対談:Mocky × Campanella

by Yu Onoda and Keita Miki

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— 楽器が出来ない人でもDTMによってベッドルームミュージックが簡単に作れるようになった現代において、その対極にある修練を積んだ楽器奏者の即興性にフォーカスした、と?

Mocky:そういうことになるね。Mockyバンドの一員として来日したジョーイとニアをはじめ、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の『To Pimp A Butterfly』にも参加したベースのBrandon Eugene Owens(ブランドン・ユージン・オーエンス)や晩年のマイルスに見出されたピアニストのDeron Johnson(デロン・ジョンソン)……ストリングスとホーンを含めて、LA在住のミュージシャンを10人集めて、彼らのことを念頭に、まず曲のアイデアをスケッチしたんだ。そして、録音に使用したのは、50年代にFrank Sinatra(フランク・シナトラ)の資金援助で運営されていた独立系のスタジオ、ユナイテッド・レコーディングス。そのスタジオを1日だけ取って、曲のスケッチをもとに、リハーサルなしのワン・テイクでその演奏をレコーディングしたんだ。しかも、それをノスタルジックなものとしてやっているわけではなく、現代の音楽として提示した作品なんだよ。

Campanella:Mockyは作品を作る時、新しい音楽を作ろうと思って制作に臨んでいるんですね。僕はMockyの作品から10年、20年と思い出がついてくるような色あせない音楽という印象を受けていて。そのためにMockyは常に普遍的な音楽を目指しているんだと思っていたんですけど、作品をつくるモチベーションや手法という点で新しいものを求めている音楽家なんだなって。

— 時代の変化と共に音楽の捉え方や周りを取り巻く環境も変化していくわけで、普遍的な音楽を目指すとしても、過去に生まれた普遍的な音楽やその時々のトレンドをそのまま真似した作品はクラシックになってないですもんね。

Mocky:そうだね。”Birds Of A Feather”を作った時もそんな感じだったよ。当時はベルリンにいて、エレクトロニックミュージックを作っていたんだけど、友人のGonzalezに「もっと違うものを作ってみたら?」と薦められて、あの曲を作ったんだ。ただ、作ってはみたものの、エレクトロニックミュージックとは対極にあるフォーキーな曲だったから、アルバムに入れようかどうしようか、かなり迷ったんだけど、結果的にそれまでの作風や当時のトレンドとは大きく違っていた曲だったからこそ、”Birds Of A Feather”は今でもみんなに聴いてもらえる普遍的な曲になったんじゃないかと僕は考えているんだ。

— 新しい音楽を提示する大胆さが、Mockyの考える普遍的な音楽の秘密だ、と。

Mocky:だから、Campanellaとのプロジェクトも、いま取り掛かっている曲とはまた別に、新しい試みにトライしてみるのはどうかな。今度、僕がサンプリングされることを想定して、1曲書くか、もしくは10個くらいの色んなパーツを作って送るから、それをまた別のビートメイカーにサンプリング、エディットしてもらって曲を作るというやり方を試してみようよ。というのも、僕とFeistが作業をする時、メトロノームにきっちり合わせて曲を作っているわけではないんだけど、そういう彼女の曲に何かを見出して、そのフレーズのサンプリング、ループから曲を作っている人が沢山いて、そのやり方が刺激的に感じるし、自分のアイデアが人の手によって、どう発展するのかを聴いてみたいんだ。そして、今度のツアーで名古屋に行くことになったら、ステージでセッションをやってみるのもいいかもね。

Campanella:それは面白そう! ぜひぜひトライしてみましょう。