The Interview #007 cro-magnon(Jazzy Sport)

by Mastered編集部

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編集部が今気になる人のインタビューを不定期で掲載していく企画“The Interview”。第7回目となる今回登場してもらうのは、去る7月16日に約3年半ぶりのオリジナル・アルバム『Ⅴ』をリリースしたばかりのcro-magnonだ。

オリジナルの前作アルバム『4U』から5年。その間、2011年に一時的な活動休止し、2012年に再始動を果たした3人組インストゥルメンタル・バンド、cro-magnonがついに現場最前線へ復帰した。その手に携えているのは、ヴィンテージ楽器を用いたアナログ録音で製作された5作目のアルバム、その名も『V』。ソウルやジャズ、ファンクやディスコといったルーツ・ミュージックとハウス、テクノ、ヒップホップといったビート・ミュージックを自由自在に横断する彼らの音楽性は、クンビアやカリプソからメロウ・チルアウトなジャズまで、その音楽性をナチュラルに広げながら、音楽家として、さらなる高みを目指した素晴らしい作品だ。ひさしぶりに取材の場に集まった3人は、果たして何を語ってくれたのか?

Photo:Takuya Murata
Interview:Yu Onoda
Edit:Keita Miki

今回のアルバムは、この5年間であたためてきたものではなく、今の時点でこの3人が鳴らしたい音を素直に出した作品なんですよね。

— cro-magnonは、2004年の結成から今年で10年目になるんですね。

コスガ:そうなんですね。でも、cro-magnon以前、Loop Junktionとしての活動もありましたし、そもそも、この3人がアメリカで会ったのは……って考えると、この3人はそれ以上に長い時間を一緒に過ごしてますからね。

— ただ、正規のアルバムとしては2009年の『4U』から5年ぶりという今回のアルバム『V』は作風の上でもcro-magnonにとって大きな節目、活動の第2章を幕開ける作品になりましたよね。

通算5枚目のオリジナル・アルバムとなるcro-magnonのアルバム『V』

cro-magnonのアルバム『V』

大竹:その間のことを説明させてもらうと、まず、2011年に震災が起きて、ミュージシャンが地方に移住したり、いなくなってしまったんですね。でも、みんな不安だから、いつも行ってるバーとかに集まるじゃないですか。そこで音楽を演奏してくれるバンドが必要だという声を聞いて、俺らは求められるままにライヴをすごいやったんですよ。で、自分たちなりにある種の役割を果たして、ほっとしていたところに「事件」が起きて、その責任を取る必要があった。そして、個人的には今回のアルバム・アートワークに使われている絵を描いてくれた自分の父親が死んだり、色んなことがあって。でも、その間に起きたことには全て意味があって、もちろん、これからも活動は続けていこうと思っているし、今回の作品は確かに第2章の始まりとなるアルバムなんですよね。

— そもそも、cro-magnonは、Loop Junktionというヒップホップ・バンドの枠組に収まりきらないものを発展的に表現するバンドとしてスタートしたバンドですよね。

大竹:そう。俺とか剛は、もともと、バンドをやりながら、ヒップホップのクラブ以上にレイヴで遊んでたし、そうした自分たちの音楽の広がりを形にする場として、cro-magnonを始めたんですよね。

— そして、反復するビートの上でインプロビゼーションやバンド・アンサンブルの試行錯誤を始めた初期から、4作目の『4U』以降は、カヴァー集『PLAYS』やヴォーカリストをフィーチャーした『Joints』を発表したり、発売は延期されましたがマンガ「へうげもの」とのコラボレーション盤『乙』があったりと、作風を広げる試行錯誤がありました。

cro-magnonと漫画「へうげもの」によるコラボアルバム『乙』

cro-magnonと漫画「へうげもの」によるコラボアルバム『乙』

コスガ:もちろん、ディスコは今でも好きではあるんですけど、そうした作品を通じて、自分たちに出来るのはそれだけじゃないという意味で結果として脱ディスコ感が出たのもうれしかったですし、『乙』では情景を描いた曲をよく作るようになって、そういう新たなアプローチも出来るようになったんですよね。

大竹:なかでも、『乙』は自分たちにとって5枚目のアルバムを作るような勢いで製作に臨んだ作品だったんですね。そこでの作風の広がりは今回のアルバムにも繋がっていると思うんですけど、僕のなかでは、今回の作品は一回完全にリセットしたうえで、初心に還えることが出来たので、以前のように「前のアルバムがこうだったから、今回は被らないようにしよう」っていうような、余計なことを考えず、ただただ好きなこと、3人のその共通点だけを追求して、レコーディングすることが出来たんです。

— 確かに、今回のアルバムは、変化を持続させることで生まれる説得力よりも、リセットしたことでフラットになった地点で音を鳴らしているフレッシュネスが際立った作品であるように思いました。

コスガ:そう。今回のアルバムは、この5年間であたためてきたものではなく、今の時点でこの3人が鳴らしたい音を素直に出した作品なんですよね。

金子:そういう意味で、この作品を踏まえた次のアルバムは悩むことになるかもしれない(笑)。

BudaMunk、金子巧、mimismoothの3名によるコラボアルバム『First Jam Magic』

BudaMunk、金子巧、mimismoothの3名によるコラボアルバム『First Jam Magic』

— その一方で、近年は、DJとしても活動している剛くんだけでなく、3人がcro-magnonの外でそれぞれ個人活動するようにもなりましたよね。金子さんはBUDAMUNK、MIMISMOOTHとのコラボ・アルバム『FIRST JAM MAGIC』や昨年、ピアノ・ソロ・アルバム『UNWIND』をリリースしましたし、大竹さんもらぞくの竜太氏と新バンド、ひこうき雲の活動があったり、元住吉のライヴハウス、POWERS2で、様々なミュージシャンを招いたセッションなどを精力的に行っていますよね。

金子:確かに以前はそういうセッションをほとんどやってなかったんですよね。でも、一度、バンドが動かなくなった時、それぞれがやれることをやるために、バンド以外の人とのセッションを始めて、それが今も続いていますからね。

コスガ:僕個人でいえば、最近は海沿いのラウンジでDJをやる機会が増えたんですよ。そこでは4つ打ちをかけずに、その場のムードを作ったり、情景を描くようなプレイをするようになって、その経験が自然な形でcro-magnonにも反映されるようになったんですよ。

大竹:まぁ、それもこれも、あの事件で高い授業料を払ったからこそ、バンド外の活動をすることにもなりましたし。そして、その経験が一人のミュージシャンとしての成熟につながったり、他のメンバーの活躍を見たら、「俺も頑張ろう」と刺激を受けたりもするじゃないですか。だから、この4年で起きたことには全て意味があるというのは、そういうことなんですよ。

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