Seiko 5 Sportsとクリエーターに共通するスタイル – VIDEOTAPEMUSICが語るデジタル時代のアナログ –

by Nobuyuki Shigetake and Mastered編集部

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Seiko 5 Sports Suits Style 『SBSA015』 38,000円、O -のニット 25,000円(OVERRIVER TEL:03-6434-9494)、product almostblackのパンツ 32,000円(product almostblack WEB:info@almostblack.jp)、adidas Originalsのスニーカー 12,000円(adidas group customer service TEL:0570-033-033)、その他本人私物
『SBSA015』をニットスタイルに。「クラシック感もあるのに、古びていないデザイン。⻑く時計を作っているSeikoならではなんでしょうね」。

— サウンドを聴くと、やはり独特の郷愁みたいなものが伝わってきて、サンプリングという現代の製作手法なのに温かみもある。また、ライブで演奏される鍵盤ハーモニカも特徴的ですよね。

VIDEO:高級機材が手元になかったという現実的な問題もありましたよ(笑)。鍵盤ハーモニカは、たまたま自宅で捨てずに残っていた楽器。音を出したら、響きが思いのほかよくて、追究しがいがありそうだと。

— 今につながる音楽性にフィットしたというのは、わかる気がしますね。音楽的な好みは、どのような変遷を?

VIDEO:1990年〜2000年代に続く、アメリカ郊外で生まれたローファイだったり、オルタナティブだったりのサウンドとヒップホップが結びついた感じ。高い機材がなくても、音楽的教養がなくても、面白いサウンドは作れるぞ、というマインドはすごく影響を受けています。

— そのあたりがスタート地点。

VIDEO:自分が見たことのない文化への憧れみたいな部分で、エキゾチカなサウンドにも惹かれていきましたね。Martin Denny(マーティン・デニー)的なものから、それを日本で受け継いだ細野晴臣さんやYMOといった系譜を追いかけて。ヒップホップ的なものを発祥として、Martin Dennyを経由するような。

— それで、モンドミュージックあたりにも繋がるわけですね。

VIDEO:すごく好きでしたね。それこそリブロポートから出版されたモンドミュージック本に載っているようなミュージシャンは好きでしたし、中でもJoe Meek(ジョー・ミーク)やThe High Llamas(ハイ・ラマズ)などはすごく聴きました。手作り感と、自分にとって未知の世界、この2本柱が今も音作りの根っこにはあります。

Seiko 5 Sports Suits Style 『SBSA017』 38,000円、KABELのテーラードジャケット 48,000円(HEMT PR TEL:03-6721-0882)、YOKEのロングスリーブTシャツ 18,000円(STUDIO FABWORK TEL:03-6438-9575)、STILL BY HANDのパンツ 17,000円(STYLE DEPARTMENT TEL:03-5784-5430)、その他本人私物

— VIDEOさんの作品には、懐古主義に陥っていない”今”があるように感じますが、そのあたりは、意識されていることですか?

VIDEO:最新のものでも過去のものでも、それが自分にとって初めて触れる未知のものであれば、どれも新鮮ですし、そこは並列というか平等に受け取りたいと思いますね。

— その新鮮さみたいなものが、ご自身のフィルターを経由することで、リスナーにも届くんですね。10年近く続けてきたなかで表現の方法も変わっていると思いますが、具体的にはどのように変わってきましたか?

VIDEO:例えば、過去のメディアだけをサンプリングする方法だけでなく、現代の同時代的なものを自ら見知らぬ土地に赴いて、そこに流れている音や景色を採取する”フィールドレコーディング”のようなこともしています。自分の外側にあるものを、積極的に取り込んでいく感じ。方法に限定されなくなってきました。

— それは、新譜などからも感じる、コラボレーションにも通じてくると。

VIDEO:はい。自分の成⻑に合わせて行動範囲も広がって、それに従って音楽の手法も広がってくる。もちろん、出会う人も増えてくるわけです。自分のテリトリーを広げることが表現の幅を広げる。そんな感覚です。

『SBSA017』を着用。「どんなファッションにも似合いそうなシンプルさがいいですね」。

— アナログ回帰という潮流がある中で、ご自身の役割のようなものは意識していますか。

VIDEO:目的にはしていませんが、僕の音楽を経由してそうした古き良きものに触れました、という声は聴きますね。アナログ的なものだけを礼賛しているのではなくて、アナログにはアナログの良さ、デジタルにはデジタルの良さがあるので、僕は、そうした選択肢が減らないように、多様性を維持していきたいですね。

— アナログ文化が消えていってしまったら、寂しいですね。いまだにVHSテープは収集しているんですか?

VIDEO:そうですね。つい先日も四国に行ってて、地元の人から「あそこにあるよ」と情報が集まってきます(笑)。始めた当時は、わんさかあったVHSテープも今はもう絶滅危惧種。ただ、情報交換というコミュニケーションを通じて、人も物も、新たな出会いもありますので、それは新鮮で楽しいです。自分で撮影したような私的なテープをもらうこともあるんですよ(笑)。

— この先、VIDEOさんが目指す目的地のようなものはあるんですか?

VIDEO:新たな人との出会いや、土地との出会いを通して、自分の活動のフィールドをゆるやかに広げていけたら良いですね。そうすることで自然と自分自身の音楽性の幅も広がると思います。決して、海外進出とかチャートインとかだけでなく、自分のペースで色々な土地で新しいものを見つけながら続けていきたいですね。RPGのような感じで(笑)。

— アナログ文化にも深い共感を持つVIDEOさんですが、腕時計は着けますか?

VIDEO:これまではほとんど着けてこなかったんです(笑)。ただ機械式時計という存在は、非常に興味深いですね。人の巻いたぜんまいの動力で正確な時刻を刻む。不思議な温かみがあります。

— 確かに。Seiko 5 Sportsも機械式です。自動巻きではありますが、何日か着けていないと止まってしまうことも。そうすると時刻を合わせて巻き直しますね。

VIDEO:手が掛かるという点では、楽器にも近いものもありますね(笑)。僕が使っているアナログシンセは、時計と一緒で使うたびにチューニングしないと狂ってしまう。いわゆる名器と呼ばれるサウンドもPCのプラグインやソフトシンセなどでも置き換えることができますが、やはり似ているだけ。実機で鳴らす奥行きみたいなものは、人が使う、ということで表現されますし。愛着も違いますよね。面白いなぁ。

— 多分、VIDEOさんが時計の世界を知ったら、ハマっていくと思います。

VIDEO:危険ですね(笑)。まずは、この時計から始めてみます。

古き良きアナログ文化と現代を繋ぐVIDEOTAPEMUSICが共感するSeiko 5 Sportsの世界観。型にこだわることなく、自分のペースでその世界を広げていくこれからのサウンドにも興味が尽きない。