「SIMI LABって何?」 – 謎が謎を呼ぶ変幻自在のHIPHOP集団、SIMI LABとそのデビューアルバムの真相に迫る

by Mastered編集部

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なんかPublic Enemyのセカンドアルバムみたいな長いタイトルが良いよねって話があって。そういうのが良いなっていうのはなんとなくありました。(OMSB’Eats)

— 今回のアルバムを製作する上で特に気を使った事は何かありますか? 1stアルバムという事もあり、ナーバスになりがちだとは思うんですが。

ディープライド:敢えて気にしなかった。気にした方が良いのかなって考えが頭をよぎっても、敢えて「必要ないでしょ」って自分に言い聞かせました。

マリア:私は、「自分が一番かっこいいぜ」と思いながらやってたかな。

MARIA

MARIA

ディープライド:それはみんなそうだよ。

QN:僕はさっきマリアが言ったような「一番かっこいい」っていう部分もあったんですけど、それよりも、今の自分っていうのをパッケージング出来ればなって想いが強かったです。だからこそ、出来なかった事に挑戦した部分もあったし、そういう事がフレッシュさにも繋がったというか。ずっとやってきたことをそのままやるよりも、今までに無かった新しい自分のラップスタイルに挑戦してみたりっていう事は結構ありましたね。
あとは、ミックスとかレコーディングも僕がやったんですけど、それは今しか出来ない技術で、今しか出来ない感覚のものというか。もちろんちゃんとしたエンジニアに頼んで、ちゃんとしたマスタリングをしてもらえば、それなりのものが出来るのかも知れないけど、そこを自分でやって、今の自分たちのサウンドをちゃんと詰めたかった。

オムスビーツ:もう、これぞ模範解答だね。ハイスペックは?

ハイスペック:自分はトラックを1曲やってるんですけど、それでやっとSIMI LABっぽいというか、SIMI LABっぽさみたいなものが何となく分かりました。今まで分からなかったんですけど、これでやっとというか、初めて出来た(笑)。
あくまで自分の中での話ですけど。

DJ HI’SPEC

DJ HI’SPEC

QN:そういうのちゃんと考えてくれてたんだ! 俺とか何も考えずに作ってた…。

— 今回のアルバムではオムスビーツさんが8曲、QNさんが3曲、ハイスペックさんが1曲、それぞれプロデュースを手掛けていますが、この割合はどうやって決めたんですか?

QN:僕はまぁ、EARTH NO MAD from SIMI LABという名義でソロアルバムをリリースしてたってこともあって、「SIMI LABっぽさ=オムスのビート」だったんですよね、自分の中では。
だから今回SIMI LABでアルバムを作ろう、じゃあビートはどうするって話になった時になんとなく、オムスを主体に選んでいくがいいのかなって。EARTH NO MADのアルバムで伝えきれていない部分を、もうちょっと抜き出したいとは考えてました。言い訳がましくなっちゃうんですけど、なるべく自分たちの手で回していきたい部分があったので、ミックスとレコーディングは僕、ビートはオムスビーツ、ラップはみんなで、とそれぞれの役割はある程度イメージしてた部分ではあります。

— アルバムの中で思い入れの深い曲を教えて頂けますか? それぞれ違うとは思うんですが。

QN:ハイスペックのビートの“show off”かな。最初にトラックを聴いた時にオムスが賛同して、「コレは絶対使おう」って言ってて。その良さっていうのをなんとなく感覚では理解してたんですけど、直感的に良いと思えたのは実は最近なんです。アルバムを通して聴いた時に、この曲が一番カッコイイ。僕はそう感じますね。

オムスビーツ:俺も“show off”。最初、ハイスペックに音を聴かせてもらった時から、「ああ、これはすげえな」って思ってました。本当に、「絶対にこれを入れなきゃアルバム作んない!」ってくらいの勢いだったんですよ。でも、その時は音質の感じが少し気になってて。ミックスしたらかなり変わりましたけどね。眼鏡とったらイケメンになるみたいな、そういう感じだったね。

OMSB’Eats

OMSB’Eats

QN:ミックスはあの曲が一番頑張った。でもミックスの前にも1回作り直してるからね。音質も変えたりとか。

ディープライド:俺は“Get Drowned”って曲と“MOONBEAM”って曲ですね。“MOONBEAM”はみんなそう思ってるかもしれないんですけど、すごくポップなんですよ。J-POPっぽい。意外に人に聴かせるとそうでもないって言われるんですけど、俺らの中で一番ポップな曲で、普段J-POPはほとんど聴かないけど、そういう風に勝手になっちゃったっていう不思議な曲。だから変に思い入れがある感じですね。

マリア:私は“Red Bull / How Are You”って曲。スキットみたいなヤツなんですけど、あれこそまじでその場のノリをパッケージングした感じだと思うんです。あれって構成としては結構シンプルに出来てるじゃん? いい素材で作ったシンプルなご飯みたいなさ。

オムスビーツ:一番高いこしひかりみたいな。

(一同笑)

マリア:なんかトラックもシンプルでサクってしてて良いし、テーマも良かった。ラップも8小節で「How Are You?」って言われた事に対して返答するって曲なんですけど、かなりラフに作りました。ラフに作った割には、出来上がってきたときにヤバい出来になってたから、あれが一番好きかもしれないですね。

オムスビーツ:良い意味でスキットになりきらなかったよね。

ハイスペック:俺は“NATURAL BORN”。トラックがすごく良いんですけど、シンプルで、ラップがかなり際立ってる。マリアのヴァースもヤバいし、みんながヤバい。リリックもフロウも全部がヤバいことになってます。

— リードトラックは“uncommon”ですよね。何故あの曲を一番最初に持ってきたんでしょうか?

QN:フックのキャッチーさというか、中毒性があるっていうのと、ライブでもいち早くやってた曲だったっていう事も大きいですね。僕達のライブを1回しか見てない人でも「あのサビが忘れられないんだよ」って言ってくれたりもするし。PVを撮るって決まった時も、イメージがぱっと湧いてきて、すぐに作れました。ちなみにPVの制作費は3,000円しかかかってないです(笑)。

— あのフックは印象的ですよね。どういう風に生まれたモノだったんですか?

ディープライド:あれは自分でヴァースを書く時になんとなく「普通って何、常識って何」って言葉で始めたんですよ。最初はいわゆる小サビみたいな感じで、普通のサビとは別に録ったら、思いのほか良くて。それで「これ、サビでイイじゃん」と。

QN:ディープライドは普通の会話でも「普通って何よ」みたいな事をいうんですよ。

ディープライド:昔はそれしか言ってなかった(笑)。その時期はずっと酒に溺れてたんで反社会的、暴力的な自分の気質が出てしまってましたね。

オムスビーツ:その時期のディープライドって持ってかれる様な事ばっかり言ってて。メンタルに来るんですよ。哲学的な話をするんですけど、真面目に聞いてると考え込まされるんです。俺、ディープライドのことをすごいなって思いたくなかったから、話半分で聞いてたわ(笑)。

QN:でも、この「普通って何?」って言葉はある意味、SIMI LAB全体のテーマみたいなところでもあるんですよ。だからもう「これだ。」と思って。

— なるほど。「Page 1 : ANATOMY OF INSANE」というアルバムのタイトルにはどんな意味が込められているのでしょうか?

QN:そんなに深い意味があった訳じゃないんですけど、SIMI LABの“LAB”はラボラトリー、研究所って意味だから、研究発表のその第1回目ということで“Page 1”っていう言葉は入れたかった。副題は“ANATOMY OF INSANE”、つまりは“イカれた人の解剖学”ってことなんだけど、ここは単純に響きとか、ノリできめましたね。

オムスビーツ:なんかPublic Enemyのセカンドアルバムみたいな長いタイトルが良いよねって話があって。そういうのが良いなっていうのはなんとなくありました。

Public Enemyのアルバム 「It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back」

Public Enemyのアルバム
「It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back」

— この後、リリースパーティーをはじめ、ライブで新曲を披露する機会が多々あるかと思いますが、ライブはどんな感じになりそうですか?

QN:ライブはがらっと変わりますね。今まではSIMI LAB自体の持ち曲はほとんど無かったので、大きく変わると思います。

ディープライド:そうですね。全員でやってる曲は1曲か2曲くらいだったので、今までライブを見てくれていた人にとっては結構違和感があるんじゃないですかね。

オムスビーツ:そうそう、「なんでこんなにメンバーが大勢いるのに全員でやらないんだろう」って思った人は多いと思うんですよ。だから、みんなでやってる“集団芸”みたいなライブを楽しんでもらえるはずです。

QN:まとまりというか、自分が最初に言っていた通りで、ポッセ感が欲しかったっていうのがある上でのソロ活動だったから、「どうなの?」って感じだったんですど、ようやく持ち曲が12曲もあってライブがガッツリできる状態が整ったので、楽しみですね。

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