The Interview #004
Garance Broca&Benoist Husson(MONSIEUR LACENAIRE)

by Mastered編集部

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編集部が今気になる人のインタビューを不定期で掲載していく企画“The Interview”。第4回目となる今回登場してもらうのは、Masteredでも早くからその存在に注目してきたフランス発のニットブランド、[MONSIEUR LACENAIRE(ムッシュー・ラスネール)]のデザイナーであるGarance Broca(ガランス・ブローカ)とブランドマネージャーを務めるBenoist Husson(ブノワ・ユッソン)だ。

[Hermès(エルメス)]をはじめとしたメゾンブランドで長年ニットをデザインしてきたGarance Brocaが新たに手がける[MONSIEUR LACENAIRE]のウェアは、高いクオリティを保ちながらも、実にポップであり、同時にエレガンスさも持ち合わせた稀有な存在として世界中のファッション関係者から熱い注目を浴びている。ブランド名の由来ともなっている、映画『天井桟敷の人々(原題:Les enfants du Paradis)』に登場する悪人、「ラスネール」よろしく、不思議な魅力を放つ[MONSIEUR LACENAIRE]。インタビュー、そして本邦初公開となる映像作品『Who is Monsieur Lacenaire』を通し、その根源に迫る。

Interview&Text:Keita Miki

日常にあるものを、いかに自分たちらしい切り口で見せるか、クラシックなものをいかにアレンジするか、そういった工夫を行っているアーティストからは大きな刺激をもらっていますし、私たちのものづくりもそうでありたいと思っています。(Garance Broca)

— ブローカさんは[MONSIEUR LACENAIRE]をスタートさせる以前、[Hermès]をはじめ、様々なメゾンでご活躍されていたとのことですが、幼いころからファッションに興味はあったのでしょうか?

Garance Broca(以下、Broca):はい、小さい頃からファッションに興味はありました。最初はモードの世界で働きたいという想いが強かったのですが、仕事を続けていく内に段々とメンズに興味が沸いてきて、[MONSIEUR LACENAIRE]をスタートさせたという流れです。

— ファッションの勉強はいつ頃から?

Broca:22、3歳の頃からですね。ファッションに関してはロンドンのCentral Saint Martinsで勉強しました。卒業後、3年間[BALMAIN(バルマン)]で働いて、その後4年間[Hermès]で経験を積みました。

— [MONSIEUR LACENAIRE]をスタートさせた経緯について、もう少し詳しくお話を伺ってもよろしいですか。

Broca:長くメゾンブランドで働く中で上質な素材や様々な技術に触れ、そうした素材や技術を使ってもっと違ったものを発表出来ないか、と思ったのがきっかけです。

— [BALMAIN]や[Hermès]のようなメゾンブランドでのものづくりと、現在の[MONSIEUR LACENAIRE]のような、ご自身の手の届く範囲で行うものづくりには、どういった違いがありますか?

Broca:これは[MONSIEUR LACENAIRE]をはじめてから気付いたことですが、やはりああいった大きなメゾンで働いていると、デザイナーは色々なものから守られていて、デザインに集中できる環境が整備されているんですよ。逆に今は工場選びから、生産管理まで、全て自分たちで行っているので、その点は大きく異なるかと思います。ただし、クリエーションに関しては、今の方が自由度が高いので、やりやすい部分も多々あります。

— [MONSIEUR LACENAIRE]は今回で5シーズン目を迎えますが、周囲の反応という意味では予想通りでしたか?

Broca:いえ、正直にお話しをすると私が思っていたよりも、ずっと反応は良かったです(笑)。
1stシーズンから、パリではColette、Au bon Marchéでの取り扱いが決まったし、Pitti Uomoでは日本のセレクトショップの取り扱いが決まり、予想以上に嬉しい反応が多くありました。加えて、実際に商品を購入してくれた方たちも自分たちが表現したいことを理解してくれ、それを支持してくれているというのは本当に嬉しいことです。

— ご自身でブランドをスタートする際、無数の選択肢の中からニットという素材をキーワードとして選んだ理由は?

Broca:ニットは様々な素材の中でも着やすいし、合わせやすい。デニムと組み合わせても、スーツ地のパンツと組み合わせても良いし、シックにもカジュアルにもまとめることが出来る万能の素材です。私にとって一番やりやすいという部分もあるし、素材としての可能性を感じたのが大きな理由ですね。ジャケットとは違って、ニットなら恋人を抱き締める動きも容易に出来ますし(笑)。

— そういう意味ではブローカさんはまさしくニットのプロフェッショナルな訳ですが、良いニットを見分けるポイントを教えて頂けますか?

Broca:まず一番には素材です。天然のウールを使っているものは最高ですね。次にフィット感。大きすぎてもダメだし、着た時にカッティングがキレイに出ていることが重要です。この2点に注意していれば、良いニットに出会えるのではないでしょうか。

— 例えば日本だと、年々国内で手編みのニットを生産するのは難しくなってきていますが、フランスでの状況はどうなんでしょうか?

Broca:フランスでもやはり手編みのニットを作ることは難しく、[MONSIEUR LACENAIRE]でも手編みのニットはペルーで生産しています。国内外を問わずに良い素材を使い、自分たちの納得できる方法で仕上げるということに重点を置いていますね。

— この企画に前回登場してもらったLouis Wong氏もあなたと同じようにメゾンブランド出身の方でしたが、「ランウェイに出て、そこで終わってしまうメゾンの洋服作りに少し寂しさを感じた」というようなお話をされていました。Brocaさんにも同じような想いはありましたか?

Broca:その気持ちはすごく理解出来ます。これはメゾンでも、私たちのようなブランドでもそうなのですが、クリエイティブな作品が万人に受け入れられることはすごく難しい。クリエイティビティーを最大限発揮しつつ、工場にも満足してもらえるような数が出るもの、そのバランスを現在も模索中です。この仕事をしている限り、クリエーションと価格や売上といった数字とのバランスや、それにまつわるジレンマ、フラストレーションは常について回るものですね。

— 現在はルックブックを通してコレクション発表を行っていますが、今後はインスタレーションやショー形式での発表も考えていますか?

Broca:形式は問いませんが、今後も洋服だけを見せるのではなく、体験型というか、世界観も含めての提案をしていきたいと考えています。そういう意味では今回制作したような映像というのも1つの手段かもしれませんね。

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