他のお店が先にやっているモノはやりません
— ちなみに仕入れってどうしてるんですか?
足利:さっき言ってたwkkは、今BLUE LUGのスタッフなんですよ。それで、彼女が海外のショップを巡ったりしてます。彼女はタトゥーのアーティストをしてるくらいなんで、いろんな所に行ってるんですよ。もうとにかくフットワークが軽くて。そして仲間がすごく多いんです。
— そこから自然と面白い情報やアイテムが集まってくると。
足利:そうですね。そんな仲間を含めた、身近で起こってる面白いことを日本に紹介したいってwkkも僕も思ってるから、二人三脚で仕入れをしている感じですね。例えばwkkが「こんな面白いモノあるよ」って見つけて来ても、それがもし他の日本のサイトに出てたらウチでは展開しません。
— 結構ストイックなセレクトなんですね。
足利:最初の一年は本当にそれを徹底してました。今は消耗品も扱ってるんで、そこは別なんですけど。
— なるほど。その徹底ぶりは、画一化されがちな今の洋服屋に聞かせてあげたいですね。
足利:だから「こんなおもしろいモノ、ウチにしかないですよ」って胸を張って言える感じでした。
商品も最初はほとんど輸入物だったんですが、今は国内の割合が増えてきました。問屋さんとかで仕入れられるようにもなってきたんで。
— 今はどれぐらいの割合になっているんですか?
足利:半々くらいですかね。
— ちなみに海外の買い付けには、wkkさんという方と一緒に行っていたんですか?
足利:行ってたこともあるし…
— そのまま送ってもらうこともあると。
足利:そうですね。
— 今はメールベースで画像確認も出来ますしね。
足利:でも、取引するにあたっては、モノの善し悪しももちろんそうなんですけど、最後はやっぱり人なんですよ。騙そうと思えば騙せちゃうんだろうし。だけど、なんかね、「大丈夫だろ」と思える、「コイツ面白いな」っていうところとしかやってないんですよ。だから面白い。
オーダーをするときも、そんなに細かいこと言わないですし。しかもみんなハンドメイドなわけじゃないですか。だから向こうがプライベートで用事があれば、その間こっちは進まないし。だからあくまでも向こうのペースが基準で、一応アバウトに「このくらいまでにね」っていう納期の指示だけ出して、任せてます。あとは、「これは日本で見てもらいたい!」っていう新作が出来たら、いつでも持ってきていいよっていうスタンスでやってます。でも悪いモノは持って来ないですね。
— では、取引先とはとりあえず一度は会っているということですか?
足利:概ね会ってます。自転車関係のショーがあると僕も行くし、取引先も出展してたりするから、そういうところで会ってるかな。
— なるほど。ちょっと話は戻りますが、最初の通販サイトを立ち上げた時、集客はどうされたんですか?
足利:広告を打つ予算もないから、基本口コミだけですね。
— では、自然発生的に広がっていった、と。
足利:そうですね。完全自然発生。何もしてないですもん。
— ちょうど世の中のムーブメントと重なったと。
足利:そうですね。まだピストっていう言葉がいくらも無かったから、検索するとどうしても僕のところばっかり出てたっていう状況ですし。
— やっぱりタイミングも抜群だったんですね。
それと説得力もありますよね。自分がハマっちゃって始めたっていう。
足利:でも…マウンテンバイクもそうだし、ロード(バイク)みたいなチャリンコもとりあえず洋服屋さんには流行るじゃないですか?
— はい。感度は高いですからね。
足利:僕もミーハーだから、とりあえずハマるんですよ。続かないんですけど。でも、ピストは続いてるんですよ。
それで、逆に自転車はピストだけじゃない、っていう発想にもなってきてて。店のスタッフが、元々メッセンジャーなんですけど、僕らなんかよりずっと早く、どこから知ったのかピストに乗ってたんですよ。でも、今彼はロードに乗ってるんですよ。グニャグニャなフレームのファニーバイク(編集部注:前輪の経が後輪よりも小さい自転車)で、普通のロードに乗ってる人から見たらワケの分からないチャリなんだろうけど、超カッコイイんです。彼にはそういう美意識がすごくあるんですよ。だからピストでも「こんなの出来るんだ!!」っていうのを組んでくれるんですよ。
— そういうスタッフがいるお店っていうのは魅力的ですね。
足利:例えば、ピストも合わなければ乗らなきゃいいんですよ。でも、あの世界観っていうか感覚は、どんな自転車でも応用できるってすごく思うんです。洋服だってそうでしょ? 感性の仕事っていうか。自転車も軽さとか速さだけ求めてたら、勝てる気もしないし、そもそも楽しくないからやる気もしないし、っていう事をよく話してるんですよ。とにかく感性で勝負しようって思ってます。
— それがこういったアイテムのセレクトに繋がるわけですね。
先ほど「ピストは飽きない」という話が出ましたが、その要因としては何が一番大きいですか?
足利:飽きずに続いてるのは… やっぱり、最初はファッション的な部分で入ったんですけど、実際乗ってみると本当に便利な乗り物なんですよ。「これがなかったらオレ、どうすんだろ?」っていうぐらいの。
— なるほど。ピストに乗るまでの交通手段はどうしていたんですか?
足利:普通の自転車にはずっと乗ってましたね。
— 正直、東京にここまで自転車が根付くとは思わなかったんですよ。坂が多いですし。
大阪の洋服屋さんには、昔からロードが流行ったりしてましたけど。
それがピストになった途端、一気に大爆発ですもんね。
足利:そうですね。なんか、今まで乗ってたタイヤが太めでフロントにサスペンションが付いた自転車なんて、自分でいじろうと思ったことは一度もなかったんですよ。自転車屋さん任せはあるにしても。それは実際、いじるのが難しいからで。でもピストって簡単なんですよ。
— 確かにそういうところは大きいかもしれませんね。
足利:それで、自転車の知識が全然無くても、なんとなく想像がつくんですよ。「ここをいじれば、ここが取れそう」みたいなことが分かるんです。あんまり安易なのは危ないですけど。実際今ウチなんかの店で小さなパーツも簡単に変えられるから、そんなのがみんなイイんだと思うんですよね。自分だけの自転車に変えて自己表現したいって思うから、買い物にも来てくれるわけですし。
— ミニ四駆感覚なんですよね、やっぱり。
足利:そう。今まで気軽に自転車に乗ってた人って、自分でいじろうって感覚がほとんどないはずですから。
— 僕もダート用の自転車に乗ってるんですけど、まったくいじる気は起きないですから(笑)
足利:でも、そうするとだんだん乗らなくなってきちゃうんですよね。愛着もそこまで湧かないし。
自分で組んだチャリンコって…ついこの間盗まれたんですけど…、それは僕がはじめて買ったフレームなんですよ。それを塗ったりはがしたり、オーバーホールしたり、部品もチョイチョイ変えながらずっと乗ってたんですよ。もう見る影もないんですよ、最初に比べたら。だから盗まれた事に対しても、そこらへんで買った自転車を盗まれたのとは全然違って。思い出っていうか気持ちが入っちゃってますから。
— ブログで拝見しましたが、熱い気持ちがよく伝わりました。
足利:よくそんなのを盗れるな、って思いますね。
— ほんとですよね…。いやな世の中です。
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