スタイリスト 池田尚輝に聞く、アウター論。
「コートは着るものであるけれど、唯一、他人の前で脱ぐものでもある」って言葉を見て、すごく感銘を受けたんです。(池田尚輝)
— 池田さんがアウターを選ぶ時の基準について教えてください。
池田:冬のワードローブの中でアウターって占める面積も大きいし、その分値段も張るので、どうしても慎重にはなりますね。冒険したい時も、手堅くいきたい時もあります。もちろん、ひと口にアウターといっても、色々な種類がありますが、それぞれ1つは持っていたいなという気持ちがあって。基本的に自分は、遊べるもの、アクティブなもの、ちょっとエレガントなもの、時々プラスアルファって感じで集めています。その中で「今年はこのアウターをアップデートしたいな」と思った時に、新しいアウターを購入する感じですかね。ディティールとしては、着心地っていう部分を一番気にしますね。僕は結構ポケットを使う人間なので、ポケットも大きな判断材料になります。でも、そういうことをあえて無視してでも着たいデザインのアウターもありますし、アウター毎に求める条件は変わるんですけどね。
— スタイリストという職業柄、たくさんのアウターをお持ちのイメージがあるのですが。
池田:種類としてはたくさん持っているんですが、ミニマルでいたいという気持ちもあるんですよね。だから1着でどのくらいのシーンをカバー出来るのかってことも購入する際には考えますよね。そういう意味では、より振り幅が広いものだとありがたいですかね。これはアウターだけでなく、バックだとか、他のアイテムに関しても言えることですが。
— スタイリングの際に選ぶアウターと、自身が着用するために選ぶアウターにはどんな違いがありますか?
池田:稀に合致することもありますが、スタイリストとして選ぶとなると、その時に作っている作品の構成や、テーマによって、ものを選ぶことが多くはなりますね。自分が着るとなると別で、自分のワードローブとの相性とか、生活のパターンにあてはめて考えるので、同じ選択をすることは少ないです。
— 過去のアウターに関連した印象的な出来事が何かあれば教えてください。
池田:昔ニューヨークに住んでいた時期があって、冬にBlue Noteでコートチェックのアルバイトをしていたんですよ。その時、色々な人のコートを見て、「こういう人はこういうブランドのアウターを着るんだ」と勉強になった記憶はありますね。昔、雑誌のコラムか何かで、「コートは着るものであるけれど、唯一、他人の前で脱ぐものでもある」って言葉を見て、すごく感銘を受けたんです。コートチェックのアルバイトをしていた時、コートを脱いだ時にグローブをポケットに入れて、マフラーを袖の中に通して、さっと渡してくれる人達がたくさんいたんですが、そういう脱ぐときの所作って、とてもエレガントで粋なものなんですよね。自分の中で、アウターの見え方が微妙に変わった瞬間でした。
— 今回、[WISLOM]のアウターの中から、N3-BのOPERAを選んだ理由を教えてください。
池田:今年はフーデッドのアウターをアップデートしたいという気持ちがあったので、N3-Bで、且つダウン入りのこちらを選ばせてもらいました。寒い冬の日でも、間違いなく暖かさが保証されるんじゃないかなと思いまして。