The Interview #001 Alex Knost

by Mastered編集部

これまでにもデザイナーやミュージシャン、DJなど、様々なクリエイターにインタビューを行ってきたMasteredですが、読者の方々から「インタビューをもっとたくさん見たい!」、「もっと色々なジャンルの人のインタビューをやって欲しい!」といった嬉しい悲鳴を頂いていたのも、また事実。そこで誕生したのが、編集部が今気になる人のインタビューを不定期で掲載していくこちらの新企画“The Interview”と言う訳です。
栄えある第1回目にご登場頂くのは[RVCA]のライダーとして世界中にファンを持つプロサーファー、Alex Knost。過去にはバンドJapanese Motorsのフロントマンとしても活躍するなど、音楽、アート、ボードシェーピングなど幅広いジャンルに精通するAlexですが、今回のインタビューではそんな彼のライフスタイル、ガールフレンドであるChristina Kee、友人であるFord Archboldと共に結成した新バンドTomorrows Tulips、そしてRVCAとのコラボレーションにより生まれたシグネチャーラインについて語ってもらいました。
自然を愛し、自分に嘘を付かずに生きるAlexの姿勢には、普段サーフィンをしない人にとっても学ぶべきポイントが多々あるのではないでしょうか。最後まで楽しんでご覧下さい。

Photo:SATORU KOYAMA (ECOS)
Interview & Text:Mastered

仕事は仕事、遊びは遊びって、物事を1つ1つ区切るように教えられてきた人ってすごく多いと思うんだ。でも実はそうじゃなくて、それが何であろうが全ての物事は1本の同じ繋がりの中にある。

— このインタビューでAlexのことを初めて知るという読者の方もいるかと思いますので、まずは自己紹介をお願いしてもよろしいですか?

Alex:僕はAlex Knost。RVCAのライダーとしてサーフィンをしたり、絵を描いたり、音楽をやったり…まぁ楽しくやっているよ(笑)。
彼女はChristina Kee。僕のガールフレンドだよ。あとは友人であり同じくRVCAのライダーのFord Archbold。今はこの3人でTomorrows Tulipsというバンドをやっているんだ。

Tomorrows Tulipsのアルバム
『Eternally Teenage』

— 3人はどうやって知り合ったんでしょうか?

Christina:私とAlexはバーで出会ったの。

Alex:友達のライブを見に行った時に偶然知り合ったんだ。Fordとは幼馴染みたいなもんだね。

— AlexはJapanese Motorsのフロントマンとしても広く知られているかと思いますが、このTomorrows Tulipsというバンドをスタートさせたきっかけは?

Alex:実はこれといった理由は特に無いんだ。自分のフィーリングに素直に従った結果、自然とこういう流れになった。音楽やアートの世界って普通のビジネスとは少し違って、1回スタートさせて、あるタイミングで「はい、ここで止めます」と終わってしまうものでは無いと思うんだよね。Japanese Motorsを辞めたのも、簡単に言えば気持ちが辞める方向に向かったってだけなんだけど、今はこうしてChristinaと出会って、新しいバンドをスタートさせてる。音楽やアートの世界では、自分の人生の経験が全てその先の新しい物事に繋がっていくんだ。

— なるほど。Tomorrows Tulipsでの3人の役割はどんな感じなんでしょう?

Alex:Fordがベースギター、Christinaがドラム、僕はギター。ボーカルは全員が兼任しているよ。

Japanese Motorsのアルバム
『Japanese Motors』

— 作曲は誰が行っているんですか?

Christina:みんな作るけど、メインはAlexかな。

— Alexは曲を作る時、どういったところからインスピレーションを得るんですか?

Alex:Japanese Motorsの時は何かしらのインスピレーション元があって自然と出てくるものではなかったんだけど、このバンドでは不思議と自然にインスピレーションが沸いて来るんだ。だから、あえて前もって何かを考えることはしないようにしているよ。このバンドに関して言えば、良い意味でこだわりが無いのかもしれないね。いつも、気付けば自然と形になっている。

— Alexというと日本ではサーフィンのイメージが一番強いと思うのですが、サーフィンと音楽、そしてサーフィンとアートの繋がりというのはどんな部分だとお考えですか?

Alex:サーフィン、アート、バンドに限ったことでは無いけれど、例えば仕事は仕事、遊びは遊びって、物事を1つ1つ区切るように教えられてきた人ってすごく多いと思うんだ。でも実はそうじゃなくて、それが何であろうが全ての物事は1本の同じ繋がりの中にある。つぎはぎの目は一切無くて、全て1つの箱の中に入ってる。1つの調和だと思うんだよね。ところが本来の目的にマーケティングの要素が入ってくることによって、その調和が崩れてしまうことがある。そうなると、自分が何でそれを好きなのかとか、本当にやりたいことっていうのを見失ってしまう。全てが調和の一部であり、その調和の中の1つの要素として自分がいるっていうことを僕は忘れないようにしているよ。

— かなり仏教的な要素を感じますね。何故そういった考えに至ったのでしょうか?

Alex:さすがにそこまで深くは考えていないけどね(笑)。
前のバンドではレーベルを掴もうだとか、余計なことを考えてしまった結果、段々自分のやりたいことと違う方向に進んでいってしまった。Tomorrows Tulipsの何が素晴らしいかというと、ChristinaもFordも、何かを犠牲にしてまで音楽をやろうっていうスタンスではなく、ただ楽しいからやっているんだよね。Christinaはバンドをはじめるまで、ドラムを叩いた経験が無かったけれど「ちゃんと練習してからやろう!」なんて言わずに、「やりたいんでしょ? やりたいならとりあえずやろうよ!」って感じだった(笑)。
この3人だと音楽が楽しいし、楽しいからもっと上手くなろうと思う。3人が同じ目的の中でやれるんだ。まさに調和だよね。それがたまたまお金になっているだけで、決してお金を稼ぎたいからバンドを始めた訳では無いよ。

— お話を伺っているとかなり理想的な生活に思えてきますが、Alexは今、幸せですか?

Christina:今まで頑張ってきたからこそ、この生活があるんじゃない?

Ford:いや、Alexの場合は自然にたどり着いたようにも思うけど。

Alex:そんな風に考えたことは無かったな。音楽でお金を稼ごうとすれば、もっと稼ぐことも出来るし、ポップスターになりたいのであれば、それなりのやり方もあるとは思う。でも、僕自身そういうつもりは全然無くて、自然な流れに沿ってやっているだけなんだよね。幸いなことに今はそういった自然な流れの中でサーフィンをして、スポンサーの服を着ることによってお金をもらえているし、出来ることならばそれがこの先も続いたら良いなと思う。満足を求めて何かをする訳では無く、ただ自分が楽しいからやってきたことの積み重ねなんだ。

— Alexにとってのサーフィンの魅力とはどんな部分なんでしょうか?

Alex:どんなものからインスピレーションを得るかっていうのは人それぞれだと思うんだけれど、サーフィンもそれと同じ。でもサーフィンの凄いところは常にコンディションの違う海を相手にすることによって、自然の力を体感出来る部分だと思うんだ。あえて言うならそれが他のスポーツには無い、サーフィンならではの魅力かな。同じ波は1つとして無いし、風だって毎日変わる。そういった非人工物の中で得られることというのは、すごくたくさんあると思うよ。

— 今回の来日ではサーフィンに行きましたか?

Alex:残念ながら、今回はまだ行けていないんだ。でも、日本には過去に何度かサーフィンをしに来たことがあるよ。日本のサーフィンを取り巻く状況は本当に素晴らしいね。個人的にも良く考えることなんだけれど、日本の文化は外から見ると控え目に見えても、アグレッシブな部分があるサーフィンにすごく夢中になってる人がたくさんいて、それって何だろう? 歴史的に見ても日本は自然との調和というのをとても大事にしているよね。そういうバックグラウンドがあるからこそ、サーフィンに夢中になる人が多いんじゃないかな。カリフォルニアとかと比較すると、日本でサーフィンをする環境はすごく厳しいものだと思うんだけれど、日本のサーファーは1人1人がアグレッシブで、いつも感心させられるよ。

Alex Knost
プロサーファー。アメリカ西海岸を中心に若いサーファー達から絶大な支持を受ける特別な存在であり、ライディング、ファッションセンス、音楽など、多岐のジャンルに渡り大きな影響力を持つ。現在はRVCAのライダー、そしてTomorrows Tulipsのフロントマンとしても活躍中。

— 少し話は変わりますが、最近RVCAからAlexのシグネチャーコレクションがリリースされましたよね。これについてはどのように考えていますか?

Alex:すごく良い経験になったと思う。自分でブランドをやるのは大変だけど、そういったリスク無しに自分の好きな物を作れて、売る苦労も少ない訳だからね、本当に最高だよ(笑)!

— RVCAは過去にもBARRY McGEEをはじめ偉大なアーティストたちとコラボレーションしてきましたが、そういった名だたるアーティストの一員として作品を発表できたことについてはどう感じていますか?

Alex:とてもCOOLなことだよね。BARRYには若い頃に一度会った事があるけど、本当に素晴らしいアーティストだよ。そういったアーティストたちの中の一部でいられることは非常に嬉しいし、繰り返しになってしまうけど、最高の気分だね。

— ではAlexにとってファッションとはどんな存在ですか?

Alex:簡潔に言えば、自分を表現する手段の1つかな。裸で街を歩くことは出来ない訳だから、どうせだったら楽しい方が良いよね。全身ブランドで固める人もいれば、自分の気分に合わせた格好をする人もいる。そんなに大それたことは言えないけれど、すごく楽しいことだよね。

— Alexらしい回答ですね。今後の目標や展望は?

Alex:近い未来で言うとレコーディングがそろそろ終わるかな(笑)。
もう少し長いスパンの話をすれば、今後僕も歳をとっていくわけだけど、年齢に関係なく、いつでも楽しいことをしていたいな。老いてしまう前にもっとたくさんショーをやりたいし、作品も作りたい。やりたいことはまだまだ、たくさんあるよ。

— それでは最後に日本のファンに向けて何かメッセージを頂いてもよろしいでしょうか?

Alex:いつも様々なサポート、応援を本当にありがとう! 日本の人たちはすごくカラフルで幸せに見えるから、いつまでもそのままでいてくれることを願っているよ。

【RVCA オフィシャルページ】
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