The Interview #007 cro-magnon(Jazzy Sport)

by Mastered編集部

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— この4年で経験したことを踏まえて、今回はどんなアルバムをイメージしていたんですか?

コスガ:アルバムを作るタイミングで再発された(マッシヴ・アタックにサンプリングされるなど、フュージョンの名作として知られるキーボーディスト)ウォーリー・バダルーの『Echoes』を改めて聴いたら、名曲も収録しつつ、あのアルバムは一枚通して聴いて、意味を成す作品なんですよね。自分たちもそういうアルバムを作りたいと思ったんですよね。

『Echoes』

ウォーリー・バダルーのアルバム『Echoes』

大竹:今回は、4つ打ちだけでなく、モーダル・ジャズだったり、アフロ、クンビア、カリプソとか、色んなリズムを叩いているんですけど、いい意味で適当というか、気軽な感じで出来たんですよね。「こんな感じでしょ?」って、まずは打ち込んでみて、そこに他の楽器を足したり、引いたり、あるいはエディットしてみたり。

コスガ:3曲目の”bonita”はクンビアのリズムだけ先にあったものの、一日、そのリズムを聴き続けても、その先のアイディアがまったく思い浮かばなくて。でも、日が変わって、所変わったら、曲の捉え方が変わったりするもので、そうすると、また面白いフレーズが思い浮かんだりするんですよね。

大竹:そういう日々の地道な作業がなければ、やっぱり、アルバムは出来ないんですよね。久々にアルバムの録音に没頭してみて、そのことを思い出しましたよ(笑)。

— そして、今回の作品は、フロアフレンドリーなダンス・トラックに偏っているわけでも、ジャム・バンドのようにセッション的な要素が殊更に強調されているわけでもなく、楽曲性の高さや構築的なバンド・アンサンブルも含め、全体のバランスが取れていて、cro-magnonの全体像がよく分かるというか。

コスガ:振り返ると、ジャム・バンドって言われてた時期は違和感が大きかったんですよね。だって、ジャズやフュージョンの世界では、インプロビゼーションは当たり前だし、わざわざ、ジャム・バンドとは言わないでしょ。そういう風潮もようやく落ち着いて、インストゥルメンタル・バンドが認知されるようにはなったと思うんですけど、まだまだメロディに頼った表現が多いじゃないですか。

金子:まぁ、それも一つのこだわりだとは思うんですけどね……。

大竹:でも、cro-magnonはそういうものと距離を置いて、ずっとやってきましたからね。例えば、音楽の歴史上にはマイルス・デイヴィスしかり、フェラ・クティしかり、レッド・ツェッペリンやトライブ(・コールド・クエスト)しかり、音楽の本質に迫った先人たちがいて、俺たちは早い時期からその延長線上で音楽をやろうと思っていたし、現代を生きる自分たちなりにそれを実践してきたつもりなんです。

— しかも、古今東西、色んな音楽を楽しめる日本で、ダンス・ミュージックも、技術を要するプレイヤーの世界も分け隔てなく行き来することで培われたcro-magnonの個性は、世界を見渡しても珍しいものだと思うんですよ。昨年、1ヶ月近く各地を回ったヨーロッパ・ツアーの反応はいかがでした?

大竹:反応はすごくよかったんですけど、それよりなにより疲れましたね(笑)。ヨーロッパを5000キロ走って回った後にカザフスタン、香港へ行って、残波JAMで沖縄行って……楽しかったからよかったんですけど、あれはなかなか大変な旅だった。

金子:キャンピングカーでツアーを回るのは、人生であと1回くらい……いや、もうやらなくてもいいかな(笑)。

コスガ:共同生活はね、人と人の距離が近ければ近いほど大変なんですよ(笑)。

大竹:そうそう。それに、30代最後にキャンピングカーで回る海外ツアーの在り方は一つ提示出来たので(笑)、40代はまた別のツアーの形を追求しますよ。

— はははは。しかし、バンドの成熟という意味において、今回の作品で採用されたヴィンテージ楽器を使ったアナログ録音は、プレイヤーとしての経験値が如実に出ますよね。

大竹:そういう部分はなかなか伝わりづらいかもしれないけど……。

金子:いや、本物の音が入ってるわけだから、きっと伝わるよ。

コスガ:ヴィンテージ機材の鳴りには、細かな振動や残響が含まれていて、音と音の間の密度が濃いんですよね。今回は池袋のStudio Dedeっていうすごくいいスタジオとの出会いがあって、いいものが録れたんですけど、その一方で僕らがこれまで録音で使ったスタジオは全部なくなっちゃったんですよ。要するに、今の時代はレコーディングに手間暇やお金がかけられなくなったということでもあるんですけど、だからこそ、録音物を出すからにはそういうところにこだわっていきたいんですよ。

— つまり、cro-magnonは引き続き真っ直ぐに音楽を追究する、と。

大竹:そうそう。

コスガ:キーポンそれですね(笑)。

— 最後に、作風の上でも、気持ちのうえでも、第2章を幕開けたcro-magnonが今後の活動をイメージした時に、形にしてみたい具体的なアイディアは何かありますか?

コスガ:去年、江ノ島のOPPA-LAでライヴをやった時に、イジャット・ボーイズがPAとして、ライヴ・ダブ・ミックスを担当してくれたんですよ。その時のライヴがすごく良かったので、また、イジャット・ボーイズともやってみたいですし、新たなエンジニアと組んで、今までとは違うライヴにチャレンジしてみたいですね。それから、長い目標としては1972年の結成から2012年にキーボードの人が亡くなるまで、不動の3人で活動していたブラジルのフュージョン・バンド、アジムスを超えたいですね。

金子:アジムスを越えるとしたら、あと何年活動すればいいんだろう?

大竹:cro-magnonは活動歴10年だけど、この3人がLoop Junktionを始めてからなら、あと20年くらいじゃない? 俺たちはしぶといから(笑)、余裕で越えられると思いますね。

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