った東京コレクション。本日、3月16日(金)より本格的に各ブランドの2012年春夏ランウェイショーがスタートしているが、現在の東京メンズファッションシーンを見渡したとき、最も注目度の高いコレクションブランドといえば、[ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)]のほか、[フェノメノン(PHENOMENON)]の名前が挙がることは間違いないだろう。そんな両ブランドの最新コレクションの発表が間近に迫った今回、Masteredでは現在発売中の「EYESCREAM2012年4月号」に掲載された相澤陽介氏とオオスミタケシ氏による対談記事を特別に全文掲載。現代東京シーンを牽引する両名による初対談をじっくりと楽しんで欲しい。

photography Junko Yoda
text Hiroshi Inada

「あのときやってれば…」って思いながらやるこれからのショーは絶対に面白いと思います(相澤)

— コレクションを始めた時期はどちらが先ですか?

相澤:僕が1シーズン先ですね。そのタイミングで尾花(大輔/N.ハリウッドさんと荒士(柳川/ジョン ローレンス サリバンさんが東京(コレクション)をやめちゃったんですよ。東京のメンズファッションって、大体二つ強いものが出てくるじゃないですか。宮下(貴裕/タカヒロミヤシタザソロイスト.さんのときには尾花さんが、尾花さんのときには荒士さんが出てきたように。自分が一回やって二回目のときに、誘われてフェノメノンのショーを見に行って、これは面白いなって興味を持ったんです。

オオスミ:自分も初めて(コレクションを)やりたいなって思ったときに、まさに尾花さんとか憧れてた人たちが東京コレクションをやめて、違うステージに進んで行った。「やるぞ!」って思ったときにはみなさんいなくなってたから、一瞬「何これ?」ってなったんですよね。「楽しみにしてたのにー」って。張り合うわけじゃないですけど、やっぱりそこに憧れてきた分拍子抜けしたんです。だから、今はホワイトしかいないんだなっていう感じで見てたし、自分のタイミングで次のシーズンでやることができたんです。

相澤:いわゆる東京コレクションっていうのが自分の中でよくわからない存在になったときにフェノメノンがあった。もちろん自分とオオスミくんではショーに対する考え方も違うし洋服作りも違うので、ニュートラルに見えるというか。オオスミくんは絶対に海外に行きたがってると思うんです。想像しただけで楽しいんですよ。フェノメノンがstyle.comに出てきたら面白い。

オオスミ:style.comには出たいなぁ。

相澤:オオスミくんがstyle.comを見てるように、そういう意識がないと東コレも盛り上がらないんじゃないかな。「ホワイトマウンテニアリングもフェノメノンもあと1、2年で海外に行っちゃうんじゃないか」っていう緊張感がないと、意味がないと思っています。お金を取ってるわけではないし、自分達のビジネスの発表会なんです。そこに千人来てもその千人が着たいと思ってくれるわけではなくて、わざわざ時間を割いて観にきてくれるのは、「こいつもしかしたらどうにかなるんじゃないか」っていう期待があると思うんです。

オオスミ:ロックテイストのデザインとかブランドって多いと思うけど、ヒップホップって80年代からできた音楽だから、今のメインストリームで育ってる子って、昔にロックを聴いて育った子のようにヒップホップが自然に体に入ってきてる環境だと思うから、10年経ったらヒップホップがメインの流れになるのは当然だと思う。

相澤:取り入れて吐き出す循環が上手いと思う。曲とか旋律として、ロックもヒップホップでもいいんですよ。昔だったら股ぐらから一本筋が通ってないとおかしいってなってたのが、「なくていいでしょ」ってなってきている。音楽にしてもファッションにしても、「それがその人のスタイルだから」っていうのを認めざるをえない。だから面白いですよね。

オオスミ:逆にヒップホップのメインのアーティストがスタッズのライダース着たり、ロックの人よりハードなロックファッションだったりするのは当然っていうか。今はヒップホップをテーマにするのは珍しいけど、いずれそれが中心になるのかな。

相澤:ヒップホップ=黒人の音楽だと思ってないんですよ、きっと。もっとニュートラルに見てるはずなんです。ヒップホップ=パブリック・エナミーの思想じゃないんです。もっとラフ。

— ロックも古典的なロックもあれば新しいロックもありますからね。

相澤:受け手のほうが楽しめる感覚はヒップホップにあると思う。ロックは放つ人間がカッコ良かったりその人の魂が見えないとカッコ良くならないけど、ヒップホップの場合は受け手のほうでどうにでも変わる。そういう受け手のことを考えてやると面白いことが起こると思うんです。

オオスミ:おれのヒップホップ論で話すと、この今の感じが自分は超Bボーイなんですよ。それぐらい今のヒップホップのスタイルが昔のイメージとは全然違うんです。そういう意味では、おれが急に変わったって思われるけど、全部流れを汲んでるだけで、実は全然Bボーイなんです。捉え方はみんな違うからそういう意味で違うって思われるかもしれないですけどね。

相澤:若い子は自分よりオオスミくんのスタイルを真似たがると思うんですけど、簡単には真似できないと思うんです。経験値が違うでしょ。断片的に見てきたものと継続的に見てきたものの違いがあって、昔からオオスミくんを知ってる人のほうが今の服を面白く見れると思うんです。こないだのショー(2012ss)(音楽が)山下達郎でウケ狙ったでしょって見る人もいると思う。自分も初めは思った。同じタイミングに同じ仕事をやっていて、自分としてはすごい面白かったんだけど、これを勘ぐってみる人も多いだろうなって。曲が流れた瞬間に、ほぼ全員が「面白かった」って言うと思った。誰に会っても「意外だったよね」、ちょっとしたら「あれでショーをやるのってすごいよね」ってならざるを得ない空気になる。でも自分は本心は違うんじゃないかなって思ったんですよ。

オオスミ:超ウケるかわりに一番リスクがでかい選曲だと思ってやってたんだよね。とんでもなく駄目か、とんでもなく当たるかどっちかだなって。それを勝ちに持っていくにはどんだけいい曲かって思わせることと、洋服含め内容が力強くないと負けてしまうし、三日前まで使うか使わないかを悩んでたんです。他の曲でも全部組んでて、その二択だったんですよ。でもずっと山達を聴いてフィッティングをしてたんですけど、駄目っていう人も相当いるからリスクが高すぎてどうしようか悩んでて。あの曲がかかったら絶対に意外だし、そういう付加価値みたいなことで選んでたから真っすぐではないけど、ただ好きだからやったわけじゃなくて。

だから、あそこを繋いで見て欲しかったなって今でも思ってるんです(オオスミ)

— 3.11以降、音楽の響き方が変わったじゃないですか。山下達郎さんもそうだし、全体の空気感が変わっていく中で音の響き方も変わって。ナシだったものがアリになったり、その逆もあったり。

相澤:3.11は、自分にとってトラウマのよう。ずっと残ってしまう出来事は3.11で中止になったコレクション(2011aw)、自分はあのとき半分泣きそうな気持ちでムービーを作っていました。オオスミくんも絶対にショーをやりたかっただろうなって勝手にショーのイメージをしたの。自分の服は曲を抜いたらストーリーは要らないんです。でもオオスミくんの服はストーリーが大事のような気がして。写真じゃ伝わりきらない。あれはもしかしたらこないだの山下達郎よりももっとすごいものがあったんじゃないかなって思う。

オオスミ:ぼくまじで自分の山場はあの回だったんですよ。そうしなきゃ駄目だって自分を追い込んでて。どう見えたかはわからないけど、テンションが超マックスだったんだよね。そこでショーが中止になってショックだった。同時にあまりに非現実的な状況で頭が対応できなかった。

相澤:ショーってすごい労力を使うんです。半年に一回しかできないから苦労してるので諦めがつかない。でも日増しに原発の問題が出てきてカミさんと子供をどうにかしなきゃいけないってなって個人的な心配も出てきた、そのうえで無理だってギリギリのところでなって。「中止にします」って言ったあとにオオスミくんのルックを見たらすごい悲しくなっちゃったんだよね。東京でのショーは自分が一番早かったから、自分が止めるって言ったらみんな止めると思った。自分が止めたのにどこかがやったら非難されるだろうし。

— お互い対照的な見え方でありながら通じる部分が見えてきましたよね。最大の共通点は、“ロストテープ”がある二人なんだなって。「あのときのあれ」っていうのができなかった。それを経てのこないだのコレクションだったりするわけで。もしあのときやってたら次は違う形になってたわけじゃないですか。

相澤:違いますね。

オオスミ:自分が三回目で。三回目休んでる場合じゃないんですよ。一回もそんなことは許されないっていうか、そんな中でまさかそういう理由でなくなるとは想定してなかったし、あまりに貴重な一回がなくなったから。

相澤:オオスミくんがあのときやりたかったことをやれなかったということは、きちんと伝わらないということなんですよ。自分もムービーを作ったけれど、ショーとは違うものとして作った。あのときはNYの展示会も一回目だったし、自分の目標としてるものが見えてきたりして、やっぱりあのとき、あのショーをやらなければいけなかったんです。自分は今でもやればよかったって後悔してる。でも世の中が許さなかったし、あのときのタイミングで中止っていうのは間違ってないとも思ってる。ただ、「間違ってなければいいのかな?」とも思う。ファッションって続けることも大事だから。東京のファッションショーが消えたら絶対にみんな悲しいでしょ。もしかしたら自分とオオスミくんだけでもあのときやっていれば、何か別の物が見えたかもしれない。でも自分の決めた日付で自分のパフォーマンスをする、それしかないんですよ。それをずっと背負って自分たちはこれからもやっていくし。ずっと「あのときやってれば…」って思いながらやるこれからのファッションショーは絶対に面白いと思います。一回ミスした人間の二回目は面白いです。オオスミくんはあのショーをやらなかった後に山下達郎だよ。

オオスミ:だから、あそこを繋いで見て欲しかったなって今でも思ってるんです。それが伝わってなかったらちょっと違うから伝えたかったっていうのはあります。

— それを引きずりながら糧にしていく世代。パリに行くっていう方向ももちろんですが、東京が盛り上がれば東京でっていう新しいやり方を作っていける世代でもあると思うんですが。

相澤:いや、自分は、やっぱりパリに行かないと自己完結しないんです。ショーを中止にして後悔したおかげで、パリに行かなかったら一生後悔するのがよくわかる。ファッションって旬なものだから、チャンスってそう何回もないと思うし。おれもオオスミくんももしチャンスがあったら絶対に行かないと駄目だと思う。

— チャンスがあったらやるし、できたらやるっていうベクトルは揺らがないですね。

オオスミ:はい。借金して一回やろうと思ったらやれますけど、そうじゃなくて続けることとか色々なことを考えると、もうちょっとかかるかなっていう。

相澤:自分らが次のステージに行くのを見て新しいブランドが出てくるわけだし。次のブランドにバトンを渡す作業、自分達がやってきたことをちゃんとスライドしていく作業って本当に大事だと思うのね。それを上の人達はやってくれてるから。

相澤陽介
77年生まれ。06-07AWより、自身がデザイナーを務めるWhite Mountaineeringをスタート。10SS東京コレクションにて初のランウェイショーを行い大きな反響を呼ぶ。11AWは震災の影響によりショーを中止し、映像でのコレクション発表を行った。12SSコレクション「DUNE ROVER」が立ち上がっている中、12AWコレクションのランウェイショーを3月19日に控えている。
www.whitemountaineering.com

オオスミタケシ
04年より自身のブランドPHENOMENONを設立。10年AW東京コレクションにてランウェイデビューを果たす。その高いオリジナリティと独特のセンスは国内はもとより海外からも注目を集める。11AWは震災の影響により写真展示でのコレクション発表を行った。12SSコレクション「TOY BOX」が立ち上がっている中、12AWコレクションのランウェイショーを3月23日に控えている。
www.phenomenon.tv

そして現在、Masteredではこちらの対談にもご登場頂いた相澤陽介氏率いる[White Mountaineering]とのコラボレーションにより実現したスペシャルコレクションを期間限定で販売中。
現在休止中のBLKにカラーオーダーをかけたラゲッジベスト、今シーズンはリリースされていない定番パンツのスペシャル・エディションなど、いずれ劣らぬ珠玉のアイテム群は2012年3月31日24:00までの限定販売となっていますので、くれぐれもお見逃しのないようご注意を。
https://mastered.jp/shop/

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