『TOMONI行こう』足利敏浩(BLUE LUG オーナー)

by Mastered編集部

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オンラインショップからスタートし、今や絶大な人気を誇るピストショップとなったBLUE LUG
そんなお店を切り盛りするのが、商品のラインナップ同様、常に肩肘張らない自然体が魅力の足利氏。
都内随一の個性派ショップとして鳴らすこのBLUE LUGについてはもちろん、気になるピストバイクシーンについてもたっぷりお話を伺ってきました。

足利さんが紹介してくれたモノ一覧を先に見る >>

写真:浅田 直也

ハンドメイドの魅力

— 今、気になってるモノを聞いてるんですが…

足利氏(以下敬称略):はい。やっぱり自転車ですね。

— 今や人気ショップのオーナーという立場ですが、そもそものきっかけは何だったんですか?

足利:きっかけは…もともと僕は洋服のブランドをやっていたんですけれども、そのなかでアメリカに住んでいるwkkっていうタトゥーアーティストの友達が急に「競輪のフレームが欲しい」って言い出したんですよ。
なんでも向こうの仲間が、みんな欲しい欲しい言っていたらしくて。「何本でもいいから競輪のフレームを探して」って。
急になんでだろう? と思って聞いてみたら、なんでも競輪のフレームをベースに組んだピストっていう自転車が向こうで流行っている、と。
なので、そういうコたちが日本に来て、中古の競輪用フレームとかパーツでピストを組んで帰るんですよ。

— 日本は競輪発祥の地ですもんね。

足利:そうそう。それで、そのwkkがサンフランシスコとかハワイとかに行ったりしてるなかで作った仲間を、ぞろぞろ引き連れて帰ってくることがあって。
その頃僕が借りてた原宿の事務所には多少ゆとりがあったから、彼らがそこに競輪のフレームを置いていったり、逆に僕が都内のそういう店を案内したりしてるうちに、「なんだ、これ?」って思うようになっていったんです。
そうこうしてるうち、日本にもほんの少しずつピストの情報が入ってくる感じになってきて、いろいろ調べてるうちに「これはヤバい!! オレも組む!!」ってなって。それでその外国人の子たちに、何がカッコイイのかとか色々聞いたり、画像を見せてもらったりしてました。

— 情報を集めるようになったわけですね。

足利:でも当時日本で『ピスト』っていうキーワードで検索しても、『アロマセラピスト』とかしか出て来ないんですよ。だからアメリカのサイトとかを探して、必死で画像とか見つけて。仕事そっちのけとまでは言わないですけど、時間さえあればとりあえずカッコイイのをいろいろ探してました。
そういう中で実際ピストに乗りはじめて、周りにも少しずつ興味を持ってくれる人が増えてきて。
あとはやっぱりwkkのパイプが太かったから。そこから、海外のピストカルチャーに絡んでる人たちが日本の競輪に感化されて作ってる、こういう帽子だったりバックだったりが本当にカッコイイから、日本にも紹介したいってことになって。これ、みんな手作りなんですよ。素人に毛が生えたようなもんなんですけど。

— でも、コツコツと一個一個丹精込めて作ってるってわけですね。

足利:そうそう。なんか、僕らが作ってきた洋服って、やっぱり何百枚っていう単位で工場に出して…。日本の業者に出すんだけど、結局は中国で作ってる…とかっていうのをずっと見てきたんで、惹かれるモノはありますよね。

— なるほど。その感じは分かります。

足利:まぁ、手作りで雑なんだけど味がある、っていうか。暖かみがあるっていうか。そういうのも紹介したいなぁと思い始めて、片手間にハンドメイドのメッセンジャーバックをオンラインショップで売りはじめたんです。カスタムオーダーにも対応してくれて、パンダの絵を刺しゅうしたりとか、名前を入れられたりできるっていうアイテムだったんですけど。

— それはいつ頃の話ですか?

足利:通販を始めたのは2年2ヶ月前ですね。

— その時は、洋服を作る仕事をしながら、ですか?

足利:そうですね。本業の片手間でやってました。その頃洋服の方を一緒にやってたパートナーの子がいたんですけど、僕はすっかり自転車屋さんをやりたくなっていて。
この業界はドンドン伸びると思ってたから、「お店を出したい」と思って。それで結局、その一緒にやってた子がブランドを引き継いでくれることになって、今は全く別でやる形になりました。

— というと、足利さんが抜けたということですか?

足利:そうなんです。なぜか社長だった僕が抜けた変な状態。

(一同笑)

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— それで、まずは通販だけを?

足利:はい。ウェブでの通販を丸一年やったあと、恵比寿の雑居ビルで友人のブランドと一緒に、期間限定のお店を数日間だけやったんです。ゲリラショップみたいな感じで。そうしたら、想像を遙かに上回る人が来てくれたんです。

— 大変な賑わいだったそうですね。

足利:それでみんなよく買ってくれて。そして何よりも、みんな情報も乗っている人もまだ少ない中だから、とにかくピストについて喋りたいんですよ。

— ピスト仲間と色々な情報を共有したい、ということですか。

足利:そして、やっぱり自分の自転車を見て欲しいみたいで。買ってくれた部品をつけてるんですけど、同じ部品でも見え方がみんな違うんですよ。

— その個性の出し方がおもしろいんでしょうしね。

足利:そんな反響を見て、本格的にお店をやりたいって思うようになって。しかも路面で。
でも予算はかなり限られた中で、なんですけど。いくら「ピストは伸びる!」と思ってても、実際まだ先も読めないじゃないですか。

— 今までのビジネス経験が活きている感じですね。

足利:それで、最初はやっぱり友達の仕事場も多い原宿がいいかなって思ってたんですが、自転車屋だったら職場に近いよりも家に近い方がいい気がして。

— ということは、お店をやり出す前から初台界隈にいらっしゃったんですか?

足利:ちょっとだけ離れるんですけど、だいたいこの辺ですね。それでこの水道道路(編集部注:BLUE LUGが面する都道431号線の通称)を新宿に行く時とかの抜け道としてよく使っていたんです。甲州街道だと交通量がすごくて、危ないから。
それで、いざ店をはじめてみたら、ほんの数ヶ月後に自転車専用レーンが出来て。奇跡ですね(笑)

— 突然出来ましたよね。まるで運命だったかのように(笑)
実際この場所に決めることになったきっかけは何だったのですか?

足利:決めるにあたって、内見とかをするじゃないですか? その中で代々木公園とか池尻とか、気になったところはいくつかあったんですけど、やっぱり自分を含め身近な人がたくさん住んでたから、っていうところが大きいですかね。目的を持って行く場所というより、日々すれ違って「おはよう!」とか「おつかれ〜」とか言い合えるような場所にしたかったんです。

— あぁ。本当の意味のサロン的な考えに近いですね。素晴らしいと思います。

足利:まぁ、家賃が安いっていうのもあるんですけど(笑) そして長くやりたい。

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