ヒップホップシーンのみならず、多方面に衝撃を与える脅威の新世代ラッパー、S.L.A.C.K.にインタビューを敢行! その素顔とは!?

by Mastered編集部

top2008年にリリースした限定100枚のCD-R『I’m Serious』が噂を呼び、2009年にファースト・アルバム『My Space』とセカンド・アルバム『Whalabout?』、そして、実兄PUNPEE、GAPPERとのユニット、PSGのアルバム『David』の連続リリースで、早くもその評価を確立した23歳のトラック・メイカー/ラッパー、S.L.A.C.K.。
2010年はBudamunkyとの『Buda Space』、そして『Swes Swes Cheap』という2枚の限定EPをリリースしながら、新世代らしいストイックにして奇想天外な活動を展開してみせた彼が謎の新レーベル、高田音楽制作事務所より新作『我時想う愛』をリリースする。さらなる進化を遂げた2011年のS.L.A.C.K.は果たして何を語ってくれるのか?

インタビュー・文:小野田 雄
写真:浅田 直也

ホントは誰にも気付かれないようにリリースして、不意打ちしたかった。音の噂を聞いて、「あれ、いいよ」って感じで、聴く人が気に入ってくれたらいいなって。

— まず、S.L.A.C.K.くんにとっての2010年を振り返ってもらえますか?

S.L.A.C.K.:2枚のEP(Budamunky & S.L.A.C.K.『Buda Space』と『Swes Swes Cheap』)を出したことですかね。さり気なく作ってたというか、『Buda Space』を一緒に作ったBuda(munky)くんは天性の才能がそのままぶっ飛んでるんですよ。違うジャンルにもそんなに目もくれず、音楽を作り続けているので、ブレがない。考え方や発想、ものの作り方なんかが日本人離れしているんですよね。10年間、LAに住んで、彼のように向こうのノリで現地のシーンと繋がれている人はホント少ないみたいだし、日本では貴重な存在だと思ってるんですけど、たまたま、彼のビートでライヴする機会があって、「これ、そのまま録っちゃうおうよ」ってことになったというか。俺が1週間くらいかけて家で録ったラップをBudaくんに送ったら、「いい感じなんじゃないの?」って。『Swes Swes Cheap』も同じ頃、瞬発的に録ってたものがたまたま一つのスタイルに統一されてたんですよね。

— そのスタイルを言葉にするなら、S.L.A.C.K.流のウェッサイ・ヒップホップってこと?

S.L.A.C.K.:そうっすね。Budaくんも西海岸に住んでいたし、彼から「これ、ウェッサイっぽいっしょ」って聴かせてもらってたのが日本に入ってこないようなLAのヒップホップだったりして、その影響はありますね。日本ではPファンク的な、ちょっと海の近くのスタイルをウェッサイと呼んでますけど、そう呼ばれていないマッドリブもドクター・ドレに象徴されるウェッサイと通じるところがあったりするし、『Swes Swes Cheap』ではそういうミッシング・リックをつないだ形で提示出来るんじゃないかなって。
今まではコマーシャルな感じがUSヒップホップのイメージだったんですけど、Budaくんから教えてもらって、「俺らみたいにあっちでやってるやつらもいるのかな?」とか、自分のなかでのヒップホップが進化したというか、2010年は自分にとってヒップホップを強化していた時期でもあったりして。要は日本に入ってきてる洋楽のヒップホップって、すごい表面的なものが多かったり、日本に入ってくる時点で情報が選別されていたり、色付けされていたりするじゃないですか。「エミネムなんかは逆にラップはホント上手いよ」とか、そういう判断は英語力が及ばず、分かったり、分からなかったりするんですけど(笑)、Budaくんにも「これ、どう?」って訊いたりして、「や、こいつはアメリカだと高校生が聴くような音楽でしょ」とか、映画なんかにしても、「これ、小学生が観る映画だよ」とか(笑)。ヒップホップといっても、それくらい幅があるので、全体像を捉えて判断するようにしてますね。

— 話を戻すと、『Swes Swes Cheap』は今言ったような自分なりのヒップホップ感の進化を瞬発的に作品へ落とし込んだEPだった、と。

S.L.A.C.K.:そうですね。「KANE(SDP / グラフィティライター)くんにジャケットのイラストを書いてもらいたいな」とか、そうやってスムーズに思いついたことを形にして、EPで出そうかなって思ったんです。今、アルバムを出すのは早いかなとも思ったし、人生を考えて、リリース・タイミングも見計らってみたり(笑)。なんか遊びながら作って、貯まってっちゃったものは出した方がいいのかなとも思ったし。

— 以前のインタビューで、1日1曲くらいのペースで曲が出来るって言ってましたもんね。

S.L.A.C.K.:そうっすね。『MYSPACE』はちゃんと作ろうとして作ったアルバムだったのに対して、『WHALABOUT』はなんとなく出来ちゃった感じ……まぁ、1日で1曲くらいは出来るんですけど、今はもうそんなに作ってないかもしれないですね。なんか、休んでます。なんで休んでるんでしょうね?(笑)。まぁ、でも、休むもなにも、ラッパーが職業っていう意識もそんなに無くて。たまたま、ラップが上手くいってるだけっていう感じもあるので、スケボーのDVD観たり、服買いに行ったり、機材換えたり、好きな音楽聴いたり、そうやって日々を過ごしているだけで、自分の職業的なヴォキャブラリーはずっと貯まっていくから、ただ、アンテナを張って、思いっきりリラックスするように心がけてましたね。

— 昨年、フィッシュマンズの単行本『すばらしいフィッシュマンズの本』でアンケートに答えてもらったなかで、「ネガティヴに捉えられがちな暇な時間をポジティヴに過ごすには覚悟がいる」ってことを言ってましたよね。


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S.L.A.C.K.:暇がネガティヴなものとして捉えられているのは、社会のモラルや周りとの差がそうさせているというか。それに対して、俺はどんどん攻め続けて、「それで何が悪いんだよ」とか「俺、悪いのかも」って考える隙もないくらい遊びまくる、みたいな。

— S.L.A.C.K.のリリックって、明確なメッセージ性はそこまで盛り込まれていないけど、今の話みたいな自問自答がそのまま言葉になっているという印象を受けます。

S.L.A.C.K.:その通りっすね。そのままです。今、リリックを書けって言われたら、この流れで書いちゃうし。ただ、俺の場合、音が重要なので、そうやって書いたリリックを使ったり、ビートに触発されて、その場で書いているだけであって、その内容が重要ってことではないんです。そういう意味でリリックは即興的ですね。何日も練って書くヤツの気持ちは分からないというか、むしろ、その場で書かないと書けないっていうのが自分の感覚なんですよね。フィッシュマンズを聴いていても、あの歌詞はそうやって書かれたものなんじゃないの?って勝手に思ってるんですけど。

— かたや、自分のプロジェクトではないと公言しているPSGは、去年のフジロックに出たり、ヒップホップ・シーンの枠を超えて広がっていたり……

S.L.A.C.K.:実験的というか。ただ、リスナーが思ってるより、俺、PSGをナメてますね(笑)。PSGは兄貴の企画だと思ってるというか、兄貴のセンスと俺のセンスはまた違うんだけど、「身近にいるいいラッパーを使えよ」ってところで協力しているところもあるし、昔から一緒にやってくれる仲間は大切にしたいと思いつつ、ライバルでもあるっていう。あと、PSGに関しては、ヒップホップを聴いたことがない人の前でライヴをやるのも、それはそれで面白いというか。すごい簡単に盛り上がることもあれば、ヒップホップに触れてないから、お客さんがシャイで全然動かなかったり。ただ、動かなくても、後から「よかったですよ」って言われたり(笑)。そういう意味で場慣れというか、経験を積むうえではいい機会ですね。

— その流れでいうと、2010年はソロとPSGでのフィーチャリングものが多数リリースされましたけど、なかでもPSGで参加した曽我部恵一「サマー・シンフォニー Ver.2」はヒップホップを知らないリスナーにとって、いいきっかけになった曲だと思うんですが。

S.L.A.C.K.:そうですね。「サマー・シンフォニー Ver.2」は、自分にしてはキャッチーだったんで、「これは売れそうだな」って思いました(笑)。あの曲のビートって、兄貴が作ったって言われてるんですけど、実は俺が家で作ったものだったりして(笑)。最初に兄貴が作ったビートを聴いてから、原曲を聴いたんですけど、「こういう風にやったら絶対カッコイイはず」って思ったアイディアがあったので、俺もビートを作ることにして、ノリ一発で一気に作りました。曽我部さんがやってたサニーデイ・サービスは、うちの親父もCDとかレコードを持ってたし、俺も普通に聴いてたんで、「これはスゴいことだろうな」と思いつつ、普通にやれたんじゃないかなと……ていうか、俺たちが曽我部さんに失礼なく出来たんじゃないか、と(笑)。

— ヒップホップ以外の音楽で最近聴いてるものは?

S.L.A.C.K.:今日もDJ HOLIDAYのセレクトCDをスケボーの行き帰りに聴いてたんですけど、最近はヒップホップにハマってるので、そういうCDがあったりすると、いい曲が自然と耳に入ってくるんですよね。あとはネタを掘ってますね。ソウルのすごいメロウなやつとか、誰のレコードなのかも分からずに「確か、裏の2曲目……」って感じで聴いてます。

— いわゆるネタ聴きですね。

S.L.A.C.K.:そうですね。最近はビートを作ろうと思ってるのに、そのネタを気に入りすぎて、というか、曲を壊したくなくなっちゃって、曲が作れないとか、ループしてみたものの「やっぱり元の方がいいや」って思ったり。最近はレコードを聴くのが自分のなかでのブームですね。

— みんな、PCでDJをやる時代に(笑)。でも、いま、レコードの相場は全盛期と比べると相当下がってるし、いいレコードがゴロゴロ転がってるから、実は掘るのが楽しい時期だったりして。

S.L.A.C.K.:やっとです、ホント。ヒップホップのレコードもちょっと前に初めて買って。いやぁ、掘るの楽しいっすね(笑)。俺、レコード世代じゃないし、「いいじゃん、MP3でも」って感じで全く関心もなかったんですけど、たぶん暇のおかげとちょっと稼げたこともあって、地方に行ったら、空いた時間にガーッと買って、宅急便で送ってもらうっていう。買ったレコードを聴きもしないで、その作業にハマっちゃって(笑)。

— (笑)買う時、試聴しないんですか?

S.L.A.C.K.:最近、ようやくするようになりました(笑)。それ以前はジャケ買いですね。飾ったりするのにもいいし。なんせ最近掘り始めたばっかりなんで、本能のままに掘ったら、みんなと違うことになるだろうし、その違いを意識して、自分を面白く成長させてみたいなって。試聴せずにレコードを買い続けてると、ジャケットで掘るセンスも研ぎ澄まされるというか、好みの音も安く掘り当てることが出来るようになるし、外れたレコードで敢えてループを組んで、その面白さが分かるようになったり、5年くらい寝かせておけば、音楽の聴き方も変わって、外れが当たりになることもあるだろうし。だから、ダサいジャケットのレコードを敢えて買いまくったりしますよ。俺、自分でジャケットも作るので、「この時代の人は何考えてチープなアートワークにしたんだろう? もっと、こんな感じに出来たっしょ」とか、発想をそのまま形にしちゃってる昔のアートワークの大胆さからは学ぶことも多いし、アートワークはどうしても見ちゃうんですよね。

— 今の時代は音楽もデザインも色んなフォーマットがあるから、発想の段階や作る過程で既存のフォーマットに当てはめて考えがちな風潮があると思うんですけど、そのフォーマットをいかに壊すかが新しいものを生む秘密でもあるというか。

S.L.A.C.K.:そうっすねー。「こういうジャケットで、こういう音だったら良くない?」とか、そういうことは考えてますね。昔のレコードって、例えば、アートワークは意味分かんないドラゴンがバーンと出てるオリエンタルなデザインなのに、音がめちゃめちゃソウルフルでメロウだったりすると、そのギャップでヤラれるじゃないですか(笑)。

— あと、さっきの発言で、2010年は自分のなかのヒップホップを強化していたということですけど、強化するためにやっていたことは例えばどんなことだったりします?


S.L.A.C.K.(スラック)
日本のヒップホップ新世代を象徴する
MC/トラックメイカー。
音楽に造詣の深い父親の元に育ち、小学校6年生のころから楽曲制作をスタート。
ヒップホップ同様、スケートボードもこよなく愛する。
東京都板橋区出身。1987年生まれ。
http://youtube.com/user/SlackIYeraw

S.L.A.C.K.:カッコイイ音を聴いて、書いて録ったり、書かないでいきなり録ったり。現時点で俺のレベルをアメリカの基準に当てはめると、普通か、それ以下だと思うんですよ。要は向こうのレベルが高すぎるというか、逆に日本はまだまだレベルが低いし、日本人のプライドを見せれば張り合うことが出来る状況ではないというか。だから、アメリカに対抗するより、郷に入っては郷に従えじゃないんですけど、アメリカのいい部分を全部つかまなきゃいけないというか、ウータン・クランでいうところのカンフーの修行みたいな感じですよね。そもそも、何をもって、上手いラップとするかって話もあるじゃないですか? 10年くらいラップをやってきて、それが感覚的にようやくつかめて来たんですよ。

— S.L.A.C.K.くんが考える上手いラップを言葉にするなら?

S.L.A.C.K.:やっぱり、音なんですよね。例えば、「PSGみたいに、ビートに合わせないで、どうやってラップをするんですか」って、よく訊かれるんですけど、要するにそれは自分のグルーヴに乗ってラップをしてるってことなんですよ。ビートとビートの間には数え切れないほどのテンポがあって、そのテンポとテンポの間にはまたテンポがあって……そういう自由なグルーヴをいかにつかむか。ただ、それは文章的に理解するものじゃなく、やってきた結果やつかんだ感覚がそう説明出来るって話なんですけどね。しかも、それはものすごい微妙な話なので、そもそも生活感や発想から日本人的なものを抜いていかないと、出来ないのかもしれないというか。

— 日本では、「日本語ラップ」っていうフォーマットが確立しちゃいましたからね。

S.L.A.C.K.:そうっすねー。アメリカにもオールドスクールがあるように、日本も発展段階として日本語ラップっていう時代があったというか、それはそれでいいと思うんですよ。でも、今は今で、急激にスゴい人が出てきてると思いますし、俺は俺で、上手くなるためには書いて録るしかないなって。あと、兄貴のせいで(笑)、PSGのライヴの本数が増えたこともあって、ライヴも上手くなりましたね。それ以前はライヴが苦手だったというか、上手いっていう自信もなく適当にやってたので、今は上手くなってきてるんですけど、俺より上手い人はまだまだいるし、そういう人たちをまとめたり、盛り上げたりするところまではまだ到達してないというか。調子良くないと「セイ・ホー!」とは言えないというか、言ったとしても、「わ、言っちった!」って思っちゃってるし(笑)。まだ、そんなレベルなんですけど、同時に一生プロフェッショナルにならないことを目標にしてるんで、まぁ、気にはしてないんですけど。

— 「プロフェッショナル」っていう太文字の肩書きを敢えて掲げないのは、型にハマりたくないという意識から?

S.L.A.C.K.:むしろ、今のヒップホップはプロっぽくなったり、メジャーっぽくなったり、ちゃんと仕事として成り立つことに憧れている人が多いし、芸能人のなかの一つの分野としてラッパーが成立しつつあるというか。要するにそこでスターになりたいヤツといい音楽を作りたいヤツは、人気が比例するという点では同じかもしれないですけど、それ以外の点は全く別だと思うんですよ。まぁ、芸能人的なスタンスも悪いことだとは思ってないんですけど、俺はちゃんと音楽としていいと思うことを挑戦しながらやってるから、そういうところを聴いて欲しいんですよね。

— 要するに肩書き云々以前に音楽を追究したい、と。

S.L.A.C.K.:そうっすね。歌詞はいいから、音楽をよく聴いてくれっていう。まぁ、自分が見せたい部分と違うところにみんなが引っかかってくれるのも、それはそれで面白かったりもするんですけどね。そういうあれこれを考えると、今の状況は上手くいってるなって。だって、自分はめちゃめちゃ暇だし、作りたいと思って音楽を作ってるんですけど、それをみんなが聴きたがってくれてるし、CDにお金を払ってくれるから、俺は生活が出来るし、音楽をより良くするための時間ももらえているわけですからね。その音楽にしても、まだまだ曲は作れますから、自分を取り巻く状況は充実してると思いますね。そもそも音楽作りを止める止めないって話自体、ナンセンスというか、そんな大層なもんじゃなく、まだ始まってもいないと思ってますから、まぁ、気楽にやってますよ。

— そんななか、2011年最初の作品である『我時想う愛』がリリースされるわけですが、たまたま、まとまった曲が出来たから作品を出すというノリは変わらず?

S.L.A.C.K.:今回は、ネタ掘りブームの一貫というか、地方にいくたびに掘って、その時にハマってたネタがまさにこういうメロウな感じ、あとアルバムの最後に入ってるメロウな曲ばっかりの作品にしたかったっていうのがあって。何をもってメロウというのか。キャッチーだったり、ポップなものをメロウって言ったりもするし、ダークなものでも、キャッチーなものはあったり、色々あるじゃないですか。個人的には80年代終わりから90年代前半にかけてのR&Bのいい部分、ちょっとトレンディー・ドラマ的なノリを引き出せたらなって思っていたんですけど、ぶっちゃけて言うなら、完全にチル・アウトする時の音ですね。シャワーを浴びて、さっぱりした後、ちょっとビールを飲みながら一服して聴いたりとか(笑)。いい意味で聴き流せるもの、適当にかけておいて疲れない長さにたまたまなったこともあるし。

— 過去の作品は、ねじれたような、独特のグルーヴ感がありましたけど、今回はスムーズな曲が多いですよね。

S.L.A.C.K.:確かに。何でですかね? ちゃんと作ったんですかね(笑)。うん、ちゃんと作ったんだと思います。そういうねじれた感じの曲もちゃんと入ってると思うんですけど、過去の作品はそれを大げさにやってたところがあったというか、もっと自然に出せると思うし、自分で聴いても、まだまだ甘いっすね。ジェイ・ディーなんかはもっときれいに乗ってるけど、彼のリズムがありますからね。

— ただ、今回のトラック・メイクは確実にスキルがあがってますよね。

S.L.A.C.K.:うん。ビートはすごい作りましたからね。曲によっては全部自分で弾いてるものもあるし。その辺は昔バンドをやってた時に感覚だけで弾けない楽器を弾いてたこともあるので、メロディの作り方とか真似する力はなんとなくあったりするし、ビートに合わせて感覚的に弾いてみたものをそのまま使ったり、いい部分をピックアップして使ったり。弾いたのはベース、あと、色んな音が入ってるキーボードを2万くらいの中古で買ってきて、中途半端な音を使ったり。常識的にいえば、時間をかけることがクオリティにつながるかもしれないんですけど、俺の場合、一番最初に瞬発的に出たものを最後まで自信をもって貫くようにしてますね。

— そういう意味では新たな一面が披露されている作品でもあるというか。

S.L.A.C.K.:そうですね。もともと自分のなかには色んな面があるというか、別にユルいのだけが売りというわけでもないし、今回に関しては、キャッチーなものが出来たので、みんなも聴きやすいんじゃないかと思いますね。元々の発想として、俺が聴きたいネタをみんなに聴かせたかったりもするし、自分の音楽センスを見せたいということもあるのかもしれないし、ラップもちょっと変わりましたね。伝えたいのはその瞬間に思ってること。「こう言ったら、みんな共感するんだろうな」っていうことを普通に考えつつ、『MYSPACE』に近いノリもあるし、ネタと向き合ってビートを作ってるここ最近の日記をまとめたような感じで一気に作った作品ですね。

— あと、出音がよくなってますよね。


Alex from Tokyoと熊野功雄によるユニット
Tokyo Black Starの『Black Ships』。
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S.L.A.C.K.:そうですね。そこはこだわってます。ミックスやマスタリングの作業が好きなので、以前は自分とか兄貴がやってたんですけど、『Swes Swes Cheap』からAlex from TokyoとTokyo Black Starっていうユニットをやってる熊野(功雄)さんにマスタリングをお願いしていて、その人とは耳の感覚が合うというか、すごく尊敬してますね。俺が自分でミックスする時はMTRを使ってるんですけど、画面がすごく小さいので、基本的に耳で判断しているんですけど、熊野さんは「もうちょっと湿った感じですかね」とか、そういう俺の感覚的な意見を汲み取ってくれるので、耳がホントにいいんだなって。あとはマイクを換えたり、機材周りですかね。その辺はちゃんと自分で稼いだ金で(笑)、しかも、最近の機材というより、自分が好きな渋い機材を熊野さんに相談しながら組んでいったり……まぁ、普通のリスナーにはなかなか伝わらない話なので、不快なく聞き流してもらえば、俺としては成功だと思ってるんですけど(笑)、いいスピーカーからデカい音で聴いてもらえば、その良さはよりよく分かってもらえると思います。

— その点は今回の作品の大きな聴き所だと思います。

S.L.A.C.K.:今回はジャケットも友達に書いてもらったし、ぽんとリリースして、プロモーションもそこまでしなくていいというか、ホントは誰にも気付かれないように出して、不意打ちしたかったというか(笑)。で、音の噂を聞いて、「あれ、いいよ」って感じで、聴く人が気に入ってくれたらいいなって。「これが今の俺だぜ」っていう作品でもないし、みんながポジティヴになれるような、そんな楽しむ音楽として作ったつもりなので。

— 『我時想う愛』っていうタイトルに象徴されている通りというか。

S.L.A.C.K.:そうっすね。黒人のソウルのレコードで、『? of love』っていうタイトル、ジャケットは女がうっすら映ってて、謎に煙かったりするムーディなレコードがあったりするじゃないですか。そういう感覚を持ちながら、今の新しい感覚の作品ってことを考えた時、タイトルは漢字にして、言ってみれば、東京事変に近い感覚かもしれないですけど、外人から見ても日本人から見ても、センスが悪くない並びで“愛”って言葉を使えば、いい塩梅になるんじゃないかって、10秒ぐらいで決めましたね。女も好きだし、酒も好きだし、自分が生きてる時間を家族からヘイターまで含めて、まとめてポジティヴなもの。今は聴いてくれてる人がいることも自覚しつつあるし、そんなニュアンスが音を通じて、伝わるといいんですけどね。

— あと訊きたかったのは、今回の作品をリリースする「高田音楽制作事務所」っていうレーベルについてなんですけど。

S.L.A.C.K.:これはうちのレーベルです。俺が作りました。親父が仕事を辞めてデスク・ワークを手伝ってくれるっていうし、Watterっていうビートを作ったり、俺のPVに出てくれたりする友達が大学を出たこともあり、「じゃあ、事務所みたいにしちゃおうか」って感じになったんですよね。で、名前は?レコーズって付けても目立たないから、日本の代表的な老舗みたいな名前を使ったら、逆にカッコイイでしょってことで。とはいえ、DOGEARからも遊びついでで作品を出そうと思ってるし、友達が金ないなら協力したいので、全体的にはいい意味でナメた感じでやっていきたいと思ってます。

— あと、2011年はBudamunky、ISSUGIと組んだSICK TEAMの作品も?

S.L.A.C.K.:そうですね。出ます。SICK TEAMは今の俺というか、ビートは基本的にBudamunkyで、ISSUGIくんと俺がそこでラップしてるっていう。まだ決まってないので詳細は言えないんですけど、海外のビート・メイカーにも頼めたらって思ってますね。海外のヤツにもチェックして欲しいし、そこまで重くは考えてないんですけど、自分たちにとっての挑戦というか、ホントにドープって感じで、ラップもバチバチだし、週イチで3人集まって、「子供の時、何にもやることないけど、いつも同じ面子で集まってたようにやりたいよね」って話してるんですけど、そうやって濃いヒップホップが日々出来上がりつつありますね。

S.L.A.C.K.『我時想う愛』

2011年2月16日発売予定

TOSJ-001 / 2,415円
(高田音楽制作事務所)

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BONUS BEATS & PIECES

新作『我時想う愛』収録のミュージック・ビデオ。すでに2曲がYouTubeにアップされている。こちらも要チェック。

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