Photo:Satoru Tada | Model:Taichi Mukai | Interview:Atushi Hasebe | Text&Edit:Seiya Kato
— ニューアルバム『COLORLESS』のリリースから数ヶ月が経ちましたが、サードアルバム『SAVAGE』とはかなり違った印象を受けました。
向井太一(以下、向井):楽曲制作に関しては、先にコンセプトを決めて、それに沿って自分がその時感じたこととかメッセージを反映させていくことが多いんですが、『COLORLESS』は、『SAVAGE』という作品があったからこそ生まれたアルバムでもあって。自分の中ではどちらも繋がっているんです。
— それぞれが独立しながらも、対になっている。
向井:そうですね。その時の自分がいたから、今の自分がいるというか。
— 何か心境の変化があったのでしょうか?
向井:『SAVAGE』を制作していた時は、自分の中でミュージシャンとしての自信を失いかけていた時期でもあったんです。自分が理想としていたものに中々届かなくて。昔から色々と器用にやってきたタイプなんですが、ヴィジュアルやアートワークを自身で手掛けるなかで、「果たして自分には才能があるのだろうか」っていう迷いが生じていたんだと思います。なので、『SAVAGE』というアルバムは、その頃に抱いていたネガティブな感情を吐き出すような作品になっていて。
— なるほど。
向井:でも、ファンの方々がそういった作品を支持してくれたり、今までとは違った層の方々が聴いてくれたりしたことで、自分の中にあるネガティブな要素も自分自身の一部として受け入れられるようになったし、そこからポジティブなマインドも生まれて。『COLORLESS』はコロナ禍に制作したアルバムだったので、改めて「音楽家として何が表現できるか」というのがストンと落ちたというか、自信とまではいかないけど、制作に対して今まで以上にやる気が出た部分もありました。大変な時期ではありますが、自分の居場所を再確認できたように思います。
— 『COLORLESS』は話題性のある楽曲が多く、反響も大きかったと思うのですが、ご自身で振り返ってみていかがですか?
向井:正直、まだ良く分かっていないですね。リリースツアーでは今まで以上にファンの方々の熱量を感じたんですけど、「次のステップにいけた」とは言い難いかなと。
— けど、ワンマンライブも久々でしたし、手応えはあったのでは?
向井:2020年は自分自身の調子がすごく悪かったんですよね。配信ライブとかもやったんですが、全然納得のいくパフォーマンスを披露出来なくて。それと比較すると、この間の東京公演では修正すべき点もありましたが、満足度の高いライブをお見せできたかなと。
— ”納得のいくパフォーマンス”というのは歌に関して?
向井:歌もそうですし、歌がダメだと他の部分もダメになるって感じで。2020年はレコーディングでもかなり苦戦しましたね。『COLORLESS』のレコーディング時から、少しづつ調子を取り戻した感じです。
— 『City Connection』は、背景にシティポップを感じさせるアーティストも多く出演していますが、向井さんの音楽にもJ-POP以前のシティポップに通じる要素を感じます。
向井:”ポップミュージック”であることは自分でも強く意識していますね。ポップさだったりキャッチーさと、玄人の方が聴いてもしっかり引っ掛かる音楽とのバランス感覚いうのは、デビュー時からずっとイメージしてきたことです。
— 具体的に影響を受けたアーティストは誰かいますか?
向井:宇多田ヒカルさんの影響は大きいですね。邦楽的な部分と洋楽的な部分のバランス感覚が丁度良いというか、すごく綺麗だなと思います。歌詞にしても、トラックにしても、フロウにしても。
— 宇多田ヒカルのように誰もが知るアーティストになりたい?
向井:もちろん。「向井太一といえばあの曲だよね」って感じで、本人のイメージよりも曲が先行して認知されているのが理想的です。
— 現代では、コンテンツの消費速度が以前よりも格段に上がっていて、なかなかそれが難しい状況でもありますよね。
向井:難しくなってきていますね。曲単位で瞬間的に売れているアーティストはたくさんいるけど、1人のアーティストとして支持されて残っていくのは難しい時代になったなと思っています。逆に、その中で自分はどうしていくのかって部分が面白かったりもするんですけど。
— 自分の中で大切にしていることって何かありますか?
向井:スピード感ですかね。作りたいものはその時々で変わるので、意識的にアウトプットのスピードを上げています。あとは、どんなジャンルの曲をやっても、一貫して「向井太一の音楽です」って言えるようなものを作っているつもりです。
— ちなみに海外での活動に興味はありますか?
向井:うーん、それはあるようでないですかね。最近はサブクリプションサービスやインターネットのお陰で、日本語で歌っていても海外には伝わるし、流行る時は流行ると思うので。海外進出を見据えて、何かを意識的にやっているってことは無いです。
— ファッションについても少し話を伺いたいのですが、普段はどんな洋服を好んで着ていますか?
向井:昔はシンプルなものを選んで着ていましたけど、最近は、パッションが高まる洋服というか、衣装に関しても普段自分が着られないものをメンズ、レディース問わずに選ぶようになりましたね。
— 音楽以外のジャンルのクリエイターで気になっている人はいますか?
向井:『COLORLESS』の時にご一緒させていただいたSTUDIO THE BLUE BOYを手がける正田啓介さんという方がいるんですけど。普段は主にテキスタイルとかのデザインをしていて。正田さんの作品は、僕の中ではイタリアの海を連想させるというか、土着性を感じたんですよね。ヨーロッパらしい土臭さがありつつも品があって、日本のカルチャーとは少し異なっているので、彼の作品はすごく好きですね。
— ちなみにManhattan Portageというブランドにはどんなイメージをお持ちですか?
向井:良い意味でファッションの枠を飛び越えているというか。ジャンルを超越するっていう部分では、僕が追い求めているものとかなり近いのかなと勝手ながら思っています。
— 最後に『City Connection』で共演するアーティストで誰か印象的な方がいたら教えてください。
向井:Ryohuくんは僕のデビュー時のリリースイベントにも出演してくれたりしてまして、久々に会うので楽しみですね。ライブが上手いアーティストのステージは何回見ても参考になります。今回、僕の方はサウンド面に強みがあって普段ライブではあまりやらない楽曲を中心にやろうかなと思っていまして。いつも観に来てくれているファンの方々にも楽しんでいただけるセットリストになっていると思うので、楽しみにしていてください。
開催日時:2021年7月18日(日) 17:00~21:00
開催場所:LIQUIDROOM
東京都渋谷区東3-16-6
料金:4,800円(前売り) ※各ドリンク代別途
www.manhattanportage.co.jp/special/city-connection-3
■Live Streaming
開催日時:2021年7月18日(日) 17:00~21:00
開催場所:ZAIKO LIVE
料金:2,500円(当日)、2,000円(前売り)
※配信終了日から7日間アーカイヴの視聴可能
MUSIC BOX by CITY CONNECTION
https://www.mixcloud.com/cityconnection
発売中
■CD
品番:TFCC-86755
価格:3,300円(税込)
https://tf.lnk.to/COLORLESSPR
■収録曲
01.僕のままで(Produced by 百田留衣)
02.Love Is Life(Produced by CELSIOR COUPE)
03.Ups & Downs feat.mabanua(Produced by mabanua)
04.BABY CAKES(Produced by T.Kura for Giant Swing Productions)
05.Comin’ up(Produced by CELSIOR COUPE)
06.悲しまない(Produced by omshy)
07.Get Loud (Produced by CELSIOR COUPE)※EDWIN『ジャージーズ』CMソング
08.Don’t Lie(Produced by Azad Naficy & William Leon)
09.What You Want(Produced by SONPUB, ZUKIE)
10.Sorry Not Sorry(Produced by Shingo.S)
11.Bed(Produced by grooveman Spot)
12.Colorless(Produced by 百田留衣)
Bonus Track. We Are(Produced by CELSIOR COUPE)