We Love LWT Forever !! 〜 Liquor,woman&tearsという舞台の終焉とその未来(前編)

by Mastered編集部

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次にご登場いただくのは、オープン当初からLWTを大々的に取り上げた紙面作りを行ったWARP MAGAZINEの前編集長、伊藤啓祐氏です。商品構成の変遷にも影響を与えた同氏が語るLWT、そして小木基史とは…。

写真:浅田 直也

ヒップホップ、そしてエレクトロ

— 今回LWTのクローズ特集ということで、伊藤さんがLWTに対して思うところを語っていただきたいのですが。

伊藤氏が編集長を務めていたころの<br>WARP MAGAZINE。

伊藤氏が編集長を務めていたころの
WARP MAGAZINE。

伊藤氏(以下敬称略):僕はWARPの3代目編集長になるんですが、その前任の編集長の時代にハイエンドとストリートを行き来するようなコンセプトを掲げていまして、その流れでMr.ポギーと出会ってると思います。当時彼はユナイテッドアローズのプレスだったんですが、エッジの効いてる方だったので気にはなっていて。その後『ヴォルコム(VOLCOM)』のパーティ辺りから仲良くなったのかな。それで彼のLWTプロジェクトも、なんとなくではありますが耳にしていました。
その後、僕が副編集長になったあたりから、今までエクストリームスポーツのイメージが強かった誌面を、もっとファッション寄りにしていこうという方針になったんです。そのとき、ファッション面でのキーマンになっていただこうと思っていたスタイリストの橋本敦君からも「小木君がおもしろそうなショップをオープンするよ」と聞いたんです。
これは…と詳しく話を聞いてみたところ、これからのWARPが目指す世界観にピッタリなコンセプトだったので、このショップに軸になってもらおうと考えました。
ハイエンドなことをやりながらも、ストリート感というか、ヒップホップの匂いも感じられるこんなお店って、世界中どこを見てもなかったですし。僕はファッションのことをそこまで詳しく知ってるわけじゃなかったんですけど、このお店はまさにキーショップだったんですよ。

— なるほど。それからLWTとは様々な企画を一緒にやってきたと思いますが、特に印象に残ってるものってありますか?

伊藤:いっぱいありますけど、ニーヨ(Ne-Yo)が来日したときにファッションシューティングをした時ですかね。ああいう海外のトップアーティストが、ファッション誌の撮影のために時間を割いてくれる機会なんて本当に稀なので、印象深いです。ニーヨ本人もすごく喜んでくれて、写真を他でも使いたいと言ってくれたりしました。

あと企画じゃないんですけど、『リボルバー(REVOLVER)』のグラフィックを手掛けているアーティスト、ソーミー(SO ME)がアートワークを担当したカニエ・ウェスト(Kanye West)『Good Life』のPVを一緒に観たときに、Mr.ポギーが「これはヤバい」ってなって、それがきっかけでリボルバーをLWTでも展開するようになったのも印象的だったかな。
リボルバーがあったり、MCMがあったり、初期にはシュプリームも置いてあったりとか、いろんなジャンルをミックスして楽しんでることがエレクトロのムーブメントに通ずるものがあると考えていまして、その感じが斬新だったんですよ。

そんな感じで 2007年から2008年にかけて、その辺のキーマン達がまとまってきた感はありました。世代が近いっていうのもあるし、みんなが前を向いて新しいものを追い求めてる空気もありましたから。Mr.ポギーや『フェノメノン(PHENOMENON)』のオオスミ(BIG-O)さん、VERBAL君や『ロックスター(ROC STAR)』のダルマ君(DEXPISTOLS)、他にもリボルバーのKIRI君がいたり、マドモアゼル ユリアちゃんがいたり、それぞれがファッションや音楽など自分の得意技を持ってリンクしていきましたよね。
この人たちの作り出すシーンは色々やりやすくて、良いバイブスが流れていただけに、その中でも存在感のあったLWTがなくなってしまうのは寂しいですね。

— カルチャーを作ってるな、というのは外から見ていても感じました。クルー感というか、良いコミュニティが構築されていましたよね。

伊藤:そうですね。クルー感を出すというのは、前の編集長のときからのモットーだったんです。人と人とを繋ぐのが自分たち編集者の仕事なので、ファミリー感を大事にしていました。僕は「今一番どこが楽しいんだろう?」っていう好奇心を大事にいろいろな現場に足を運んでいたんですが、そこからさらに編集上だけじゃなく、もう一歩踏み込んだところまで付き合っていて。興味があるから自然とそうなっちゃうんですけど(笑) そんななかで信頼関係が築けたのかな、と思ってます。やっぱり作り手が楽しみながらページを作ったのって、読者にも伝わりますもんね。

— では逆に、編集者としての視点から「LWTはもっとこうした方が良かったのでは」と思う点はありましたか?

伊藤:例えばフェノメノンだったら、人気のあるシリーズも入れれば良いのに、なぜかMr.ポギーはそれを置かないんですよ(笑)
あと、アツいものに弱い、っていうのは感じましたね。勢いに流されそうになってる姿を何度か見ました。でも、すべては結果論ですしね。…あっ、そうだ、値段は高過ぎですかね。

(一同笑)

— ちなみに紙面をエレクトロの方に振っていったときの、例えばヒップホップサイドの人たちからの反応はどうだったんですか?

伊藤:最初はもう「何それ?」って感じでヒドかったです。もちろん全部が全部じゃないですけど。でもオオスミさんや井口さん(IGNITION MAN)とは、ヒップホップっていうのは進化するものだから、エレクトロでもロックでも、その時代の新しいものをどんどん取り入れて行くのが、ヒップホップの正しい姿なんじゃないかっていう話をしていて、自信を持ってやってました。黄金時代と言われている90年代のモノでもオールドスクールでも、音の感じなんかは全然違いますけどどちらもヒップホップですから。どこが好きかっていうのがそれぞれの解釈で。
その辺、最初のコンセプトにしばられ過ぎずに商品構成をどんどん進化させていったLWTは、やっぱりヒップホップなんだなぁ、と。

— LWTで展開していたアイテムで、印象に残ってるものってありますか?

本来「110」で「伊藤」となるように<br>購入したキャップバイトは、<br>「0」のみ行方不明とのこと…。<br>(伊藤氏私物)

本来「110」で「伊藤」となるように
購入したキャップバイトは、
「0」のみ行方不明とのこと…。
(伊藤氏私物)

伊藤:『ティサ フェノメノン(TI$A PHENOMENON)』は印象に残ってますね。やっぱり、ああいう「繋げる力」っていうのはすごいと思います。あとはキャップバイトですかね。じつは僕、LWTの商品それくらいしか持っていなくて…。

(一同笑)

— あんなに取り上げていたのに!(笑)

伊藤:情報収集にはよく通わせてもらってたんですが…見る分には刺激的で最高なお店ですからね。あっ、これが今回クローズの原因ですかね?(笑)
とりあえずMr.ポギーにはこれからもカルチャーとファッションを繋いで、つねに新しいモノを追いかけてやってもらいたいなと思ってます。海外にも期待してる人がたくさんいるんで。

伊藤啓祐氏

PROFILE

伊藤 啓祐(いとう けいすけ)

長年WARP MAGAZINE編集部に在籍し、3代目編集長に。
現在では某ブランドのプレス業務と、WEBマガジン『COLORFARM』の編集長を兼任する多忙な毎日を送る。音楽とスニーカーをこよなく愛する1976年生まれ。eyeTOKYO代表。
http://www.colorfarm.jp/

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