人生に刻まれたシワを語り合う ~ パナソニック・衣類スチーマーで服のシワを取りながら

by Keita Miki

洋服についたシワや臭いをハンガーにかけたまま手軽に取れるアイテムとして、ヒットしているのがパナソニックの衣類スチーマー。そのプレスもできる2WAY仕様の衣類スチーマーにこの春、ニューモデル『NI-FS540』が登場。
本特集では、スチーム量がパワーアップして使い勝手が向上した、この新モデルをいち早くファッション業界人にインプレッションしてもらうとともに、対談を敢行。
いわば2WAY特集で、スタイリスト・梶雄太をホストに、2人のファッション業界人を対談相手として迎え、自らの人生に刻み込まれたシワを語っていただいた。
思い出のアイテムについたシワをパナソニック・衣類スチーマーで取りながらのトークセッションは思わぬ展開に。仕事論でもあり、生きるヒントにもなるかもしれない、なかなか貴重なトークセッション、ぜひご一読を。

Photo:Shuhei Nomachi | Text:Atsushi Hasebe | Edit:Keita Miki | Special Thanks:FROB

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梶雄太 × 荒木大輔 同世代の2人が語り合うスタイリストという仕事

今回の対談のホストを務めた梶雄太(右)と荒木大輔(左)。

スタイリスト・梶雄太がホストを務め人生のシワを語り合うトークセッション、まず1人目のトーク相手は荒木大輔。Masteredでも多くのページを手がけている荒木は、リアルでシンプルなスタイリングで知られるメンズスタイリスト。梶とは同世代であり、若き日から公私とともに同じ時代を過ごしてきた。そんな2人のトークセッションは、爆笑の連続ながら、スタイリスト論や人生論にも及ぶ、興味深いものとなった。

:荒木は衣類スチーマーってどんなのを使ってるの? このパナソニックのモノって使ったことある?

荒木:パナソニックのは、ずっと仕事で使ってるよ。もう何年も使ってて、何回も買い換えてるから通算で5台くらい使ってるし、常にウチには2台のパナソニックの衣類スチーマーがある。

:そうなんだ。パナソニックのはどのへんが良いの?

荒木:パナソニックの衣類スチーマーは、握るところにスチームのスイッチがあるんで、疲れないのがいいんだよね。前に使ってた他メーカーのモノは、スチームを出すのに指でボタンを押さなきゃいけなくて指が疲れやすかったから。あとはハンガーにかけたままシワ取りができるだけじゃなくて、アイロン台を使ってプレスすることもできるんで、すごく使い勝手が良くて重宝してる。

:今回は、人生のシワについて語ってもらおうって企画で、思い出のアイテムを持ってきてもらったんだけど……。このBEN DAVIS(ベンデイビス)のスリーピースって荒木が結婚式で着てたヤツだよね?
 
荒木:そうそう、よく覚えてるね。

:いやぁ、今回、荒木がチョイスして持ってきてくれたモノを見ると、スタイリストとして今なんで活躍しているのか、よく分かったわ。

荒木:なんでだよ。

:荒木って今スゴい活躍してるスタイリストじゃない。それってなんでだろう、ってちょっと疑問に思ってたわけ。もちろん本質的なところは分かってるつもりだし、ずっとスタイリストとしてやってきて、荒木が必要とされる、求められる時代になったというのは、いい時代になったとも、求められるべくして求められたとも思うし、そうであるべき人だというのは、俺が一番分かってるつもりなんだけどさ。

荒木:仕事してる現場をお互い見ることはあまりないからね。

:というのも、もし逆の立場で俺が呼ばれる側だったら、多分そんなにちゃんと準備してこないと思うんだよ。荒木に甘えて、もっと適当なものを持ってきたんじゃないかって(笑)。

荒木:酷い話だ(笑)。

:だって結婚式で着た服って、すごく大事な服のはず。それを選んで持ってきてくれたって、とってもありがたいし、嬉しい。恐らく荒木と仕事してる人たちは、その仕事毎に、同じように、ありがたいと思ったり嬉しく思ったりしてるんだろうなって。活躍してる理由をすごく実感したよ。

荒木:でも、このスリーピースって、結婚式で着たモノだから確かに自分にとって大事なモノではあるんだけど、相手が梶くんだから選んだってところはあるよ。他の人だったら、笑いになんないでしょ。「そんな大切なモノを持ってきてくれたんですか。ありがとうございます」みたいになっちゃうから。梶くんだったら、これでひと笑いしてくれるだろう、と思って持ってきたんだよね。

:ところが、俺が思ってた以上に感動してしまったという(笑)。

荒木:ホント、これ、あの時のじゃねぇか、バカだなぁ、って感じで終わるかと思ったら。

:写真でしか見てないけど、胸のゴリラのマークだけはチーフで隠して着てたよね。そこはスタイリストっぽいテクだと思った(笑)。そうそう、今回、この企画にピッタリかと思って、借りっぱなしになってたシャツを持ってきたよ。

荒木:まさか今日返してもらえるとは(笑)。この星柄のシャツ、アシスタント時代によく着てたね。たしか10年近く前に貸したんだよね。

:そう。映画『ソラニン』のスタイリングをした時に、1人の役に着せる服を「荒木が昔着てたあれ、イメージにピッタリだよな」と思って借りたんだよ。

荒木:よく覚えてるね。そういうところに感心するわ。

:映画が公開された時、荒木と荒木の奥さんと3人で観に行って、実際に着てるシーンを観て一緒に笑ったよね。そのまま返してなくてさ、今回の企画にふさわしいんじゃないかと思って、今日、ちょっと荒木を泣かせようかと持ってきたんだ。

荒木:泣かないし、むしろ爆笑だったけど(笑)。でも、この話をもらった時に、最初に思いついたのは、このシャツだったかな。「そういやあのシャツ、まだ戻ってきてなかったな」って。

:このチェックのショートパンツも穿いてたの覚えてるな。

荒木:このショートパンツは何年か前から穿いてて、夏に遊び行く時とかに穿く、割とお気に入りのものなんだけど。たしか去年も一緒に遊び行く時に穿いててさ、梶くんたちが「あいつ何着てくるかな?」とか予想してたらしくて「やっぱり着てきた」って言われてことがあった。

:荒木の服装当てクイズとか、やってたわ(笑)。

荒木:梶くんもそうだけど、僕もだいたい同じようなカッコしてるからね。ただこれって買った当時は良かったんだけど、最近は自分が歳とってきたせいか、今これを着るとおじさん臭さが半端ない。「年齢を感じる」象徴的なアイテムだったりもするんだよね。

:そんな年齢になったからこそ聞いてみたいんだけど……。今の自分にそんなに不満はないとは思うけど、仮にあの時にこうだったら違っただろうな、って思うことはある? あるいは、もう一度やり直せるなら、こうしたいとか。

荒木:これ、真面目な話していいの(笑)。そんなことねぇよって思われるかもしれないけど……。自分は一本立ちして仕事をするようになってから、わりと早い段階で、売れてるアーティストのスタイリングとかをやるようになったんだよね。だから、「すげー貧乏」みたいなことを経験しなかったし、運よく仕事を続けてこれた。もちろん、それは良かったんだけど、もし若い時にもうちょっと苦労してたら、また違った自分になれてたんだろうな、とは思うよ。もしかしたら、あの時、そんな簡単に大きい仕事を掴めなかった方が、自分の人生としては面白かっただろうなって。

:荒木らしい話だね。俺にとって荒木の3大キーワードは、努力・忍耐・根性だから。

荒木:自分でそんなの言ったことないし、梶くんの勝手なイメージでしょ、それ。

:だって、群馬の北風に吹かれて育って、熊谷さんのアシスタントやってさ。自らイバラの道へと進んで行くイメージがあるんだよ。

荒木:そんなことないよ。群馬で育ったのは自分で選んだわけじゃないしさ、熊谷さんのところに入ったのだって、結果として確かにハードだったけど、そんなにハードだと知ってて入ったわけじゃないから。辞めなかったのは自分で偉かったとは思うけど。

:確かに、そこまでハードだとは思ってなかっただろうね(笑)。とはいえ、今それを笑って語れるところの根底に努力・忍耐・根性があると思うんだよね。

荒木:そんなにストイックに生きてるかな? でも、まぁ、アシスタントをやってた時の経験は、今回のテーマでもある「シワ」になったな、とは思うよ。梶くんと会ったのも、アシスタントをやってた時だったね。

:初対面の時から印象的だったよ。よく覚えてる。何しろダサかったから(笑)。

荒木:また酷い話だ(笑)。

:いや、でも、それって実は裏を返せばいい意味なんだよ。というのも、スタイリストって今でこそ普通の人が知ってる業界になったけど、25年前なんて、どんな仕事なのか一般的には知られてなかった。そんな時代にスタイリストをやろうなんて人は、トンがった人ばかりだったからさ。キャラクターが強くて、自分の服装も表現が強い人が多かった。そんな中で、荒木は違ってて、普通の格好だった。

荒木:確かに、今日も白と黒の無地Tを持って着たけど、これが一番自分がデイリーに着てるモノ。今もそんなに変わってないけど、当時からリアルクローズというか、普通の格好をしてた。あの時のスタイリストは突飛な服を着てる人が多かったからね。

:だから素朴さが際立ってた。愛おしさすら感じて、こいつは信用できると思ったんだよ。ところで、この仕事ってルールってあるようでないじゃない。その中で、大切にしてることってある?

荒木:そんなことまで語るの? 恥ずかしいなぁ。うーん、たいしたことじゃないけど、あえて言うならば、自分が関わる以上、周りの人たちがより良い環境になっていけるように心がけてはいるね。

:それを心がけても、失敗したことってある? 良かれと思ってやったのに、突然ビンタされたとか(笑)。

荒木:えー、そこまでのはないよ。そんなことある?

:俺、気づいてないけど、割とある気がする(笑)。それも笑いにしてるけど、結構、そういうことの連続だったりするかも。

荒木:梶くんはそういう失敗も面白い方に持っていけるよね。そのための努力はすごいしてそうだし。

:してるしてる(笑)。

荒木:僕はビンタされたりとか、後ろからドロップキックされたりとか、そういう状況にならないように、気を使ってるから。事前に自分の納得する着地点と、相手が納得する着地点をすり合わせることを、ちゃんとやってる。当たり前のことだけどね。

:スゴくいい話。当たり前って言うけど、俺の中では、その意識はあまりなくてさ、それぞれにチューニングとってやる方がまどろっこしくて、自分の場合、当たって砕けろの方がスッキリするから。

荒木:でも、その方がいい場合もあるよね。ケースバイケースで。自分からしたらなんてパワープレイなんだ、って思うし、あんなやり方で話通せるなんてスゴいなって思うよ。やってみようと思ってもできないだろうから。

:できるでしょ、やらないだけで。

荒木:いや、できないよ。

:俺は乗るか反るかだけど、荒木の場合、みんなをハッピーにしようと思ってるからね。だから失敗もなさそうだよね。今日、あらためて普段は絶対にしない話ができて、面白かったな。

荒木:梶くんの荒木感は、完全に合ってるとは言い難いけど、全部は間違ってないかな(笑)。

シャツやTシャツは、ハンガーにかけたまま、裾や袖の端を手で引っ張りながらアイロン面を当てゆっくりと滑らせるように動かすのがコツ。電源を入れてから、約24秒で使用できるスピーディーな点もパナソニックの衣類スチーマーの魅力だ。

ニット類の型崩れにも衣類スチーマーは便利。衣類から少し離してスチームを当てたあと手で軽く形を整えればOK。洗濯しにくいアイテムだけに臭い対策にも使いたい。

パンツの折り目付けなどは、アイロン台を使ってプレスすることもできる。衣類スチーマーながらフラットアイロン面を持ち、2WAYで使える便利さだ。テカリが気になる時は当て布を使うのがオススメ。