『574 HISTORY CLASS PACK』 – 今、改めて振り返りたいNew Balanceの歴史と魅力 –

by Keita Miki

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大橋:New Balanceのシューズって、大きく分けると、結構良いお値段のモデルと、比較的リーズナブルで手を出しやすいモデルの2つにカテゴライズ出来るんです。前者はいわゆるMade in U.S.A.やMade in U.K.のモデルなんですが、後者と比較するとスニーカーに対する考え方や向き合い方も全然違うんですよね。個人的にはMade in U.S.A.が好みなんですが、革靴が好きな人にはMade in U.K.の方が向いているかもしれません。

アントニー:なるほど、たしかに初めてNew Balanceのシューズを自分で買おうと思った時に、種類は沢山あるけどデザインの違いが良く分からない上に「この10,000円のモデルと30,000円のモデルの差は何!?」って悩んだ記憶があります(笑)。

大橋:そういう意味では初心者には少しハードルが高いですよね(笑)。でも、僕も20歳前後の時は『M576』や『M1300』が高くて買えなかったし、その分、『M574』を自分なりのファッションに落とし込んで、如何に格好良く履くかっていうところにヒップホップ的な楽しさを見出したりもしましたよ。あれから20年近く経った今でも『M574』を愛用していますし、価格はどうあれ、まずは気に入った1足を履き潰すってことが大事なんじゃないでしょうか。とにかく実際に履いてから良さが分かるのが、New Balanceのシューズなので。大人になって金銭的に余裕が出てくると、ついつい高いモノを選びがちですが、あえて若い時と同じモノを選ぶ格好良さっていうのも絶対にあると思うんですよね。値段が高いモノを身に着けているから格好良いんじゃなく、高価ではないモノをスタイリッシュに見せる格好良さというか。直近のthe Apartmentの別注企画で『574』をチョイスしたのも(※先日リリースされたばかりの『New Balance 574 ”Mustard Dip”』)、そういう想いが自分の中にあったからなんです。

— 『574 HISTORY CLASS PACK』は1980年代の中期の雑誌の見開き広告に大々的に展開された商品の代表的なモデルのカラーからインスパイアされたコレクションとなっています。アントニーさんは先ほどご自身でおっしゃっていたようにまだNew Balance初心者とのことなので、代表的なカラーインスパイアモデルについて、大橋さんにお話を伺ってもいいですか。

大橋:今回、カラーインスパイアのもとになっているモデルの中でも『1300』はコアなNew Balanceファンで無い方にも広く知られている、名品中の名品。1985年に登場し、現在でも5年に1度登場する復刻モデルは即完売するほど人気のモデルです。その流れを組むのが、日米共同開発した『670』。これは最近の別注モデルでも良く見かけますね。あとは、オフロードランナーに向けた『565』。このカラーリングは他の500番台でも見かけます。個人的にもこの色の組み合わせはめちゃくちゃ好みですね。

— 当時のスニーカーシーンにおいて、New Balanceのシューズ、特に今回の『574 HISTORY CLASS PACK』のベースとなっている『574』はどんな役割を果たしたと考えていますか?

大橋:1980年代のNew Balanceは主にランナー向けのスニーカーをメインにリリースしていて、ヒップホップシーンで履いていた人は自分の知る限りでは1人、2人くらいしかいないんですよね。僕は、クイーンズ出身の某ラッパーが履いてるを見て、初めてヒップホップシーンにおけるNew Balanceを認識したんですけど、それは1998年くらいのこと。当時はテニスウェアやヨットウェアを良くコーディネートに取り入れていたので、そこにインテリっぽさをプラスしたくて、New Balanceのスニーカーを自身でも良く履いていました。90年代後半から、ストリートシーンでもNew Balanceが徐々に盛り上がっていった印象があって、面白い履き方が浸透し始めたのもその頃からだと思っています。

— ヒップホップシーンでNew Balanceのスニーカーが履かれるようになったのには、何か明確な理由やきっかけがあったのでしょうか?

大橋:それが色々と調べたり、現地の友人たちに聞いても、誰にも明確な理由は分からないんですよね(笑)。Wu-Tang ClanのRaekwonは14歳の時に初めて叔父さんに『M574』を買ってもらって、それがきっかけでNew Balanceのスニーカーが好きになったらしいですけど。あと、Nasの場合は紆余曲折ありますが、自身のイニシャルの”N”とかけて愛用しているだけなんじゃないかという気がしています。

— はっきりとした理由が分からないっていうのが面白いですね。最早、ちょっと都市伝説に近いというか(笑)。

大橋:2000年代に入るとニューヨークでも『M574』がすごく流行った時期があって、当時のアメリカでは毎月5、6色ぐらい新色の『M574』がリリースされていたんです。海外だと新しいモデルが出ると、1つ前のモデルは安売りされるんで、それをヘッズたちが安く買って、靴紐をダルダルにして履くって感じで。その後、日本ではそういったニューヨークのカルチャーを見た様々なファッションブランドが、こぞって『M574』の別注モデルを出していましたね。なので、その時期にファッションに興味を持った人は、初めて買ったNew Balanceのスニーカーが『M574』って方も少なくは無いと思います。

アントニー:たしかにお洒落なラッパーの人が、みんな急にNew Balanceを履き出したのを良く覚えています。そういう理由があったんですね! 当時の僕にはNew Balanceのシューズはヒップホップとはかけ離れた存在に映っていたので、すごく新鮮でした。

大橋:その頃はストリートダウンした履き方が流行っていましたし、古着好きの人が愛用しているイメージが強くて、最近のNew Balanceのシューズの流行とは、またちょっと違う文脈ですよね。

— 『574 HISTORY CLASS PACK』の中から個人的に1足、ご自身で履きたいモデルを選ぶとしたら?

アントニー:バーガンディが好きなんで、『ML574BG2』ですかね。バーガンディのキャップを沢山持っていて、それらと合わせたいなと思います。New Balanceのシューズって、やっぱりグレーのイメージが強いじゃないですか。もちろん、王道の良さもあるとは思うんですが、自分が履くならちょっとエッジの効いたカラーリングのモノが良いのかなと。

大橋:僕は『ML574BD2』。良くニューヨーク・ヤンキースのキャップを被るんですけど、相性が良さそうだし、『M574』と『M576』の間にある『M575』っていうモデルを以前に愛用していて、それを彷彿とさせるデザインもかなり気になります。ネイビーのワントーンのスニーカーだと上品になり過ぎるというか、僕の好きなスタイルにフィットしづらいんですけど、このツートーンはかなり使いやすそう。New Balanceのシューズは他のブランドと違って、”ネイビー”と一口に言っても、様々な濃淡のカラーが用意されているから面白いですよね。