山での過ごし方
― 他に天然素材モノで、気になってるアイテムって何かあるんですか?
小林:山で作業するときに穿いてる革のオーバーパンツ。あとは革パンとかも。革は火に対して強いんだよね。あとひざを付いたら下にイガがあった、みたいなときも安心。ワークウェアの範疇の古着が山での作業に使えるなって思い始めて、引っ張り出して着てたのね。その延長線上で「革パンもイケるんじゃないか」って。
― そこでもリサーチしてるわけですね。
山での作業というのはどんなことなんですか?
小林:薪作りがほとんど。あとは枯れ葉の整理。現場に行ってガスとか石油とか使いたくなかったから、給湯を完全に薪にしちゃったんだよね。だからつねに薪を割ってなきゃいけない事情になっちゃったの。ついでに東京の家も薪ストーブにしちゃったから、冬には東京でも必要だし。だから薪を割ってなきゃいけない時間が多い。そういうときはアメリカ海軍のオーバーパンツとかを着るようになったかな。別につねに防水である必要ではないわけだし。
― 必ずしもゴアテックスである必要はないと。
小林:山歩きにはゴアもいいけど、作業に防水性は無くても大丈夫。だから、今まではただ仕舞っておくだけだった軍モノとかフィルソンのコートとか、いろんな服が使えるようになってきたね。
で、そういう古着はすべて天然素材だから。そんな流れです。
― そこも自然と繋がってるわけですね。
小林:それで、服が天然素材でもいけるんだったら綿のパックもいけるだろう、って。雨が降ったら上にカバーをかければイイし、トレックポールとかも竹のステッキで十分だし。竹の方が軽いしね。やっぱりね、「揃えなきゃ」っていうあの呪縛から早く逃げたいよね。「何か足りない」って心配ばっかりしてなきゃいけないでしょ。
― そうですね。それは楽しくないですもんね。
小林:でも、さっき言ったみたいな歩き方なら、基本的には景色の良いところを歩くだけだから。散歩のようには行かないだろうけど、なにがしかの用心さえあれば十分普通に歩けるはず。その辺を今年来年辺りで試してみようかと。
― ちなみに作業以外には山で何をしていることが多いんですか?
小林:何もしてないなぁ。本読んだりたき火をしたり、ゴロゴロしてたり。地面に近い場所で寝てたりする。「何もしない」ために行ってるからね。
― 音響機器などは持って行かれますか?
小林:音楽はあるときと無いときと様々。その季節季節の音が聞きたいときもあるからね。一日目じゃ聞こえてこない音があったりもするし。なんか場慣れしてくると、聞こえてくる音が二日目三日目で違ってきたりする。
― 聞いてみたいです。
小林:最初山で一緒に過ごすと、慣れてなかったり怖かったりで音をかけたがるけど。
でも月光で木の陰がストライプに見えたり、流星がきれいだったり、そんなのをみんなで見てると、クラブに行ったりする週末もいいけど、火を囲む週末も面白いなって思うよね。
― ちなみに今、小林さんにとって山以外のエンターテイメントって何かあるんですか?
他のエンターテイメントはないなぁ。全体が山の話に収束し始めてるというか。全体の生活感として山に色々なところがタッチしてる。
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