『原点回帰』市之瀬智博(時しらず ディレクター)

by Mastered編集部

1 / 4
ページ

市之瀬さんTOP画像
いまやすっかり人気セレクトショップとなった「時しらず」。
そのディレクターというポジションに立ちつつ、時間の許す限り店頭にて直接お客様と向かい合う市之瀬氏。
つねに初心を忘れることなく、「個人商店」であるという感覚を捨てずにショップを切り盛りし続ける。
そんな彼のハマってるモノ…というより、今回は彼が今思ってる「店のあり方」論をたっぷり聞いてきました。

市之瀬さんが紹介してくれたモノ一覧を先に見る >>

写真:平山 勝之

グラフィックTシャツの復権

— 最近は何にハマってます?

市之瀬氏(以下敬称略):特別「これに」っていうのは、それほどないんだけど…。

各方面から注目を集める敏腕バイヤー、市之瀬氏

各方面から注目を集める敏腕バイヤー、市之瀬氏

— 相変わらず無趣味で(笑)

市之瀬:でも、なんか最近意識してるのは「原点回帰」かな。プライベートも、店のラインナップに関しても。
店に関してはオープン当初のコンセプトに戻すっていうか…。特に変えずにやってきたつもりだったんだけど、なんか途中から若干テイストがズレてた。だから、もう1回戻す。
今は、どのブランドもテイストが一緒になっちゃいがちだからさ。「プレッピー」って言ったら、みんなそっち行っちゃったし。そういう中で自分が入れたいモノだけを選んでたら『買うものなくなっちゃうよ…』って感じで。

どこのブランドも「モノ」に注力しすぎなんだよね。みんな『生地にこだわりました、付属品にこだわりました』で、作るモノもなんとなく一緒だしさぁ。
それだとウチのお店的にはちょっとキツいなぁって。あんまり「プロダクト」の方向に振っちゃうと。
そういうの、あんまり求められてないし。つまみとしてそういうアイテムを入れるのは全然イイと思うんだけど。
あとは、従来通りのコンセプトを再確認っていうか。『太いパンツを腰穿きして、グラフィックTシャツにジャケット着て、イイ靴履く』っていう。そういうのが、やっぱイイなぁって。

— トレンドに押されるような感じになっちゃったって感じですか?

市之瀬:だね。(アメリカブームの煽りを受けて)ロンドンなんて、今ほとんどバイヤーいないからね。

— 今の「アメトラ(アメリカントラッド)の次はブリティッシュだ」みたいな空気を受けて、これから増えるんじゃないですか?

市之瀬:でも、オレがロンドン・イギリスに期待してるのはそういう伝統的な感じじゃなくて、新しいアーティストだったりグラフィックデザイナーだったり。
実際に、ロンドンってそういうイメージあるしさぁ。

ZoltarのTシャツ(編集部スタッフ私物)

ZoltarのTシャツ(編集部スタッフ私物)

— 「反骨なストリートカルチャー」みたいな感じですかね?ちょっと前のゾルター(Zoltar the Magnificent)だったり。

市之瀬:そうそう。ぶっ飛んでて結構良かったよね。

— あとは、ゆるいグラフィックのイメージもありますね。スラム・シティ・スケーツ(Slam City Skates)とかインセイン(insane)とか。
ああいう感じっていうのが、世界的にも止まっちゃってる雰囲気はありますね。唯一カウズKawsあたりが頑張ってるぐらいですよね…。

市之瀬:そうだね。でも、そういうのをもう一度持ってきたい。最近本当にグラフィックな感じが無くなってきちゃってるからね。
なんかTシャツまでプロダクトに振りすぎちゃってて。やたら生地にこだわってみたり。
あとユルユルのVネックが流行ったり…。でもそういうのじゃなくて。だから、もう一度探してこようと思ってるんだよね。
それで、もういろいろアポは取ってて。インセインのジェド・ウェルズ(Ged Wells)はもちろん、バンクシーBanksyとかも。

市之瀬家の家宝、ジェド・ウェルズの直筆サインが入ったinsaneのスケートボード(市之瀬氏私物)

市之瀬家の家宝、ジェド・ウェルズの直筆サインが入ったinsaneのスケートボード(市之瀬氏私物)

— バンクシーは難しそうな人ですよね。

市之瀬:難しい。なんか「エコに協力しろ」みたいな事言ってきたりとか、「売り上げの幾らかを寄付しろ」とか。単純にビジネスの話だけだとNGみたい。そういう社会貢献的なプロジェクトじゃないと。
一応コンタクトは取れてるんだけど、突っ込んだ商売の話になると止まるみたい。でも、ジェド・ウェルズはいけそう。
次のロンドン出張で色々決めてくる予定。

— 他に、次の秋冬で仕入れが決まってる新しいブランドはありますか?

市之瀬:イギリスじゃないけど、エーロン(元Supreme)のオフバワリー(Off Bowery)

— あぁ、知ってます。「LOWER EAST FUCKIN’ SIDE」ってプリントされたTシャツとかカッコいいですよね。

市之瀬:あれイイ。でも「もう作ってない」って言われちゃってさ(笑) 仕入れられなかった。

次のページは『脅威の右脳バイイングとノンウォッシュデニムへのこだわり』です。