渋谷のパルコ1の壁面に描かれたこの巨大なアートを見ただろうか?
日本を皮切りに、世界中のアーティストがスミノフのブランドコンセプトであるインクルーシブ(オープンになることで、1つになる)を軸に、ストリートアートで、ポジティブなメッセージを吹き込むことを目的としたグローバルアートプロジェクト、『SMIRNOFF® Global Art Project』がスタートした。誰もが期待を胸に抱く春。今回は「絵馬」をコンセプトに、SNSでシェアされた、春に思う希望や目標、それぞれの思いとアーティストの思いが1つの作品となっている。
見慣れた景色に突如現れたミューラル(壁画)。文化の違いをも越えるストリートアートの可能性とは。今回のアートを手がけたアメリカのフリーランスデザイナー、Bryan Patrick Toddに話を聞いた。
Photo:Masaya Fujita、Text & Edit:Shu Nissen
こうして声をシェアする、オープンになることで何かポジティブなことが起きたらいいなと願っています。
— まずは、ご自身のアーティストとしてのルーツについて教えてください。
Bryan:子供の頃からアートやビジュアルが好きで、20歳になる頃にはアーティストとして自分のキャリアを築いていきたいと考えるようになっていました。それからは、あえて学校へ行かないで、1から自分で学ぶことに決めて独学で勉強を始めました。何年もかけてやっとの思いでサインショップでの仕事に就いてからも昼は仕事をして夜は勉強、フリーランスの仕事もこなすといった生活でしたね。そんな中で、70年代~80年代にニューヨークで活躍していていたHerb Lubalinや、Luca Ionescuというオーストラリア人のアーティストのレタリングのスタイルにすごく惹かれて、もともとレタリングとタイポグラフィにはすごく興味を持っていたので、ミューラルのようなストリートアートをしたいと強く思いました。それで最初のストリートアートを行ったのがおそらく6年程前ですね。
— 今回のプロジェクトに参加することになった経緯は。
Bryan:スミノフがオファーをしてくれたことがきっかけでした。SNSで集めた実際の声をストリートアートを通してシェアするというのが、すごく面白いアイディアだと思ってインクルーシブというコンセプトにも共感できたんです。この壁にある作品は、SNSで募集した日本のみなさんの声を取り込んでできています。自分以外の人々の声が入っている作品も日本に来るのも初めてだったのでそれも楽しみでしたね。
— スミノフというブランドそのものについてどんなイメージを持っていますか?
Bryan:スミノフはアートやクリエイティビティに関して理解があり、とてもオープンマインドなブランドだと思います。もちろんスミノフのことはこのプロジェクトの前から知っていましたし、これだけ広く知られたブランドとコラボレーションするのはアーティストとして光栄なことで、エキサイティングなプロジェクトに参加する機会を与えてくれて感謝しています。最初から最後まですごく協力的で、とても自由な環境を用意してくれたんです。こういうブランドがもっと増えてくれることを願います(笑)
— 日本に来たのは初めてということですが、渋谷はどういった印象ですか?
Bryan:リサーチをしている時点で、たくさんのお店やスクランブル交差点があることは知っていたのですが、実際に来てみてすごく感じたのは、街中にある広告や看板などのビジュアルがすごく面白いですね。サインペインティングの歴史と広告っていうのはすごく結びついているのでやはり気になるんですよ。あとは、やっぱり渋谷はエネルギッシュな街という印象。朝から夕方までずっとストリートで作業をしていたので、一日を通して、バラエティ溢れる人たちのエネルギーを体感できました。だから今回は自分のアート作品というだけでなく、活気ある渋谷エリアの空気、新生活が始まる春の時期のエキサイトメントを取り込んで街に溶け込む作品にしようと思いました。そしてそのエネルギーがどのようにして人々の生活の変化にリンクするのかということを表現したかったんです。
— 普段はアメリカンクラシックな作風が多いと思いますが、今回は日本の文化が混ざっている作品ですよね。そこに感じた面白さは何かありますか。
Bryan:特別な作品になったと思います。日本では桜が美しい春の時期なので、この作品では桜や雲、風などたくさんの要素と多くの色を使いました。普段の作品は文字が中心で、色もモノクロか、2・3色使う程度なんですよ。自分にとって新しいテリトリーでしたが、出来映えにとても満足しています。あとは、日本の文字を初めてブラシで書いたのですが、すごく自然に書けるという点に魅力を感じました。アルファベットでのサインペインティングは、線やカーブや角がなかなか理想通りに動かないので文字を書くのにかなりの労力を使うのですが、日本の文字は自然にハケやブラシを使うことができて感動しました。
— 日本語の文字は海外の方にとっては難しいと思ったので意外です。この作品では日本の絵馬がコンセプトになっているんですよね。
Bryan:はい。絵馬について調べるにつれて、すごく魅力的なものだなと思いました。物理的にこの壁に何か掛けるということはできなかったのですが、最終的には絵馬のコンセプトそのものからインスピレーションを受けて、このような作品が出来ました。
— (作品の)“Share our voice(シェアしたい私たちの想い)”とはどういう意味ですか。
Bryan:元々は“Share your voice(あなたの声をシェアする)“としていて、人々にアクションを求めるものだったのですが、今回は人々を招いて(インバイトして)、今年彼らにとって大切な願い事をシェアしてもらうことにしたんです。壁の願い事の一部はとても大きなスケールで、“世界を変えたい”とうものから、“料理がうまくなりたい”、“家族ともっと一緒に時間を過ごしたい”など、自分も共感できるような小さなものまで様々です。すごくユニークな作品なのですが、その中にいろんなバリエーションを見せたくて、“Share our voice”という方が、他の人も招待する(インバイトする)という意味で、正しいのかなと思いました。
— この“Share our voice”という標語は、スミノフのブランドコンセプトのインクルーシブ(オープンになることで、1つになる)にも繋がるような気がしたのですが、意識されたのでしょうか。
Bryan:そうですね。まず最初にアイディアを試行錯誤している時に、人々にフォーカスしたいと思ったんですよ。人々の願い事や言葉を物理的なイメージにスタイライズしてもいいのかなとも思ったのですが、自分の作品を真ん中に入れて、実際に日本に住んでいる人の声で囲むというこのデザインにすることで、1つになるというイメージをうまく表現できたかなと。
— 作品を見た日本の人に、どう楽しんでもらいたいですか。
Bryan:英語と日本語を入れることによって、この大きなコラボレーションが渋谷で起きているということを知ってもらいたいです。自分と同じ願いを持っている人が世の中にはいるかもしれないというメッセージも込めています。忙しく人通りの多い街ですが、足を止めて見ると、渋谷というエリアをまた違う観点から見ることができると思いますよ。渋谷では毎日いろんなクールなことが起きていますよね? 毎日ここを通る人も、旅行で来ている人にも、こうして声をシェアすること、オープンになることで何かポジティブなことが起きたらいいなと願っています。
— 最後の質問になりますが、今回のテーマにちなんで、ご自身の目標や願い事など、何かシェアしたいことはありますか。
Bryan:とても良い質問ですね。面白いことに、最近掲げていた目標は、このようなプロジェクトに参加することでした。でもそれを2016年始まってわずか3ヶ月で達成してしまうという素晴らしい出来事が起きたので(笑)だから次の目標は、今後もこのようなプロジェクトをたくさんやっていくことですね。