1991年、イライ・ボナーツとアダム・シルバーマンが中心となってスタートさせた[XLARGE®(エクストララージ®)]。その創設からまもなく25年を迎えるという本年、これまでに培ったモノづくりへの拘りを[XLARGE®]のこれからの歴史に"PLUS"していく新レーベル『PLUS L by XLARGE®』が発足した。
デザインを手掛けるのは[HECTIC(ヘクティク)]のディレクターとして、T19の一員として、東京のスケートシーンを牽引し、現在は[Hombre Niño(オンブレ・ニーニョ)]のディレクターを務める、YOPPIこと江川芳文。いつの時代も僕らの心を熱くするクールなスケーターであり、同時に最高に格好良い先輩でもあるYOPPIさんに『PLUS L by XLARGE®』の本質を尋ねた。
Photo:Masaya Fujita、Text&Edit:Keita Miki
僕の中の[HECTIC]的なものがPLUS Lにはあって、40代のリアルな僕は[Hombre Niño]にある。
— 『PLUS L by XLARGE®』というプロジェクトはいつ頃からスタートしたのでしょうか?
江川:去年の夏ごろに話をもらって、2月ぐらいには第1弾のサンプルが出来上がっていました。[XLARGE®]はスケートボードのマインドがバックボーンにあるので、やりやすい部分は多かったように思います。
— YOPPIさんが[XLARGE®]の存在を初めて知ったのはどれくらい前のことになりますか?
江川:1991年のブランド立ち上がりの時点で、既に存在は知っていました。当時、アメリカに良く行っていたので、LAにあったお店にも足を運んだんです。その時に買ったキューバシャツとか、Tシャツなんかは今でも持っていますね。
— 当時を知るYOPPIさんが『PLUS L by XLARGE®』を新たに手掛ける上で、何らかのコンセプトは頭の中にあったのでしょうか?
江川:これといって特別なモノは無いんですが、”PLUS L”という名前の通り、アーカイブを振り返るというよりは、新しい要素をプラスしていくという方向で考えました。従来の[XLARGE®]のファンにも”PLUS L”ならではの新しい感性を知って欲しいと思ったし、目指したのは、そういう人たちのライフスタイルに気軽にプラス出来る新しいモノという感じですかね。なんか偉そうな言い方になっちゃいましたけど、単純にスケーター目線でのモノの見方や街の見方が僕は好きなので、そういう部分を出していければと。
— 当時、LAで感じた[XLARGE®]らしさや、格好良さというのは具体的にどういった部分だったのでしょうか?
江川:ファニチャーデザインのような立体的なロゴを使ったりとか、実験的な部分も多かったんですけど、そういう実験的な要素が店舗のラックや床、1つ1つと全てリンクしていたんですよね。洋服を見て感じた世界観が、そのままお店にも反映されていて、そういうところからは、かなり影響は受けました。[XLARGE®]の1号店って、入るとすぐに毛足の長い絨毯が敷いてあったんですけど、[HECTIC]の1号店も同じようにしてましたよ。あとは唐突にバーバーチェアが店内に置いてあったりもして。Beastie Boysが関わっていたこともあって、ワークウェアのイメージが強かったので、PLUS Lではあの時代のイメージを頭に入れつつも、今のスケーターたちが必要としているタフな素材や、暖かさ、軽さを出せるものを作りたいと思ったんです。
— 90年代と比較すると、東京にも随分とスケートをする場所が増えましたよね。
江川:そう、増えたんですよ。増えたからこそ、ファッションから遠のいて、スポーツ感覚が強くなったように思うんです。まぁ、90年代はみんなもっとパークが欲しいと思っていたし、無いものねだりな部分もあるんですけど。
— YOPPIさんが格好良いと思うスケーター像は?
江川:今で言えば、Alex Olsonは別格に格好良いですよね。乗ってても遊んでても格好良い。スケートボードが無くたって、常に同じじゃないですか。ただ、スケーターのファッションって、良く雑誌に取り上げられたりしますけど、実際に滑っている子たちの格好とは少し差があるように感じるんです。
— 今回のPLUS Lはその差を埋めるようなモノになっていると。
江川:そうですね。でも、基本的に「海外に着ていっても格好良い服を作りたい」ってことは昔から変わらないです。今の時代は何もかも伝えないと見てもらえなかったりもするけれど、情報を伝えるよりは口コミで広がっていって欲しいし、みんなが着ていないからこそ、そのブランドを着てくれるような人たちに向けて届けていきたいですね。これからもスケートは続けるけど、着実に世代交代もしているし、若い子達とスケートを出来る時間が自分にあとどのくらいあるのかと考えると、一緒に滑る事で若い子達から色々な事を吸収していきながらも、その子たちに着てもらえるような洋服を作らなきゃなと思って。
— [Hombre Niño]でもそういったことは意識しているのでしょうか?
江川:[Hombre Niño]は2人でデザインをやっていますし、ターゲットもファミリーだし、セレクトショップで取扱ってもらうことが前提なので、40代の自分をありのままにさらけ出している感じですかね。それと比較するとPLUS Lは、全て1人でやっているので、[HECTIC]を始めた頃の感覚に近いかもしれません。僕の中の[HECTIC]的なものがPLUS Lにはあって、40代のリアルな僕は[Hombre Niño]にある。まだ始めたばかりなので上手く説明出来なくてすみません……(笑)。
— だけど、どちらも等身大のYOPPIさんということですよね。
江川:そうですね。[Hombre Niño]は自分が思う、「格好良いお父さん」のイメージで、PLUS Lはまた別の顔という感じです。
— 将来的にPLUS Lでやってみたい事は何かありますか?
江川:スケートをするための体作りとか、そういうところからやっていくのは面白いかなと思っています。ただヘルシーなだけでは無く、パフォーマンスを上げるために作った体をどう使っていくのか。そういうことに詳しい人達と何か一緒にやっていきたいなと思っています。90年代のスケーターってどちらかというとジャンクフードのイメージがあると思うんですけど、自分自身歳をとって、体も変わって来たし、もっと自然に溶け込めるライフスタイルにしていきたいなと。
— それは面白いアイディアですね。
江川:まぁ、そういうことを考える歳になったってことですよね(笑)。みんなヘルシーにはなってきているけど、ヘルシーの先が何もないというか、その力を発揮する場所が無いんですよ。僕も色々と試したんですけど、僕にはやっぱりスケートしかないし、スケートが一番好きなんだってことが良く分かりました。背伸びせずに取り入れて、好きなことに活かしたい。単純にそういう動機です。