REBORN
– 生まれ変わった[NikeLab ACG]が超カッコイイ件に関する考察と報告 –

by Mastered編集部

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両デザイナーへの独占インタビューから紐解く、新生[NikeLab ACG]の真実。

長きに渡った「考察と報告」の最後は、[NikeLab ACG]を新たな次元へと引き上げたデザイナー、エロルソン・ヒューと、[NIKE]のシニアデザインディレクター、マシュー・ミルワードの両名への独占インタビューをお届け。

世界でも限られたメディアにのみ与えられた貴重なインタビュー時間を使い、新生[NikeLab ACG]の真実に迫った。

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マーク・パーカーという人物はやはり私にとっても特別な存在なんです。(エロルソン・ヒュー)

— 今回の[NikeLab ACG]のプロジェクトがスタートしたのはいつ頃から? またプロジェクトがスタートした経緯についても簡単に教えてください。

エロルソン:プロジェクトが本格的にスタートしたのは2012年の12月からだったと記憶しています。

マシュー:そうですね、きっかけについてですが、やはり[NIKE ACG]は[NIKE]の中でも思い入れのある人が多いブランドですし、実際に[NIKE]として何度か[NIKE ACG]を復活させることもやって来ている訳で、私は良くマーク・パーカー(ナイキ社のCEO)と「ACGを今後どうしようか」って話をしていたんです。マークの中では、以前から[NIKE ACG]を新しい方向で、何らかの強い意図を持ってやっていきたいという想いがクリアになっていたようで、ある時、エロルソンの名前が挙がってきました。もちろん、[ACRONYM(アクロニウム)]における彼の素晴らしい仕事は私もずっと見て来ていましたので、彼に参画してもらい、コラボレーターとして招くことで新たな[NikeLab ACG]を作っていくことには大賛成でしたよ。それで、エロルソンの技術や知識、外部から見た[NIKE ACG]への視点を生かしながら、従来よりもフォーカスを絞って[NIKE ACG]を生まれ変わらせようということに決まったんです。マーク自身もこのプロジェクトにはすごく関心を持って取り組んでいます。このプロジェクトにおける彼の影響はすごく大きかったですね。

エロルソン:それだけマークからのプレッシャーも大きかったですけどね(笑)。常に進捗は気にかけていたように思いますし、彼の持つ[NIKE ACG]への思い入れや、彼の描く[NikeLab ACG]の指針もあるので、それを踏まえた上でプロジェクトには取り組みました。マーク・パーカーという人物はやはり私にとっても特別な存在なんです。望まれればいつでもハイキックを見せてあげたいくらい、大事な人ですよ(笑)。私にとってデザインをする上での目的は常に同じですが、そこに今回は[NIKE]が機能性、私たちがフィットネスをプラスしました。[NIKE]とコラボレーションすることで、[ACRONYM]では出来ない事、[NikeLab ACG]にしか出来ない事が実現出来たら良いなと思い、それを考える作業に最も時間を費やしました。もちろん、[ACRONYM]は小さなグループであり、[NIKE]は大きな企業であるので、色々と違いはありますが、とても有意義なコラボレーションにすることが出来たと思っています。あくまで機能性にフォーカスしながら、着用者がどんなことをするかを考えていくというプロセス、そして目指すゴールが同じだったので、シンプルに仕事をすることが出来ました。

— これだけの大きなプロジェクトとなると、考える事が膨大にあると思うのですが、プロジェクトのスタートにあたり、どんな作業から始めていったのでしょうか?

マシュー:とにかく話し合うことですね。てっきりエロルソンが本社に来て、軽く話をして、その日にはスケッチを始めてくれるのかな、なんて思っていたんですが、当然そんなことになる訳はありませんでした(笑)。まずはお互いのことを深く知り、環境を整えることからスタートしました。コレクションに関してはマークがかなり具体的にアイディアを持っていて、過去の[NIKE ACG]とは違う、新しいステージに向かわなければいけないことは予め分かっていたので、やり方も普通では無かったんですね。過去の例に習うということは一切無く、本当に0からのスタートでした。哲学的な理論の話から、なぜこのプロジェクトを始めるのかという話まで、色々なことを話し合いました。

エロルソン:たしかに、ちょっと普通では無い始まり方でしたね。アーカイブも、資料も、僕らには何も無かったし、過去の[NIKE ACG]のモデルをあえて見ずに話合いをしました。

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— モノとしては最初にどのアイテムを作りはじめたんですか?

エロルソン:『NikeLab ACG 2 in 1 メンズジャケット』ですね。その前にまず、「オール・コンディションズ・フィット」を作り上げることから始めて、ジャケットとパンツで全体のシルエットを完成させました。まず、どんなシルエットにしたいか、どんな型にしたいかというところを話し合ったんです。「細身」だとか「太目」だとか、そういう単純なことでは無く、「ステルス」だとか「モダン」という言葉を使いながら、頭からつま先まで、一貫したシルエットを作ることを目指しました。

— シルエットを1から作り上げていくとなると、結構な時間を要することになりますよね。

マシュー:フィットブロック自体を作り上げるのに、少なくとも3ヶ月はかかりましたね。最終段階で5、6回調整を行い、バランスが整っているのか1つずつ確認したり、ポケットを確かめたり。エロルソンは本当に妥協しないんですよ。執着しすぎるくらいにフィットに対してこだわりを持っていて。でも、フィットをほんの少し変えるだけで、それが大きな意味を持つということは今回のプロジェクトで嫌と言うほど学びました(笑)。

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以前のインタビューでエロルソンさんは「頭の中で色々と実現したいことはあるが、まだまだ実現できていないことがある」と話していましたが、今回[NIKE]のイノベーションによって実現したことも多いのでは?

エロルソン:もちろんです。これからもっと多くのモノが実現していくと思いますよ。このプロジェクトはまだ始まったばかりですから。皆がびっくりするようなモノも既に準備していますので、お楽しみに。

— 実際に[NIKE]と仕事をしてみて、エロルソンさんは[NIKE]というブランド、そしてプロダクトのどんな部分が魅力的だと感じましたか?

エロルソン:単純に姿勢に強く惹かれます。ただの会社では無く、[NIKE]それ自体がカルチャーであるということ。[NIKE]は既に逃れることが出来ないくらい世界中の人々の生活に浸透しており、[NIKE]というブランド、それ自体がポップカルチャーの一部になっているんです。だから私は[NIKE]と仕事をする時には、それが[NIKE]としてどういう意味を持つか、ということを考えるようにしています。

マシュー:誤解を恐れずに言えば、何でもやるのが[NIKE]なんです。他人が不可能だと思う事にも、噛み付いて挑戦をする。勇敢さを持って、いつもイノベーションに向かっていき不可能を可能にする。それが私の思う[NIKE]らしさであり、今回のプロジェクトではそういう話合いをたくさんしましたね。何が出来るか、それを[NIKE]らしくやるにはどうすれば良いか、イノベーションをどう使うのか。その膨大な話合いの結果が、今回の[NikeLab ACG]のコレクションには反映されていると思います。