今の若い人たちも彼をカッコイイものとして捉えているのではないでしょうか。自分がRUN DMCを初めて見たときのように。
— 2016年春夏シーズンで[adidas Originals by NIGO]は通算5シーズン目を迎えます。コラボレーションをスタートする際のインタビューで「3シーズン分のデザインは既に終わっている」と話していらっしゃいましたが、4シーズン目、そして今回の5シーズン目はどんなコンセプトでデザインを行ったのでしょうか? 過去3シーズンとの違いが何かあれば教えてください。
NIGO®:シーズンを重ねるごとに、[adidas]のデザインチームとの波長も合って来ており、どんどん洗練されたコレクションが出来上がっています。基本は”1980年代のスポーツ”をテーマに掲げ、そこからインスピレーションされるコレクションを作っています。自分でも「早く袖を通したい」と思えるような、どれも良いコレクションに仕上がっています。
— NIGO®さんが[adidas Originals by NIGO]スタート時に思い描いていた「やりたいこと」は、現在のところ、何パーセントぐらい実現されていますか?
NIGO®:9割くらいは実現出来たと思っています。
— [adidas Originals by NIGO]のルックブックにはRatking、そしてStormzyといずれもフレッシュで勢いのある若手アーティストが起用されていますが、その理由を教えて頂けますか。また、[adidas]と音楽の関係性について、NIGO®さんはどのような印象、考えを持っていますでしょうか。
NIGO®:1980年代にRUN DMCというHIPHOPグループが、まだメジャーになる前から[adidas]を身につけたことで、一般的なファッション層にも影響を与えました。そういった現象を暖め返すわけではないですが、自分が作るものはマニアックなので、そういったアンダーグラウンドでかっこいいアイコンとなる人物を常に探していました。前回はニューヨークでRatking、今回はロンドンでStormzy。やっぱり[adidas]は、グローバルブランドなので、世界中のアンダーグラウンドでかっこいい、アップカミングな人たちが着てくれることが、コレクションのイメージにはピッタリかと思っています。
— Stormzyの存在を知ったのはいつ頃の事ですか?
NIGO®:2014年のデビューした頃に、イギリスの友達から「かっこいいラッパーが現れた」と教えてもらいました。それからYouTubeを閲覧したら、動画再生回数がすごかったので、驚いたことを記憶しています。
— Stormzyというアーティスト、そして昨今のUKのグライムシーンはNIGO®さんから見て、どのような魅力がありますか?
NIGO®:自分が子供の頃にRUN DMCを初めて見た衝撃と似た格好良さを感じました。彼のとりまきも含め、HIPHOPのルーツというか、楽しさをすごく感じました。YouTubeの動画再生回数が多いということは、おそらく今の若い人たちも彼をカッコイイものとして捉えているのではないでしょうか。自分がRUN DMCを初めて見たときのように。
— NIGO®さんのアメリカンカルチャーとの関わりについては色々な媒体でも取り上げられているかと思いますが、UKカルチャーとの関わりや現在のロンドンの印象、注目している場所や人、シーンについて教えてください。
NIGO®:アメリカのカルチャーは、一度、イギリスを経由して日本に入ってくると、とてつもなくお洒落なものになる気がしています。やっぱりイギリスは、島国ですごく日本にも似てると思います。自分はこれまで、常に「アメリカ!アメリカ!」と言ってきましたが、イギリスから目を離したことも一度も無いですね。注目している人は、RatkingやStormzyのような次世代のラッパーです。
— ファレル・ウィリアムス、カニエ・ウエストなど、現在のadidasにはNIGO®さんと親交の深いクリエイターが集結しており、僕らとしては90~00年代のNYのように何か面白いことが起きるような予感を感じていたりもするのですが、こういった状況についてはどのように感じていますでしょうか。
NIGO®:こういったムードは、意識して出来るものではないので、人と人との繋がりやリスペクトからシーンは生まれると思っています。この先もどうなるかは全然わかりませんが、みんなが個人として成長をしていて、良い意味で歳もとってるので、また何かできたら昔よりもすごいものが出来るのではないでしょうか。
— 現在は『Campus』や『Superstar』など比較的クラシックなモデルのスニーカーが[adidas Originals by NIGO]からリリースされていますが、個人的にはNIGO®さんが作る『ULTRA BOOST』や『TUBULAR』も見てみたいなという気持ちがあります。そういった少しハイテクなデザインのスニーカーをアレンジすることに興味はありますか?
NIGO®:無いことはないですが、やっぱりオールドスクールでローテクでシンプルなデザインが好きですね。