本来であれば「新ショップの外観・内装を大公開!」的なところから前編をスタートさせたかったのですが、旧店舗のクローズから新店舗のオープンまでが中4日しかないこともあり、完成がオープン日ギリギリになってしまうとのこと。
それなら…と、移転へ至るプロセスや新店舗のコンセプトなどを中心に、ベンダーの運営母体であるTNPの代表サーフェン智氏(写真右)と、ショップのデザインを手がけたMetronome Inc. 山嵜廣和氏(写真左)の両名にクロスインタビューを敢行。オープン記念として発売されるアイテム紹介と併せてお届けしたいと思います。それでは、どうぞ。
中目黒を2010年代のカルチャータウンにしたい
― 移転先は目黒川沿いの倉庫のような物件ですよね。
サーフェン智氏(以下智、敬称略):そうそう。以前はリサイクルショップだったところ(→地図)。
― 最初に移転の話が出たのは、いつぐらいなのですか?
山嵜廣和氏(以下山嵜、敬称略):ここが4軒目でやっと決まったから…さかのぼると1年以上前になるのかな。
智:代官山の裏の方やら、八幡通り沿いやら候補物件はあったんだけど、タッチの差で別のところが入っちゃって。
山嵜:でも、最終的にキタねぇ。
智:キタねぇ。
― この物件のどんな所に惹かれました?
智:とにかく探してる条件は「広い」とか「天井が高い」っていうところだったから、ほぼ完璧で。
山嵜:ベンダーっていうお店として、普通のテナント物件に入るっていうのは違うかな、っていう話はしてたんだよね。ただその分、今回の場所は初期設備も整ってなくて色々大変なところもあったけど。
智:トイレもなかったもんね。
山嵜:排水工事からスタートして。
― えー、それはすごいですね。そういう場合、費用は借り主負担になるんですか?
智:うん。
山嵜:でも、そういう条件を差し引いても、物件が持つ迫力がすごかったから。
智:しかも事務所からも目と鼻の先だしさ。最初は代官山だけでしか考えてなかったんだけど、事務所がある分やっぱり中目黒界隈に生活の中心が移ってきてるし、街としても代官山よりこっちかな、っていう気もしてて。
― ここへ来る途中にちょっと見てきましたけど、随分と完成に近づいてきましたね。
智:だって、職人さんたち随分遅くまで頑張ってくれてるもん。
山嵜:でも、遅くなるとみんな無口に(笑)。職人さん達には感謝しています。
― 物件が決まってからの内装作りは、どんな雰囲気で進行していったんですか?
山嵜:最初はあんまり深く考えずに、どこに何を置くのかゾーニングを決めたラフを何パターンか作って。
智:レジとかフィッティングとか不可欠な場所をキープしつつ、どれだけ空間を無駄にせず有効利用できるか、っていうところだよね。山ちゃんとはもう長い付き合いだし、今までにも事務所の什器とかを作ってもらったりしてお互いのセンスや好みは分かり合えてるから、ある程度お任せして。
山嵜:この物件が決まる前ぐらいから、『ノンネイティブ』が2シーズン前にウェブでやってた『ドッグヴィル』みたいな何もない空間に立て込みだけ、っていう感じのショップを広い場所で出来たらイイね、なんて話はしてて。
― 智さんの方からコンセプトを明示して、というよりは雰囲気重視で進んでいった感じですか?
山嵜:そうだね。場面場面でキャッチボールはして。智から出てくる漠然としたイメージに対して「こういうコトでしょ」って具現化する作業。それが俺の仕事だと思ってるし。でも、そこには確実に俺のフィルターというかなんというか…そういうものが介在しているんだけど。
智:でも、最後のところでガラっと変えちゃったり。「この木の部分、やっぱりメタルがイイ」とか(笑)。
山嵜:で、すぐ携帯で業者さんに電話して、「発注止めて!ストップストップ!!」みたいなやり取りを(笑)。
(一同笑)
― あと、プロップアーティストのENZOさんも関わっていると小耳に挟んだのですが。
智:彼には最初、扉を作ってもらおうって話から始まって。
山嵜:什器は作り込むっていうより、アンティークの家具を買って加工しよう、って話になってたから。
自分が内装業だから少し矛盾しちゃうんだけど、内装屋さんだけで作り上げた内装ってなんか分かっちゃうんだよね。だから、そこにワンテイスト足したくて。もちろんカッチリやるところがあった上で、そうじゃない部分が存在することが重要で。そういう所を職人さんに「それっぽく」って言って作らせちゃうのが一番ダメ。しょぼいモノになっちゃう。
智:変なレプリカになっちゃうんだよ。
― 狙いすぎた「抜け感」は一番微妙ですもんね。
山嵜:だから、そこはそういう仕事を本業にしてる人に頼むのが一番イイ。
智:昔からENZOくんにも色々作ってもらってるから、今回もいろいろ画像とかイメージを伝えて、「こんなモノを作って欲しい」ってお願いしたんだよね。
山嵜:やっぱり同じところを見てきたっていうか、共通言語がある人との仕事っていうのはやりやすいからね。「当時あそこにあったあの店がカッコ良かったよね」とか「あの映画のあのシーンの…」みたいな会話が通じるような。
― そんなこんなをtoeのツアー中に(編集注:山嵜氏は人気ポストロックバンド「toe」のフロントマンでもある)やってたってことですか?
山嵜:いや、ツアー行く前に大体やって…そんなことないか、ツアー中か。
(一同笑)
智:で、山ちゃんがツアー廻ってる間に、僕らは店の中に置くものなんかを探しに茨城のデカイ倉庫に行ったりして。あとはカルチャー全般を扱うようなコーナーを作るんだけど、そこで展開しようとしてる雑誌や写真集を集めたり、福ちゃん(編集注:現TNP営業の福永良輔氏。無類の音楽好きとしても知られる)がセレクトしてるCDも人気が出てきてるから、さらに拡充を図ってみたり。
― 良い意味でより雑多なお店になりそうですね。
山嵜:ブランドのデザイナーだったりディレクターだったり、レストランのシェフだったり、そういう中心となる人の色がガッとお店に出てるべきだと思うし、実際カッコイイと思ったりするからね。
智:クセがあった方がイイしね。
山嵜:だから、ベンダーをブティック風に仕上げるのは違うと思うし、智の好きなモノをたくさん入れ込んでもらって、俺は外箱を仕上げるっていうか、全体の空間を作り上げて整えるって感じかな。
― なるほど。完成が楽しみですね。
智:じつは、まだ決まってない什器が数点あるんだよね…(笑)
(一同笑)
― もう随分差し迫ってますけど(笑)
智:その辺りも含めて買い揃えるために、この3連休でタイに行こうと思ってたんだよ。
― でも今行ってたら、進行が止まっちゃいますよね?
智:うん。だから落ち着いたら行こうかって。連休中で飛行機のチケットも高かったし(笑)
山嵜:まぁそんなに完全フィックスな什器があるわけじゃないから、流動的に完成させていくのがイイじゃないかなと。
智:ただ、今までは場所柄ベンダー目当てで来てくれるお客さん中心だったけど、今度は路面に出るわけだから、フラッと立ち寄る人に対しても空間の魅力を伝えないと、とは思ってる。
全体的には、インダストリアルな部分が感じられるけど、どこか異国感、エキゾチックな雰囲気も漂わせたいし。でも、どこかに偏りすぎてもしょうがない。やっぱり木とかも使いたいけど、完全にナチュラル志向にもなりたくはない。どこかしら都会的でありたいし、うまくミックスした空間に仕上げたいよね。
それで、やるからには全体で盛り上げて、中目黒を2010年代のカルチャータウンにしたいね。
― なんだか、とても面白いお店に仕上がりそうですね。
目黒川の名物でもある桜の開花とタイミング的にもバッチリですし、3月27日は素敵なオープニングになることを期待しています。
今日はありがとうございました。
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