いま食べるべきカレーは、世田谷にある。最注目4店の店主に聞いた、ちょっとディープなカレーのはなし

by Osamu Hashimoto and Yugo Shiokawa

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その3:三軒茶屋・Shiva Curry Wara(シバカリーワラ) 店主 山登伸介さん

山登さんはインド人シェフとともに歩む。これはSHIVA CURRY WARAのひとつの特徴。小規模なレストランでは決して多くないこのスタイルは、店主である山登さんのバックボーンによるところが大きい。

山登さん(以下敬称略)「僕はいまのお店を構える前、まずは独学のカレーを移動販売で提供していたのですが、しっかりお店で勉強したいと思い、一度移動販売をやめてグルガオンというレストランで働いたんです。調理補助をやりつつ、作っているところを見たり、インド人シェフから時間があるときに料理を教えてもらって、家に帰ってそれを実践していました。グルガオンでは基本的にインド人が厨房、日本人がホールという風に役割分担されていたのですが、そのときの経験が、インド人をシェフにおいて自分がそのマネジメントをする、という今の店の形にも活きていますね。グルガオンで働きはじめたときは、レストランのマネジメントというものにそこまで興味はなかったんですが、インド人との仕事のやり方はその時に学びました」

SHIVA CURRY WARAのカレープレートとともに客の多くがオーダーするチーズ・クルチャは、山登さんがいたグルガオンやその系列店の人気メニューで、その繁盛店のDNAはシステム以外の部分でも受け継がれている。しかし、クルチャやナンをはじめ、タンドール(北インドで多く見られる壷窯型オーブン)を使った料理をふるまう日本人オーナーのインド料理店というのは、ちょっと珍しい。インド人シェフが厨房に立つ、現在のスタイルが産んだ個性だろう。

山登「オープンから友人のインド人シェフと一緒にスタートしたのですが、もともとは自分ひとりでやるつもりでいたんです。グルガオンで一緒に働いていた彼は、そのころ別のお店でシェフをやっていたのですが、そのお店が閉まることになってしまって。次の仕事が決まっていなかったから、『一緒にやる? それだったらタンドールも入れるから』って声をかけたんです。自分だけだったら、タンドールは入れていなかったですね」

コリアンダーのカレーや夏野菜のサブジからなるカレープレートに、ピンクのあざやかなビーツのタンドーリロティを添えて。
夜はつまみメニューも充実で、飲ん兵衛にもうれしい。

三軒茶屋の駅から歩いて3分。SHIVA CURRY WARAが面する、西友の裏から茶沢通りへと抜ける、いくつかの飲食店が並んだ小道は絶好のロケーションだが、2階にあるお店に至るには、なかなか急勾配の階段が待ちかまえる。一体、なぜこの場所を選んだのだろう? じつは山登さん、グルガオンを辞めたあと、実店舗を開くための物件がなかなか見つからなかったため、オープンに向けた準備と平行して、移動販売をふたたびはじめていた。

山登「いきなりお店でやりたいという気持ちはあったんですけど、いい物件が見つからないんだったら移動販売をやりながらゆっくり探して、それなら自分のカレーのスタイルを模索しながらできるかな、と思っていました。その時に住んでいた家から近い三軒茶屋〜下北沢あたりで探しはじめたんですが、なかなか見つからないまま恵比寿や西荻窪の方までエリアを広げ……それでも、なかなかピンとくる物件にはであえなかったんです。今の店の前の通りは、元々買い物なんかでよく通っていて、その時にたまたまこの物件が空いているのを見つけて。即決でした。階段が急な2階だし、なかなか気づいてもらえないかもしれないという不安もありましたが、それでも早くお店を持ちたいという思いの方が強かったですね」

名居酒屋『うち田』の隣の、ちょっとだけ急な階段を登れば、そこがSHIVA CURRY WARA。
人気の飲食店が集う、絶好のロケーションだ。

もともと畑違いだった山登さんが飲食に興味をもったのは、意外にもタイやベトナムなど東南アジアが入り口だった。はじめてのひとり旅で訪れたタイでハーブやスパイスを使った料理に興味を持ち、紆余曲折を経て最初の移動販売をスタートしたときは、タイやベトナムのカレー、もしくはそれらをアレンジしたものを出していたそうだ。それが、旅を重ねるなかでインドを訪れ、しだいに現在の形にシフトしていった。

山登「今まで訪れた国と比べて、インドには食だけでなく特別な魅力を感じました。日常的な街の景色や生活習慣さえも刺激的で、値段交渉みたいな面倒なことも楽しく感じました。もちろんイヤな思いをすることだってあったんですけど、日本に帰ってきて数日後には、またインドに行きたくなっているくらい」

山登さんが思うインド料理の魅力とは、どんなものだろう?

山登「最初に思いつくのは、他の国の料理にはない力強さだと思います。インド料理って調理をする際に感覚的に進めていくところがすごく多いんです。そのへんが自分の性格にマッチしたのだと思います。スパイスの基本的な使い方をマスターすれば、その時に作りたいものの仕上がりをイメージしながら、スパイスの分量などを自分流にアレンジして作っていく。例えば、今日はコリアンダーが少なめとか、レッドチリが多めとか。インド人のシェフも、人によってスパイスの使い方に個性が出ます。そういうのを見ると『あぁ、インド料理って自由だな』と思います」

先にも触れた通り、SHIVA CURRY WARAのオリジナリティともいえるそのインド人シェフの料理と、日本人オーナーのマネジメントというスタイルだが、山登さん自身も当然調理をするし、最終チェックを山登さんが行う料理も多い現在のスタイルによるメリットは、どんな部分なのだろうか?

山登「自分はインド人にしか出せない、力強い味があると思っています。彼ら長年かけて培った料理のテクニックや知識を、自分のアイデアとつなげて新しい料理を生み出していく事は、とてもやりがいのある事だと感じています。そのためには当然、彼らを納得させるだけの知識やコミュニケーション能力も必要になってくる。そうやって自分も成長できる環境なんだと思います」

今年、4年間ともに歩んできたラムジーシェフが、SHIVA CURRY WARAから独立を果たした。それでもなお、山登さんはインド人シェフとともに歩む。ホールとキッチンを往復し、小さな人気店をさらにゆるぎのない存在へと進化させてゆく。

店舗情報

SHIVA CURRY WARA
住所:東京都世田谷区太子堂4-28-6 2F
TEL:080-9432-8200
営業時間:ランチ11:45~14:30(L.O.)/ディナー18:00~22:00(L.O. 21:45)
定休日:月曜日 (祝日の場合は営業、翌日が休業) ※臨時休業あり
http://shivacurrywara.jp/