最後は[NikeLab × PIGALLE]コレクションを生み出した[PIGALLE]のデザイナー、ステファン・アシュプールのインタビューをお届け。パリ、そしてフランスのスタイルリーダーでもあるステファン・アシュプール自身に[NikeLab × PIGALLE]コレクションの本質を語ってもらった。
なお、本コレクションは6月27日(土)より、NIKE.COM/NikeLabおよびUNITED ARROWS & SONSにて発売開始。
ただ1つ、はっきりと言えることは、バスケットボールへの愛情は私の血液の中にこれからもずっと流れ続けるであろうということです。
— これまで世界中を旅してきたと思いますが、パリのストリートバスケットボールの、特にピガール地区とアメリカンカルチャーとの違いについてお話を伺えますか?
ステファン: 単純にその両者を比較することは難しいですが、ピガールのストリートバスケットボールのスタイルは、ヨーロッパのスタイルとアメリカの1990年代のスタイルを融合させた独自のものです。客観的に見ても、90年代のアメリカに見られた色やスタイル、魅力を上手くミックスしていると思います。
— バスケットボールを愛する気持ちと、アパレルやフットウェアを愛する気持ちはいつ頃から交差するようになったのでしょうか?
ステファン: バスケットボールに関しては幼い頃からずっと好きでしたが、シューズに関しては特にコレクターという訳では無く、どちらかというと変わった色のシューズを探すようなタイプでした。ファッションに関しては自然とカジュアルなウェアと機能的なものを自分なりにミックスするようになり、バスケットコートの上で着るものと友達と過ごすときの洋服はいつも同じでした。
— バスケットボールを好きになったきっかけは?
ステファン: 7歳の時に初めてバスケットボールの雑誌を買ったのですが、マイケル・ジョーダンと、一見してそれと分かる彼のシルエットにはすごく影響を受けました。彼を見て、バスケットボールらしいスタイルをオフコートでも着こなすことが出来るはずだと思ったんです。その後、夏休みが来る度にニューヨークに旅行に行くようになり、その意識はより確実なものとなりました。それからは、バスケットボールカルチャーの世界にどっぷりと浸かっています。
— 当時からバスケットボールのスタイルをオフコートでも取り入れていた?
ステファン: 最初は部屋にポスターを貼ることから。その次はTシャツを着るようになり、15歳の時には学校の中で誰よりも先にエア ジョーダンを履いて通学していました。
— オフコートのスタイルはゲームへの姿勢にどのような影響を与えていますか?
ステファン: 昼も夜も快適に過ごすというのが私のスタイルです。毎日バスケットボールをしているので、オンコートとオフコートを兼ねた洋服へのアプローチはかなり早い段階から作り上げてきました。例えばチノのショーツ、白のタンクトップ、ナイキ エア レイドでプレーするのが自分のスタイルですが、ゲームが終わればその上にシャツを着て、帽子を被ります。そうすればいちいち着替える必要が無いので、一日中無理なく過ごすことが出来るんです。
— 子供のころはどんなシューズを履いてプレーしていたのでしょうか?
ステファン: ナイキ エア レイドとナイキ エア フライトですね、今でもエアレイドを履いてプレーしますが、新しいレブロンのシューズなども気になっています。
— 好きなバスケットボール選手は?
ステファン: 最も尊敬するのはマイケル・ジョーダン。最近で言うと、レブロン・ジェームスやブレイク・グリフィンが好きですね。自分のポジションであることもあり、ポイントガードの選手に惹かれることが多いです。
— 現在はバスケットボールチームのコーチも務めているそうですが、若いチームを指導することでバスケットボールへの愛情や知識に変化はありましたか?
ステファン: 小さい頃からポイントガードとしてプレーしていたので、キャプテンとしての役割を果たすことは自然と身についていました。今はコーチとして、選手には知識よりも熱意や闘志を持つように指導していますが、それが私らしいアプローチなのかもしれませんね。ただ1つ、はっきりと言えることは、バスケットボールへの愛情は私の血液の中にこれからもずっと流れ続けるであろうということです。
— ユースレベル以上の選手のコーチをしたいという気持ちはありますか?
ステファン: 機会があれば断らないとは思います。でも、今はユースの指導に専念していますよ。
— 室内と屋外、どちらでプレーするのが好きですか?
ステファン: アウトドアの方が好きですね。独特の雰囲気やストリートバスケットボールならではのプレースタイルが好きなんです。
— 好きな街、プレイしたいコートはありますか?
ステファン: もちろんパリのピガールのコートは大好きです。あらゆる年代層が参加し、盛り上がっていますし、ビル・アケムはプレーのレベルも異なり、エッフェル塔の下という場所もユニークで気に入っています。あとは東京の代々木公園は時差ぼけ解消に役立ちますし、マニラのコートではフィリピンの人たちと素晴らしい交流を持つことが出来ました。普通じゃない場所でプレーするのが好きで、ここ最近はずっとそういう場所を探しています。
— Drew League(アメリカのプロアマトーナメント)や(ニューヨークの)ダイクマンに参加する予定は?
ステファン: 参加したい気持ちはありますが、ここ10年ほど、バスケットを優先させてこなかったので自分自身のレベルは落ちてしまいました。コンディションを挙げる為には6ヶ月ほどバスケットボールに専念することが必要です。そう考えると今すぐトレーニングを始めるべきかもしれませんね(笑)。
— これまでの[NIKE]とのコラボレーションであなたが手がけてきたモデル、エア フォース 1、エア レイド、ダンク ラックスはすべてバスケットボールに根ざしたものですが、他のスタイルに興味はありますか?
ステファン: 基本的にはバスケットボールシューズが好きですが、最近は[NIKE]のいくつかのトレーニングシューズにも魅力を感じています。イノベーションとスタイルの完璧なバランスを見つけ出すという[NIKE]の考え方が好きなんです。
— メンズの服のブランドとして以外に、[PIGALLE]はどんな意味をもちますか?
ステファン: そもそもピガールという地名の由来はフランスの17世紀の画家、ジーン・バプティスト・ピガールだと言われています。私の母はバレエダンサーとしてサラエボからパリに来て以来、この地区に住み続けていますし、私自身もずっとピガール地区で生きてきました。今ではピガール地区自体がファッション、クリエイション、バスケットボールなど、様々なモノが存在する場所として特別な意味を持つようになってきています。
— [PIGALLE]というブランドを通して周囲のカルチャーにどんな影響を与えていくことを望んでいますか?
ステファン: シンプルなモノを愛でることで人生を楽しめる。そういう理解が広まる手助けが出来ればなと思っています。自分自身の人生が彩りに溢れていれば、他人に与える影響もきっと違ってくる。私はそれを求めているし、誰もがその為の努力をするべきだとも思います。大都市には辛い部分もありますが、[PIGALLE]が存在することで、スポーツを愛する人々を守り、彼らの創造性を守ることが出来たら嬉しいですね。
— そもそもファッションブランドを作りたいと思ったきっかけは何なのでしょうか。
ステファン: アメリカのスポーツウェアからフランスのハイファッションに至るまで、私は常にファッションに興味を持っています。だから、幼いころからなんとなくこの分野で仕事をすることになるんだろうなとは思っていました。
— PPPは、the Pigalle area of Paris、the Pain O choKolat crew、Pomponを指すとのことですが、この3つはあなたにとってどんな存在なのでしょうか?
ステファン: その3つが一体となることで私の人生は存在しています。この3つは私のこれまでの努力の象徴であり、今の私の生活を素晴らしいものにしてくれている原動力なのです。
— パリ育ちのあなたは、ファッションの世界でも最先端の人たちの中で育ったと言えると思いますが、スタイルという面では誰に一番影響を受けましたか?
ステファン: Thierry Muglerの贅沢さ、Paco Rabanneのメタルワーク、Azzedine Alaiaの革の使い方などに刺激を受けることはありますが、私に常に最も大きな刺激を与えてくれるのはパリのストリートです。
— 一時期ファッションの世界でもローカルスタイルが主流になった時期がありましたが、現代では多くの人がインターネットから情報を得るようになり、世界中に同じようなスタイルが広まっています。こういった変化についてはどのように考えていますか?
ステファン: スタイルや空想にとって、インターネットは時に敵にもなり得る存在です。インターネットは何をすべきかを教え、1つの決まったスタイルを提供してくれる訳ですからね。少なくとも、私はまだウェブから刺激を受けた経験がありません。何事も自分の目で見て、肌で感じたいと考えているので。
— パリから離れて暮らすことを考えた事はありますか?
ステファン: もちろん。人生には何が起こるか分かりませんからね。最近はまだ知られていないバスケットボールカルチャーが存在するアジアの町が気になっていますし、8月には東京に[PIGALLE]のお店が出来る予定です。ただ、今のところはパリが一番好きな街ですね。ただ、もしもバスケットボールにもっとフォーカスしたいと考える時が来たら、フィリピンはそれに最適な場所だと考えています。コートの数からも分かる通り、フィリピンの人々のバスケットボールにかける情熱は底知れないものがあります。
— 今回の[NikeLab × PIGALLE]コレクションでは『ナイキ ダンク』を選びましたよね。このモデルを選んだ理由は?
ステファン: 『ナイキダンク』はヨーロッパでとても人気があるシューズで私自身も履いていました。とても魅力的で、成熟した印象があります。様々な人に履いてもらえるという点でこのシューズが好きですし、オンコートとオフコートを完璧に乗り越えることが出来るシューズだとも思っています。
— コレクションの中で象徴的に使われているグラフィックはショットクロックをインスピレーション源にしているとのことですが、あなたにとってショットクロックはどのような存在ですか?
ステファン: ショットクロックはその素地として存在しますが、私の大きなインスピレーションとなったのは、動きと時間の経過なんです。時間の経過は現在、過去、未来をつなぎ合わせるもので、それがユニークで刺激的なものを生み出すのです。
— 今回の『NikeLab x Pigalle Dunk Lux』の特徴を教えてください。
ステファン: 新しいファブリックの混ぜ方をしていますし、同時にシューズを少しオープンにすることで外見を一新し、通気性を高めることにも成功しています。