ホスト・梶雄太が対談相手の2人目に選んだのは、Diaspora Skateboardsの中心人物であり、映像作家としての活動でも広く知られている、小林万里。Diaspora Skateboardsは、そのスケートビデオもアパレルもスケーターから熱い支持を受けている注目の存在だ。GAP(ギャップ)やUMBRO(アンブロ)とのコラボレーションが話題となったのも記憶に新しい。チームのフィルマーである小林は、映像作家としてFla$hBackS、JJJ、KID FRESINO、ISSUGIといったMasteredでもおなじみのラッパー達のMVも手がけている。そんな小林と梶とのトークセッションは、スケート愛に溢れたDiaspora Skateboardsの歴史と、その将来を語り合うものとなった。
梶:万里くんと俺が知り合ったのは、わりと最近じゃん。だから基本的な話も聞いてみたいんだけど……。そもそもブランド始めたのって、いつなの?
小林:最初にビデオを作ったのは、ストリートリリースで、手売りみたいな感じだったんですけど、それが2010年。せっかくスケートやってるんだからビデオ作ろうよ、って仲間と。その最初のビデオのタイトルが『Diaspora』だったんですよ。
梶:そっか、アパレルじゃなくてビデオが先だったんだね。Diasporaってどういう意味なの?
小林:ギリシャ語で離散者って意味ですね。僕らはみんな東京出身じゃなく、元々いた場所から離れてスケートをやってるイメージが当てはまるかなと思って名付けたんです。
梶:ビデオを出してみて、反響はどうだった?
小林:最初にビデオを出した時から、安田哲也さんとかを撮らせてもらったり、先輩たちの協力もあって、試写会とかにも結構人が集まったんですよ。でも、その頃はまだ学生でしたし、最初から今みたいに続けるつもりで始めた訳では無いですね。
梶:それから今までスムーズにきたの? 壁にぶつかったこととかはあんまりなかった?
小林:いや、そんなこともないですよ。今、29歳になったんですけど、メンバーの環境も色々と変わってきたので。
梶:確かにスケーターって30歳くらいが1つの節目なのかもしれないね。
小林:撮影にしても、みんなのスケジュールを合わせるだけで大変だったりしますからね。
梶:スケーターのビデオって、目的もなく、まずは撮り溜めておいて、それを後から作品にしていくイメージだけど、そうじゃないの?
小林:当初はそういう面もなくはなかったけど、僕らの場合は、最初からビデオを出したいと思って意識的に作品を撮ってきたんですよ。
梶:アパレルを出そうと思ったのはどんなタイミングだったの?
小林:あまり意識してなかったんですけど、スケートのクルーって、自分たちのTシャツを作るじゃないですか。スケーターだったら、作りたくなるんですよね。最初は自分の家で手刷りでTシャツを作って。だから、アパレルも元々は勢いで始めたんです。
梶:そこからブランドになっていったのには何かキッカケがあったの?
小林:色んな人に知ってもらったキッカケは、Fla$hBackS。PVを僕が撮ったんですけど、その時にTシャツをあげたら着てくれて、音楽好きの人たちが目をつけてくれたのが大きかったですね。GAPだったりとかも、そのあたりの活動を見てくれていてコラボレーションが実現したんです。
梶:フィルマーとしての仕事がキッカケになっていたんだね。
小林:そうなんですよ。思い出のアイテムとして、JAZZY SPOTと作ったTシャツを持ってきたんですけど、これもFla$hBackSのビデオがキッカケで。撮った直後くらいにJAZZY SPOTの店に行ったら、Fla$hBackSのCDが売ってて、「これ、僕が撮ったんです」って話しかけたことから関係がはじまったんです。JAZZY SPOTの人には色んな人を紹介してもらったりもしたんで、自分のルーツになった1枚だったりもします。
梶:原点みたいなモノなんだね。今やってることは昔からのイメージ通り?
小林:いや、逆に今みたいになってるのは全然、想像してなかったですね。今、ここで梶さんと対談してるコト自体が不思議な感じです(笑)。元々は、梶さんも出ていた雑誌『Boon』を見て、スケーターなカッコをし出したんですから。服だけじゃカッコ悪いなと思って、ちゃんとスケートをやってみようと思って、最初に教えてもらったのが、今Diasporaを一緒にやってるハカセだったんです。
梶:外から見るとDiasporaってうまくいってるように見えるけど、ちょっとした後悔とかはある?
小林:やっぱりフルレングスのビデオタイトルを出せてないことですかね。Diasporaって、フィルマーが僕だけで。自分の仕事が忙しくなって撮影に行けない時期が結構長く続いたりしてたんですよ。もし僕がもっと行けてたら、映像作品をもっと早くカタチにできてたと思うんです。早く出すことが良いか悪いかはともかく、スケートって側面をもっと打ち出せていたと思います。
梶:Diasporaとして、今アパレルのイメージの方が強くなってるって意味?
小林:そうです。そういうアパレルから入った人に、本来はスケートをもっと見てもらいたいんですよ。僕自身も音楽とか服からスケートに入ったんですけど、そういう人たちに、もっとスケーターがカラダはってるところとかを見て欲しいですから。そういう点で、もっと早くフルレングスビデオを出せてたら違ったのかな、って。
梶:でも、万里くん的にはそれを埋める何かをやってたりするでしょ。それに変わる何かを得てたりはするんじゃない?
小林:確かに、早く出してたら内容的には薄いモノになってたかもしれないですからね。今で言うと、例えば、音楽をやってる人たちの映像を作ったりしていることで、厚みは出てきてるのかもしれないです。
梶:それは言えるよ。俺にも会ってなかっただろうしね。俺に会ったことでクリエイティビティもきっとアップしてるから(笑)。
小林:本当にそう思いますよ(笑)。梶さんに限らないですけど、色々なジャンルの人と会って、その人たちから影響を受けたことで厚みが増してるとは思うので。
梶:スケーターって面白いヤツが多いじゃない。それでも、他の人たちから刺激を受けることって多いの?
小林:スケーターとかラッパーとか、そのコミュニティにこだわるのも、それはそれでいいんでしょうけど、僕の場合は、そこに限らず、色々な人に会って、関係ない人から面白いインスピレーションを受けることも少なくないですね。
梶:今日持ってきてくれた他のTシャツは何?
小林:2枚ともPALACE(パレス)のですね。2011年くらいのモノ。まだショップもなかった頃のTシャツで、ロンドンのSlam Cityでしか売ってなかった頃のモノです。
梶:今のPALACEより手作り感があるね。ロンドンで買ったの?
小林:そうですね。この頃のPALACEは思い出深いんですが、今のPALACEも好きなんですよ。映像とかもカッコいいですし。今の若い子たちって、人が知らないのがカッコ良くて、有名になったモノはダメみたいな考え方があったりするんですよね。
梶:そうなんだ。それはちょっと意外。逆かと思ってた。
小林:コアなシーンにいる若者がそうだったりするんです。けど、有名になったから、もうイケてないというのは違うかなって。モノ自体をちゃんと見て欲しいと思うんですよ。
梶:シャツはBrooks Brothers(ブルックス ブラザーズ)のだね。
小林:Brooks Brothersのシャツは、社会人になった頃に、初めて買ったドレスシャツ。以前に地元の先輩が着てるのを見てて、カッコいいな、と思ってたんで。ちゃんとしたシャツを買うならBrooks Brothersだなって。
梶:Ralph Lauren(ラルフ ローレン)じゃなくてBrooks Brothersなんだね。
小林:自分の中でRalph Laurenは金メダルで、Brooks Brothersは銀メダルなイメージ。どちらかというと、昔から銀メダルが好きなんです(笑)。
梶:超メインストリームじゃなくて、2番目というか、ちょっと渋い方が好きなんだ。
小林:そうですね。そういう意味ではPALACEも、そうかもしれないです。
梶:Ralph LaurenとBrooks Brothers、Supreme(シュプリーム)とPALACEってことね。自分のブランドでシャツを作ろうとは思わないの?
小林:シャツもいいなと思うんですが、まずはジャケットとかをオリジナルで作りたいですね。そういう点で、まだDiasporaとしてはスタート地点。始まったばっかりの感覚だったりもするんですよ。さっき話したように、フルレングスのビデオタイトルも出せてないですし。スケーターとしても、まだまだこれからって、メンバーとはよく話してます。今年はフルレングスを出せるように頑張ってます。