FKJ interviewed by PUNPEE

by Mastered編集部

フランスはパリを拠点に活動するインディペンデント・アーティスト、FKJ。チルでアンビエント、かつフューチャリスティックなサウンドは世界中から注目を集め、ハウス~エレクトロ・シーンからヒップホップ・シーンまで、彼のファンを公言するアーティストは数多い。今回は、FKJに魅せられたミュージシャンの一人であるPUNPEEを招き、FKJへのインタヴューを慣行した。

エナジー溢れる都内のRed Bull Studios TokyoにFKJを招き、作曲の秘密から彼のインスピレーション源までをPUNPEE自らがひも解いていくエクスクルーシヴ・インタヴューは、PUNPEEがみずからFKJにキウイを手渡すシーンからスタートした。

Photo:Shin Hamada、Text:Shiho Watanabe、Edit:Maruro Yamashita、Keita Miki、Special Thanks:Red Bull Studios Tokyo、Rambling RECORDS Inc.

TOWKIOは僕に何の連絡も寄越さずにラップを乗せていて、フランスでTVを観ていたら”I Know You”のMVが流れて「何コレ!?」って(笑)。(FKJ)

PUNPEE:キウイは良くもらう?

FKJ:もらうね。

PUNPEE:これ、一時間半かけて三鷹で買ってきたんだ、今朝。

FKJ:キウイを買うのにそんなに時間をかけたの? クレイジーだね。

PUNPEE:そう。どうすかね?

FKJ:デカいね。

PUNPEE:そもそも、なぜフレンチ・キウイ・ジュース(FKJ)と名乗るようになったの?

FKJ:家族にちなんだ由来があるんだ。僕は母親がフランス人で、父親がニュージーランド人なんだけど、キウイはニュージーランドの名産でしょ。で、ジュースってワードは「血」を表しているんだ。フランスとニュージーランドの血がミックスされて、僕の身体に流れているっていうイメージ。

PUNPEE:「フレンチ・キウイ・ジュース」っていう音の響きが瑞々しいから、それが由来かと思ってたよ。昔はニュージーランドに住んでいたことも?

FKJ:住んでいたことは無いけど、ちょこちょこ遊びに行くことはあったね。18歳まで両親と一緒に住んでたんだけど、その頃は3年おきにニュージーランドに行ってたな。僕の両親は教師だから、夏休みに入ると2か月くらい休みがあるんだよね。だから、ニュージーランドに行くたびに1か月半から2か月くらいは滞在してたよ。

PUNPEE:今はパリに住んでいるんだよね? その前はどこに住んでたの?

FKJ:ずっとパリ郊外で映画音楽の勉強をしていたんだ。3年間はサルラ(=ラ=カネダ)という小さい町で、そのあと2年間はアングラームという町に引っ越して、ずっと映画音楽を学んでいたんだ。

PUNPEE:自分で映画を撮ったりもしたのかな。

FKJ:いや、あくまで音楽を編集したり、エンジニアリングやミキシングなんかを学んでいたんだ。あとは、ロケ現場のスタジオで音を編集・録音したり。これは作曲には関係なくて、あくまで映画撮影における録音技術を学んだだけだったけど。

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PUNPEE:そのときはまだ、作曲活動は行っていなかった?

FKJ:いや、僕は13歳からずっと作曲を続けてるんだ。音楽を学ぶこととは別に、作曲は常に続けていたからね。映画音楽の勉強も、テクニカルな部分を自身の作曲活動に落とし込みたくて続けてい感じかな。

PUNPEE:じゃあ、もしかしてミックスとか、エンジニア的な作業も自分でしてるの?

FKJ:そうだよ。

PUNPEE:すげぇ!

FKJ:そう(笑)?

PUNPEE:いや、FKJのサウンドは低音がすごく丸く出ていて、聴くたびに「これ、誰がミックスしているんだろう?」と思ってたから。

FKJ:ありがとう。

PUNPEE:多様な楽器を操る姿が印象的だけど、もともと、楽器は習っていたの?

FKJ:いや、特に習っていたとかでは無くて、楽器の弾き方は例えばYouTubeとか、インターネットを通じて学んだんだ。あとは、音楽をネットからダウンロードしてとにかく聴きまくって勉強したよ。

PUNPEE:それでマネして弾いてみた……って感じだ。

FKJ:そう。とにかくたくさん聴くこと。その音楽をリ・プロデュースする感覚で、その楽曲の構造を学ぼうと理解しながら弾くんだ。例えばギターは、ネット上に「Guitar Tabs」なんて呼ばれるサイトがいくつもあって、そこに行けば好きな曲のコード進行などが全部手に入るから、それをチェックしながら練習したね。

PUNPEE:ほえー。SoundCloudで聴ける曲も、全部、ギターは生で弾いてるの?

FKJ:そうだよ。ほとんどエディットせずに生で弾いたままの音を乗せてるね。

PUNPEE:ギターの音もとても独特で、どんな風に音を出しているのか疑問に思っていたんだけど……。ミュート・ギターみたいな音。

FKJ:僕の音楽は本当に色んなサウンドに影響を受けているんだけど、ギターの音に関してはおそらくレゲエ・ミュージックの影響が色濃いかもね。レゲエはミュート・ギターの音が多くフィーチャーされているから。

PUNPEE:そうだったんだ。あの音はとてもFKJのシグニチャー・サウンドという感じがししていてあとはサイン波。ピッチベンドを使ったサイン波も多用されていて、それもFKJっぽくて大好きなんだ。

FKJ:Wao! そこまで聴いてくれているなんて。アリガトウ。

PUNPEE:バンド活動の経験はある?

FKJ:もちろん。3つのバンドを経験してきたよ。14歳のときに最初のバンドを組んだんだ。僕のパートはギター。ファンクやスカ、ヒップホップなどの要素を汲んだバンドで、フュージョンをやってるつもりだったんだ。当時は自分たちを模索していたね(笑)。そのあと、17歳くらいのときは2つ目のバンドを組んで、僕はキーボードとサックス担当だった。もっと真面目に活動していて、ブルースやファンク、ジャズを主体にしていたね。3つ目はバンドというよりも、ハウス・ミュージックのデュオとして活動していたんだ。

PUNPEE:なんで今はソロに落ち着いたの?

FKJ:時間が掛かったけど、ある時点で自分がやりたいことが明確に分かったから。3年前、やっと自分自身を発見出来たような気持ちで、その時に自身のアーティスト名をFKJとしたんだ。自分のルーツ……ヒップホップやファンク、エレクトロニックといった音楽はとにかくエクスペリメンタルで、そういったところに心を動かされてきたから、自分も色んな楽器を使ってあらゆるジャンルを超えた音楽を作りたい、と思うようになって。

PUNPEE:じゃあ、今の自分のサウンドを一言で表すとしたら?

FKJ:「グルーヴ」。

PUNPEE:なるほど、バッチリはまってる……! 曲は毎日作ってるの?

FKJ:ツアー中は忙しすぎて制作の時間がなかなか取れないけど、パリの家にいるときは毎日作ってるよ。毎日8~10時間はスタジオにいるね。君は?

PUNPEE:僕の場合、悩んでしまって、結局それくらいの時間を毎日使っちゃう感じなんだ。特に今は割とスランプで……。

FKJ:インスピレーションが浮かんでこないときは、割り切って他のことをするね。そしてまた次の日、スタジオに戻る。最近分かってきたんだけど、一生懸命考えたって、ダメなときはダメ。だから何も浮かばないときは旅に出たり、友達と会ったり、映画を観たり写真を撮ったりしてインスピレーションが降りてくるように努めてる。きっと何も閃かないときは、何か見当違いなことをしてるんだよね。

PUNPEE:じゃあ楽曲を作らない日もある?

FKJ:うん。インスピレーションが湧かないんだったら、一生懸命あがいても無駄だからね。そこに固執してたらダメだよ。

PUNPEE:今とてもスランプなので助かりました。あと、僕はFKJの音楽を通して、女の子についても学んだんだけど……ぶっちゃけすごくモテるんじゃない?

FKJ:確かに、僕のライブは女の子のオーディエンスが多いんだ。最前列は女の子ばかりで……。理由は分からないんだけど。

PUNPEE:そうだよね(笑)。インスピレーションとして女の子の存在はある?

FKJ:うん、彼女たちも僕をインスパイアしてくれるものの一つだね。

PUNPEE:僕が最初にFKJの存在を知ったのは、TOWKIOの“I Know You”という曲。あれはTOWKIOがFKJから許可を得て作った楽曲だったの?

FKJ:いや、ノーだよ。もともと、ベースになっているのは僕がネットにアップした”Lying Together”というトラック。フリーでアップしたものだから売り物ではなかったし、商用目的で流用される以外は何でもアリってスタンスだった。TOWKIOは僕に何の連絡も寄越さずにラップを乗せていて、フランスでTVを観ていたら”I Know You”のMVが流れて「何コレ!?」って(笑)。

PUNPEE:そうなんだ。結構、力技だったんだね(笑)。最初に影響を受けた音楽は? やっぱりヒップホップやR&B?

FKJ:ソウルやファンク、とくにMOTOWN辺りの音だね。それにゴスペル。あとは90年代のヒップホップ……

PUNPEE:90年代?2000年くらいのヒップホップ・サウンドの雰囲気を感じていたので意外だな。例えばErick Sermonとか。

FKJ:確かに、どちらかと言えば2000年代に近い90年代後期のヒップホップ・サウンドだね。Timbaland、Pharrell Williams、Dr. Dre、etc……

PUNPEE:TrackmastersやMidi Mafiaは?

FKJ:もちろん、R&Bサウンドも大好きだよ。90年代後半から2000年代はすごくラジオを聴いていて。そこから流れてくる流行りのヒップホップ~R&Bサウンドにとても影響を受けたかな。

PUNPEE:サンプリング・トラックも作っていたの?

FKJ:いや、ヒップホップはすでにサンプリング・トラックとして完成されているから、あまりサンプリングには惹かれなかったんだ。でも、ヴォーカル・ネタをサンプリングするのは大好き。

PUNPEE:FKJのヒップホップ・ベスト・アルバム3枚とか知りたいかも……。

FKJ:Dr. Dreの『2001』、Kendrick Lamarの『To Pimp A Butterfly』、あとは……超悩むけど、選ぶとしたらファレルのファースト『In My Mind』かな。

PUNPEE:なるほど。ちなみに、コラボレートしたいアーティストもそんな感じ?

FKJ:シンガーが多いね。今だと、Anderson .PaakやHiatus Kaiyoteかな。Emily Kingもいいね。とにかくたくさん候補リストがあるよ。でも、最大の夢はD’ANGELOとのコラボ。

PUNPEE:もしも、D’ANGELOからコラボの誘いが来たらどうする?

FKJ:Yeah! もちろん、彼のところに飛行機で飛んでいくね。

PUNPEE:(笑)。あと、音源のアートワークも気になっています。

FKJ:最初のEP”Time For A Change”のジャケットは友達のグラフィック・デザイナー、2作目の”Take Off”は同じデザイナーとフォトグラファーを起用したんだ。今は、自分のソロアルバムのアートワークを手掛けているんだけど、それは自分で作ってるよ。とくに勉強したわけじゃなくて、それもネットや友達に聞いてノウハウを習得してるところ。

PUNPEE:シングル”Lying Together”のアートワークは?

FKJ:あれはネット上でフリー素材を拾って来て、ただタイトルを乗せただけ(笑)。

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PUNPEE:所属しているRoche Musiqueはどんなレーベルですか? 今後、クルー単位で活動していく機会もある?

FKJ:フランスを拠点にしていて、基本的には友達同士で始めたレーベルなんだ。だから結束力が強くて仲もいい。現状、すでにクルーで動いているような感じだからね。Roche Musiqueのコンピレーション・アルバム『.WAVE』も発売されたし、今後もクルーでの活動は増えていくと思う。

PUNPEE:Roche Musiqueのレコメンド・アーティストは? とくに仲の良いアーティストはいる?

FKJ:もちろん全員だよ!

PUNPEE:それぞれがDJやアーティストとして活動していると思うけど、改めてパリのクラブ・シーンってどんな感じ?

FKJ:うーん、一言で表すなら、とてもアクティヴかな。たくさんのシーンが存在しているし、毎晩のようにインターナショナルなDJがやってきてプレイしているからね。すごく豊かなシーンが育っているから、パリで活動出来ることはとてもラッキーだと思ってる。

PUNPEE:インタヴューもそろそろ終わりなんだけど、FKJは色んな国でライブを行っているよね。他の国のクラブ・シーンに関して、どこかお気に入りのエリアはある?

FKJ:ロンドン! ロンドンのシーンも最高だよ。あと、もちろんベルリンも色んなクラブがひしめいていてユニークだよね。

PUNPEE:今はアジアツアー中だけど、刺激があるといいね。

FKJ:すごく面白いよ。今回、日本で滞在しているのは東京だけだけど、渋谷や原宿でとても楽しい時間を過ごしてるよ。日本酒のバーも行ったし、都内のスタジオでタトゥーも入れてきたところ。

PUNPEE:秋葉原もイカれた場所だから是非行ってみて。あー、落ち着くなら京都かな。

FKJ:そうなんだ、ありがとう。ここから近いの? ぜひ行ってみるよ。