インタビュー:猪子寿之(チームラボ)

by Mastered編集部

去る7月1日に発売となった雑誌「EYESCREAM」8月号の特集は「ジャパン・ポップカルチャー 夏の陣」。AKB48の渡辺麻友を起用した表紙も大きな話題となっていますが、今回Masteredでは最新号より、ウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表の猪子寿之氏のインタビューを特別に全文掲載。誌面には掲載されていなかった『We are the Futre』展の写真の数々と共に、たっぷりとお楽しみ下さい。

ウルトラテクノロジスト集団を自称するチームラボ。彼らは企業体でありながら、クリエイションを主軸においてアート作品を発表し続けている。デジタル技術の最先端をイノヴェイションしながら誰も観たことのない、それでいて強烈にジャパンを感じさせる表現を開拓する彼らの根本にあるものは何か。代表の猪子寿之に話を訊いた。

Interview:Hiroshi Inada

日本って中心が無くて皆が作っていく文化なので、インターネット時代と相性がいい

— 台湾で『We are the Futre』展が開催中ですが、外国でチームラボ自体を大規模にプレゼンテーションするのは初めてですよね。いかがでした?

猪子:場所が国立美術館だったのでアートとしていかに見せるかっていうのはいろいろ考えました。でも今回展示した中には明らかにアートじゃないプロダクトも混じっていて。だから展覧会全体のコンセプトとか、ひとつひとつの作品解説についてはかなり考えました。「アートじゃない」って言われたり、「国立の美術館で企業が自社のプロダクトを宣伝してる」って突っ込まれたりしないように、テキストは相当ぎりぎりまで練りましたね。でもまあそれも杞憂で。台湾のお客さんは案外そんなに細かいことを気にしてなくて、新しい時代を伝えるためにわざとプロダクトも置いてるんだっていうのは直感的に解ってくれたみたいです。だから、相当がんばって書いたんですけど、結果的にテキストは余計だったかも(笑)。

— 読ませてもらいましたけど、相当難しいこと書かれてますよね。

猪子:(笑)。つまり何が伝えたいかっていうと、僕らが提案する未来っていうのは一見フューチャーだしテクノロジーを使ってますけど、実は日本という特異な文化の連続性の延長線上にあるということ。未来は必ずテクノロジーが作るんだけど、例えばアップルみたいに「うわっ」って感動させられるモノっていうのは、なんらかの文化のバックグラウンドの長い連続性の延長線上にある。もちろんアップルの場合は欧米の文化だから関知できない部分も大きい。僕らも自分たちの文化の延長線上で作ってるし、それを意識することで、新しいクリエイションのある種の大量生産ができる。

— 大量生産?

猪子:つまり文化っていうのは無意識に連続してるんだけど、それをちょっと抽出することでいろいろな応用が可能になる。たとえば、日本文化における所作に対して『New Value in Behavior』っていう新しい考え方を見つけたら、いろんなものを作るヒントに出来るから、ある種のクリエイションの大量生産ができる。

— そういう理論が先にあって、作品が生まれるんですか。それとも作品を作るのが先なんですか。

猪子:基本作るのが先ですね。でも、いろいろ作ってるうちに、「結局、同じようなモノを作ってるな」って気付かされる。その気付きが一回抽象化されると考えるのが早くなる。たとえば『New Value in Behavior』っていう考え方があったから、目的に合わせて椅子になったり壁になったりするメディアブロックチェアも、その便利さはキープしつつ、それを変える行為そのものがもっと面白くなったらいいなって。「じゃあ繋げたときに色が変わったらオモロいよね」みたいな。

— なるほど。そういう日本文化の底に流れてるものに関して猪子さんは相当意識的ですよね。

猪子:もともと、欧米のカルチャーがそんなにしっくり来なくて。やっぱり自分の世代って、漫画とファミコンで育ってきてる。漫画もファミコンも超面白いのになんで評価されないんだろう、外国ではむしろそっちのほうが受けてるのになんでリスペクトが少ないんだろうってずっと疑問に思ってた。美術の教科書とかピカソとか出て来て気持ち悪いなとか。そりゃ論理的にすごいのはわかりますよ。でもぜんぜんピカソの絵観ても気持ち良くないし、ハリウッド映画の物語も含めて、なんか欧米の考え方が気持ち悪いなっていうのが根本にある。まあ、僕は比較的最高教育を受けて来て(笑)、でも“教育”って西洋から来てるんで、自分が普通に好きなことと社会が教えることに違和感があった。本当は日本って欧米とは違う世界の捉え方してたんじゃないか。無意識でまだそれが連続してるんじゃないかって気がしていて。

— ちょっと話逸れますけど、猪子さんは秋葉原に住まれてるそうですが、そういう現在の日本の街から受ける刺激ってチームラボのクリエイションとは密接なんですか?

猪子寿之
77年、徳島県生まれ。01年、東京大学工学部計数工学科を卒業と同時にチームラボを創業、代表取締役に就任。チームラボは、情報社会のさまざまなスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。WEBからプロダクト、演出、空間、アートまですべての分野を電脳化すべく活動中。国立台湾美術館にて、チームラボ 「We are the Future(藝術超未來)」展(5月26日?8月12日)、「360 degree cyclorama screen」(5月12日〜7月29日)を開催。「Future Pass」(5月12日〜7月15日)に参加。


猪子:密接なんじゃないかな。あそこに住んでる事で受ける刺激や発見は多いですね。アキバでは、架空と現実の境目が完全になくなっちゃってる。実在と想像上の存在がワケわかんないくらい混じってるし、影響を与え過ぎてる。そんなところ、世界中に二つとないですよね。

— そこがジャパンポップカルチャーのコアって言い方もできますね。

猪子:確実にそうで、一言でいうと非実在文化ですね。欧米は実在文化。だからアメリカの映画は実写が主流ですよね。トム・クルーズとか、あるいはレディー・ガガとか。日本はアニメが主流で非実在文化。非実在文化はインターネットと相性がいい。みんなが参加しやすいし、本物がないので。

— 初音ミクが象徴ですね。

猪子:そう。本物がないので。「俺の作った初音ミクが本物」って誰も言わないですよね。皆が作った初音ミクそれぞれが初音ミクで、偽物とか本物とか区別がない。日本って中心が無くて、皆が作っていく文化なので、だからインターネット時代と相性がいいですね。だから世界は、そっちに行くんじゃないですかね。

— じゃあジャパン・ポップカルチャーの世界性みたいなことでいうと、未来は明るいんですかね。

猪子:ポテンシャル的には圧倒的に明るい。ただ、法体系は真逆に向かってるから危うい側面もある。細かい話ですけど、MADや非実在ポルノが禁止だって言い始められたり、コミケみたいなものも違法だみたいな空気ができたり、クラブもダメにしようとしていたり。いませっかく21世紀になって情報社会になって、日本本来のポテンシャルが花開く可能性があるし実際花開きかかってるのに、社会自体は20世紀型の欧米の倫理観とか法体系を逆に広げようとしている。日本は寛容だったからこそ文化が花開いたし、東京は歴史上ずっと寛容な都市だったのに。

— チームラボはその非実在文化の先頭になって切り開いてるって意識なんですか。

猪子:ま、先頭には立ってない(笑)。というか、チームラボは文化をリード出来ないと思う。文化はやっぱり、コミュニティとか集団とかもっと大きなものが作ってる。アキバとかネットで遊んでる子が集合体として作ってるから、僕らが文化に貢献してることはないと思うし、うちらがいようがいまいが、文化は同じ速度で進んでいくと思う。でもテクノロジーによる新しい可能性のヒントは提示できるかもしれないし、世界に対して『やっぱり東京は、日本は面白いな』って思ってもらえるかもしれない。過去から遡っていまの社会制度がどういうふうに連続性から逸脱しているかっていうのを社会に対してフィードバックできる。それによって文化がより育ちやすい環境になるよう貢献できたらいいなと思うんだけど。……でもあんまり発言力高めるといいことないんで、気をつけないと(笑)。

【開催概要】
展示名:We are the Future 展(台湾語:藝術超未來)
開催期間:DigiArk: 2012年5月26日(土)〜8月12日(日) 
時間:火曜〜金曜 9:30〜16:30 / 土曜〜日曜 9:30〜17:30
定休日:月曜日
会場:国立台湾美術館 DigiArk
台中市西區五權西路一段2號
http://www.ntmofa.gov.tw
http://bit.ly/ISGL3P
入場料:無料

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