対談:Paul T × Alex Olson
ストリートカルチャーの先駆者 × 後継者。

by Mastered編集部

写真家、モデル、DJ、さらには、自身のブランド[Bianca Chandon(ビアンカ・シャンドン)]、[Call Me 917(コール・ミー 917)]を主宰し、八面六臂の大活躍を見せるカリスマ・スケーター、Alex Olson。

Alexがストリートカルチャーに目覚めていく過程で大きな影響を与えた人物の一人が、Paul Tだ。1996年に[SARCASTIC(サキャスティック)]を立ち上げ、海外ストリートブランドのパイオニアとしての地位を築いた彼が、LAにDJ HARVEYを移住させたという話はあまりにも有名であり、LAのアンダーグラウンドダンスミュージックにおける最重要人物としても知られている。

友であり、兄弟であり、師弟でもある、不思議な関係性の2人にEYESCREAM.JPが独占インタビューを敢行した。

Photo:James Ozawa、Text&Edit:Shu Nissen

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Alexは、未だにピュアな気持ちを持ってるんだ。だから、金を作りたいストリートブランドよりずっと彼のアイディアやコンセプトは深いし、面白い。Alexの情熱はちゃんと正しい方向に向いているよ。(Paul T)

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— 2人の出会いのきっかけは?

Paul:UNDEFEATEDで働いてるやつで共通の友達が居て、そいつがいつも「おれの友達のAlexがさ〜、スケーターのAlexが〜」って会話によく出てきてたんだ。その頃じゃ珍しくダンスミュージックにも興味があるって言うし、面白そうなやつだなって思ってたんだよ。当時の[Supreme(シュプリーム)]の影響もあって完全にヒップホップ=ストリートカルチャーだったから、ダンスミュージック、ハウスが好きなおれは変人扱いだったからね。Eric Duncanですらその時はハウスが好きじゃなかったぐらい。

Alex:初めてちゃんと会ったのはAaron Bondaroffを介してだね。2004年ぐらいかな~。

Paul:そうだね。ちなみにAaronに会ったのはベジタリアンつながりでなんだ。彼が17歳ぐらいの時から知ってるんだけど、Aaronはいい子でNYのベジタリアンレストランをよく案内してくれたんだよ。そのうち一緒にクラブに遊びに行くようになって、Aaronもハウスにハマって、そこから彼はスケートからアートや音楽の世界に寄っていったんだ。その頃Alexは、[SARCASTIC]のことも知らなかったんだよね。みんな若かったな~、今じゃAlexも30歳か。

Alex:AaronからPaulと知り合って、そこからどんどんみんな繋がっていったね。

Paul:NYのスケーターたちがLAに来た時はよくアテンドしてあげてたんだ。Justin Pierce、Keenan Milton をEric に紹介して、彼が借りてるアパートに皆で集まってビデオゲームしたりハングアウトしてたよ。

— すごいアパートですね笑 スケートヒーローたちの溜まり場になってたと。

Paul:それで、Eric と夜DJをしに出かける時に、若い子たちが「どこいくの?」って言うからクラブに連れて行ったりしてね。

— Paulが啓蒙していったダンスミュージックは自身のブランド、[SARCASTIC]のやはり重要なバックグラウンド?

Paul:よくそう言われるんだけど違うんだ。[SARCASTIC]のバックグラウンドは、間違いなくスケートボーディング。音楽はずっと好きだったけど、ヒップホップが商業的になったと感じて聞かなくなった時にハウスミュージックに出会った。その時にかつてのヒップホップのバイブスを感じたんだ。[SARCASTIC]も、そういう存在でありたくて、ストリートブランドを卒業して年を重ねたスケーターの為のメンズウェア、 “For older skater”がオリジナルコンセプトなんだよ。ロゴTシャツだけで儲けるようなブランドじゃなくて、しっかりした洋服をつくりたかったんだ。そこにオリジナリティを加える要素として音楽があって、アンダーグラウンドダンスミュージックにまだ誰も興味がなかったから、そこに絡めてやってみようって。

— なるほど、ちなみに2016年春夏のテーマは?

Paul:テーマは、パブリックバスクラブ。日本だとサウナがあったりするから、普通かもしれないけど、海外ではいわゆるゲイの集まる場所っていう意味合いになるんだ。あえて、そういう変わったテーマにした方が面白いかなと思って。もちろん、ゲイであることがアブノーマルってわけではなくて、自分自身であろうとすることはクールだよねっていうリスペクトが込められてる。例えば、ラグランのカットオフスリーブがあって、これはゴリゴリのヘビーメタル的な男らしい要素もあるけど、NYで着てたらゲイだと思われるようなアイテムでもある。そういう皮肉も交えてるんだ。

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— Paradise Garageのネタだったり、Alexが、[BIANCA CHANDON]でやっていることにも通じるところがあると思うのですが、それはPaulの影響から?

Alex:そうだね。基本的には近いアイディアを持ってるかな。[BIANCA CHANDON]では、スケートだけじゃなくていろんな自分の興味がある分野の人を巻き込めたと思ってるよ。スケーターに音楽を音楽好きにスケートカルチャーをっていう風にね。

Paul:Alexはなんて言うかわかんないけど、同じスピリットを持ってると思う、人と同じことはしたくない、違う事がしたい。そこだと思うんだ。ダンスミュージックはまだピュアで、商業的なジャンルとして毒されてない。自由でハードコアな、パンクロック的なスピリットがある。「スケーター?ヒップホップじゃないとダメでしょ?」みたいなステレオタイプがある産業出身のAlexだから、なおさら惹きつけられるんだと思うよ。

— [BIANCA CHANDON]の方は、次はどんなテーマになるんですか?

Alex:Paradise Garageではないけど、違う人物で同じようなストーリーを展開していくかな。あとはまだ始まってないけど、A1 Record と一緒に何かしようと思ってるんだ。従業員たちのお気に入りのレコードを集めて渡してもらって、そのスリーブのデザインを使ったりとか。あとは、今一番興味があるのは、[patagonia(パタゴニア)]。企業のあり方として面白いと思っていて、[BIANCA CHANDON]もサスティナブルな素材にだんだんなっていくかもしれない。

Paul:へー!それいいね!ちなみにA1 Recordとのコネクションはもちろん…

Alex:Ericだね。

Paul:そう。彼は昔A1 recordで働いてたからね。それがすごい大きくて、A1 recordを介して、Daniel Wangとも知り合えたし、A1 recordのマネージャーだったAldo Cadizとも繋がれた。彼はものすごいOGレコードコレクターなんだけど最初の[SARCASTIC]のmix cdを作ったのは彼なんだ。

— そんな多くの人との出会いと繋がりの中で、AlexにとってPaulはどんな存在?

Alex:友達であり兄貴であり師匠でもあるよ。でも彼には借りがあるな。いろいろ教えてもらったからね。いろいろ質問して、嫌われたぐらい(笑) パーティーに連れてってもらっても質問攻めしてたよ。

Paul:そこがいいところなんだ。知ったかぶりしてカッコつけたがる人が多いけどAlexは、かっこよくなくていいから知りたいんだ!って感じ。ねぇ!これはなんてDJ?これはなんて曲?ってね。

— Paulは成長した今のAlexの活躍を見てどう思いますか?

Paul:Alexは自分の若い頃を思い出させてくれる。今のAlexは良い環境にいるし、良いアイディアも持ってる、インディペンデントで自分らしいスタイルがある。それに純粋にファッションが好きで、未だにピュアな気持ちを持ってるんだ。だから、金を作りたいストリートブランドよりずっと彼のアイディアやコンセプトは深いし、面白い。Alexの情熱はちゃんと正しい方向に向いているよ。

— 昨年はEPを出しましたが、今年は何か2人でやる予定はあるんですか?

Paul:おれたちの関係がクールなのはオーガニックなところだからね。いつも自然発生的に起こるんだよ。だから「何かプロジェクトはある?」と聞かれたら答えはノー。もちろんアイディアはたくさんあるけどね。とにかく前回も最高だったからEPの新しいのは確実にやるよ。他にも突然に何かやるかもしれないし、やらないかもしれない。そういうスタンスなんだ。そうだ!この前言ってた、あのRemixやっちゃう?

Alex:いいよやんなくて。

Paul:ほら、こんな風にね(笑)

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