美しい分解。THINGS COME APART
-フォトグラファーTodd McLellan インタビュー-

by Mastered編集部

Paul Smith SPACE GALLERYにて、去る2014年11月22日(土)~2015年1月4日(日)の期間、トロントをベースに活躍するフォトグラファー、Todd McLellanのエキシビション『THINGS COME APART』が開催された。

展示されたのは、彼の作品の中でDisassembly(分解)シリーズと呼ばれている作品。自転車、コンピューター、最新のガジェットなどが分解され、すべてのパーツが規則正しく並べられた状態を撮影した写真は、その視覚的な面白さに加え、普段は気にも留めないような物の内部の複雑な構造に目にを奪われる。

同エキシビジョンでは、特別に[Paul Smith WATCH(ポール・スミス ウォッチ)]の3種類の時計を分解・撮影。作品を通して、ブランドの美しいタイムピースを形成する精巧なメカニズムの細部が切り取られる。今回が初来日となるTodd McLellanがEYESCREAM.JPのインタビューに答えてくれた。

Photo : SATORU KOYAMA(ECOS)Text & Edit : Shu Nissen

よくできているもの程、分解してからきれいに戻すのが簡単なんです。

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—Disassembly(分解)シリーズのアイディアのきっかけは?

Todd McLellan:元々いろんな古いものを集めるのが好きで、コレクションしたものを綺麗に並べていたんですよ。そのうち、何がきっかけだったか覚えてないんですけど、ある日ふいに思い立って、分解をしてみようと思ったんです。

それから、分解したパーツを重ねて棚に置いて飾り始めました。記録を残すためにその写真を撮った時に、これで作品を作ってみようと考えました。それは同時に、テクノロジーが溢れ、Photoshopでいじりすぎたような写真がすごく多く存在する中で、リアルなものを写真に収めたいという思いからでした。

分解して並べていくうちに、パーツひとつひとつにもライフがあると思い始めて、それを写真に撮ることで新たな命を吹き込むことができるんじゃないかなと思って続けています。

—分解して、きれいに並べられた作品もそうですが、動きのある作品もありますよね。まさに命が吹き込まれたように見えます。秘密にしておきたいかもしれませんが、どういった撮り方をしているか教えてもらえませんか?

Todd McLellan:全然問題ありませんよ。実は、空中に投げて落としているところを、ハイスピードフラッシュとシャッターで撮るという作業を、何十回も繰り返して作っています。上から投げたり角度を変えたり、そうやって撮れた写真をパソコンで確認しながら調整していくという作業です。何回も撮影するので、下に柔らかいマットを敷いて小さなパーツ1つでも無くさないようにしています。

解体したものは全てのパーツを保管してるので、もう一度組み立てて元に戻すこともできます。

—すごい労力がかかっている作品なんですね。ひとつの作品にどれだけの時間がかかるんですか?

Todd McLellan:作品によってかかる時間が違うんですけど、まず解体した時に全部のパーツをきれいに並べます。その時は外側のケースなどを真ん中に持っていって、それが何かわりやすくして、その周りにパーツを並べていくんですけど時間的には、例えばこのカメラは1日半ぐらいはかかります。

—早いですね!!

Todd McLellan:すごく集中するので、休憩をはさんだりして、解体して並べて撮影して完成させるまで、だいたいのものは3日ぐらいって感じですかね。このペンなんかは早かったですけど、自転車はいろんなことを試しながら作ったので時間がかかりましたね。

—それにしてもすごい早さですね。物によって違いが出るということですが、昔の製品と新しい製品で違いを感じることはありますか?

Todd McLellan:最新の製品の方がパーツは少ないこともありますが、例えばこれはデジカメなんですけど、この作品を作った時に同時にフィルムのカメラも解体してみたんですよ。どれだけ違うんだろうかっていうことを調べたくて。実際、やってみたら意外とパーツの数はそんなには違わなくて、それは自分なりに驚きでした。昔の製品の方がわかりやすい物が多いですね。デジカメなんかは最新のものはパーツが、もうミステリーです。そのパーツがなんの部分だかわからないものも多くあります。

最近の製品の話でいうと、スマートフォンは液晶画面が一番のキーで、どこの製品も中身の構造はほとんど一緒です。液晶のクオリティがそれぞれのメーカーの大きな違い。携帯電話は今までいろんなもの分解してきたので、割とよくわかります。

—それはおもしろい話ですね。分解してみた人にしかわからないことですもんね。今までの作品の中で一番大きいものと小さいものはなんですか?

Todd McLellan:大きいものは飛行機です。さすがに解体はさせてもらえなかったので、組み立てる前の部品を使って工場で撮影させてもらいました。小さいものはペンです。すごくシンプルでした笑

—ボールペンから飛行機まで!すごい振り幅です。今回の[Paul Smith]とのコラボレーションが実現したきっかけは、なんだったんですか?

Todd McLellan:オファーを頂きました。正直なところ[Paul Smith]については、自分の周りの友達はファッション好きで知っていましたが、僕は最近まで知りませんでした。ミラノで私の本の発表会があった時に、名前をよく聞くなと思って初めて知りました。

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—[Paul Smith WATCH]の時計を分解してみて特徴を感じたことなどはありますか?

Todd McLellan:メカニックなものなので、すごく気をつけながら解体したんですけど、クォリティの高さを感じました。パーツひとつひとつがすごく精巧にできているので、もう一度組み立てて時計にするっていうのは簡単にできると思います。他の時計でやった時は、パーツの大きさがばらばらだったり、スムーズに戻らなかったり、これは元どおりにするのが難しいなと感じることが多いんですけど。よくできてるものほどきれいに戻すのが簡単なんですよ。

—なるほど。今回のエキシビジョンで初めて来日したということですが、日本の印象は?

Todd McLellan:クレイジーです笑 素晴らしいと思いました。人がこんなに多くて忙しないのにきれいなのが、信じられないです。喧騒の中でも、常に新しい発見や、おもしろいものが何か見つかります。

—日本で分解してみたい気になるものは何か見つかりましたか?

Todd McLellan:はい。ひとつは電気ひげそりです。もうひとつは80年代ぐらいの日本のワープロです。特に自分でワープロを探していたわけじゃないんですけど、こういう仕事をしてると依頼が舞い込んで来たりするんです。

例えば、昔から大切に使っていた大事なものが使えなくなった時に、捨てる前に最後に僕のところに持ち込んで、思い出として写真を撮って欲しいというリクエストが来たりします。物にもう一度、命を吹き込むということもテーマにしているので、大切なものを持ち込んでくれる人がいるのは嬉しいです。

あとは、世界中の方からいろんなものを分解してみたっていう写真がたくさん送られてきますね。すごく嬉しいことです。自分の作品のヒントにもなるし刺激を受けるので、直接連絡を取るようになった人も居ます。

—いい話ですね。他にはどんなメッセージが込められているんですか?

Todd McLellan:小さなパーツひとつひとつにも役割があるということを伝えるということ、そういったものを構成する人や物への感謝という意味合いもあります。

—写真ではなく新しく挑戦したい作品はありますか?

Todd McLellan:彫刻をやってみたいですね。でも今はまだ、どういう方向性で作るべきかをすごく考えています。ただ、今までの作品とは全く違った見え方になると思いますよ。

—分解、組み立てで培った技術と知識を活かした素晴らしい作品になりそうですね。楽しみにしています。
今日はありがとうございました。

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【『THINGS COME APART』Todd McLellan】

4月18日(土)〜5月10日(日)の期間、Todd McLellanのエキシビション『THINGS COME APART』がPaul Smith 福岡店にて開催。

Disassembly(分解)シリーズに焦点を当て、今回も[Paul Smith WATCH]の時計を分解・撮影した作品を展示する。作品となったのは、Paul Smithのサイクリングに対する情熱を形にした『サイクルクロノグラフ』、同ブランドの中でも多くの熱心なファンを獲得している『マスターピース』の2014年モデル、アイコニックな存在である『ファイナルアイズ クロノグラフ』の3種類。

なお、エキシビション展示作品はすべて購入が可能。お近くの方は、是非とも足を運んでみてはいかがだろうか。

会場:Paul Smith 福岡店
福岡県福岡市中央区大名 1-14-8
会期:4月18日(土)~5月10日(日)不定休
TEL:092-731-6993
営業時間:11時00分~20時00分