【Lee 125th anniversary special】 NIGO®、尾花大輔、それぞれが語る[Lee]の「軌跡」と「奇跡」。

by Mastered編集部

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1889年、アメリカ・カンザス州にて産声をあげた[Lee(リー)]が、今年で生誕125周年を迎えた。創業者ヘンリー・ディビット・リーによって食品と雑貨を中心に取り扱うスーパーマーケットとしてスタートした[Lee]は、1911年より独自にデニム衣料の制作を行うようになり、その品質の素晴らしさと卓越したセンスで、いつしか世界3大ジーンズブランドの一角を担うまでに成長を遂げた。

1926年に史上初のジッパーフライのデニムとして誕生した『101z』や、1936年に登場した毛の付いたままの牛革に[Lee]の焼き印を押した“ヘア・オン・ハイドラベル”、1959年にオリジナルが発売された白いコットンサテンの『ウエスターナー』など、いくつかの歴史的なアイコンを生んできた[Lee]は、オーセンティックなデニムブランドとして現在も世界中で多くの支持を獲得しているし、彼らがこれまでに創り上げてきた過去の遺産は古着好き垂涎のヴィンテージアイテムとして、目の肥えた好事家たちを日々唸らせているのだ。

Masteredでは現在、[Lee]の最新アイテムにフィーチャーする『monthly Lee report』を進行中ではあるが、今回彼らの125周年を大きく称えるべく、独自にスペシャルコンテンツを制作。

自身のデザインするレーベル[HUMAN MADE®(ヒューマンメイド)]を手がける傍ら、フリーのデザイナーとして数々のプロジェクトを進行中であり、[Lee]との新ライン『Lee by NIGO®』を発表したばかりのご存じNIGO®と、長年に渡って[Lee]と蜜月の関係を築いてきた[N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)]のデザイナー尾花大輔という2名の証言を通して、[Lee]という類い希なる存在の「軌跡」と「奇跡」を探る。

Photo:Takuya Murata
Interview&Text:Keita Miki

「広く売れて、それでいてマニアにも届くもの。そういうものが作りたかったんです。変な話、[Lee]のヴィンテージが好きだけど僕に抵抗があるという人は、タグとか切っちゃえば良いんですよ。」

—NIGO®さんが初めて[Lee]のアイテムを手に取ったのはいつ頃ですか?

NIGO®:たしか小学4年生の時だったと思います。その時、兄が中学1年生で、良く[Lee]のジーンズを履いていたんですが、それを真似して[Lee]のジーンズを親に買ってもらったのが最初ですね。[Lee]のジーンズって、革パッチの部分がそのままベルトループにもなるじゃないですか。それが子供心に格好良くて、すごく魅力を感じていました。

—なるほど。その後、ご自身でファッションアイテムとして[Lee]のアイテムを意識的に購入したのはいつ頃のことになるでしょう?

NIGO®:高校2年生の時ですかね。自分の稼いだお金で最初に買った[Lee]はブラックジーンズだったんですよ。当時「RUN-DMCが[Lee]のブラックジーンズを履いているらしい」って話をどこからか聞いて、それをきっかけに、たしか上野のアメ横で購入したと思います。

—それ以降、ご自身のワードローブの中に常に[Lee]のアイテムは存在していたのでしょうか?

NIGO®:うん、常に身近にある存在ではあったと思いますが、本格的にのめり込んだのは、やっぱり古着を集めるようになってからですね。今日着ているものもそうですが、古着を集めるようになってからは、どちらかというとジーンズよりも、ジャケットの方を多く購入しているような気もします。今着ているのは、通称『カウボーイジャケット』と呼ばれているモデルなんですが、これは若い頃からずっと好きなもの。この間延びしたポケットとか、デザイン的に最高ですよね。『カウボーイジャケット』だけで、14~15着ぐらいは持っていると思います。後ろのストラップが無くなったり、タグが変わったり、ステッチが3本とか2本とか、とにかくバリエーションが多くて、年代別に集めています。でも唯一集められていないタイプが1型だけあって、それは今でも探していますね。本当に中々出てこないんですよ(笑)。

—[Lee]のデニムに関しては現在、何本ぐらい所持していらっしゃるんですか?

NIGO®:ヴィンテージだけで、50本以上はあると思いますよ。ジャケットと同じく、それぞれ年代や型など、バリエーションで集めています。

—ジャケット、デニムを合わせれば相当なコレクションになりますね。NIGO®さんをそこまで惹きつけるのは、[Lee]のどんな部分なのでしょうか?

NIGO®:[Lee]のアイテムの何が面白いかと言うと、1つの型を創り出してから一定のデザインに落ち着くまでに、ものすごく試行錯誤を繰り返しているのが分かるんですよ。例えば年代によってステッチを反転させてみたりとか、タグをいじってみたりとか。そういう試行錯誤、その当時の作り手側のやり取りが、アイテムそのものから見えるというのが面白くて。あとは、[Lee]ってスーパーマーケットからスタートしたブランドで、僕はそのスーパーで売られていたシナモンとか調味料みたいなものも趣味で集めているんですが、そういうもののパッケージもすごく可愛いんですよね。元々、抜群にセンスが良いメーカーだと思います。

—時代ごとの作り手側の創意工夫が、アイテムそのものから見て取れる訳ですね。

NIGO®:そうですね、戦争があって大戦期にディティールが変わったりするのは基本的にどのデニムメーカーでも一緒だと思うんですけど、その辺りの微妙な年代に起こっている変化にマニア心をくすぐられるんです。「これ、時代的にちょうど変わり目のモデルだ!」みたいなものが結構たくさんあって。

—そういった微妙な年代のモデルも、製品としてしっかりリリースされているところが面白いですね。

WHIZIT32,000円 + 税

WHIZIT
32,000円 + 税

NIGO®:ですね。だから失礼な言い方をすれば何も考えていないんですよ(笑)。全部偶然の産物なんですけど、それを遡っていく作業がすごく面白いんです。今回『Lee by NIGO®』で作った『WHIZIT』というモデルも、オーバーオールとも断定出来ないなんとも微妙なシルエットで、その独特の感じがすごく好きで。あとは、『WHIZIT』って当時は農家の人が多く愛用していたもので、資料によるとシェア的に7~8割の農家の人が着ていたとされているんですけど、何故だか全然古着市場に出回らないんです。1960年代くらいまでは生産されているはずなんですが、何故こんなに球数が少ないのか、その理由は分からず…(笑)。だから、[Lee]のマニアにとってもすごく嬉しいものになっているはずなんですよね。

—今お話に出てきたので『Lee by NIGO®』に話を移したいと思いますが、このプロジェクト自体はいつ頃からスタートしたのでしょうか?

NIGO®:最初に話が出たのは意外と古くて、2~3年前くらいですね。[Lee]の方から僕が持っている[Lee]のアーカイヴを見に来られて、その時にお会いして「こんなに[Lee]を愛してくれているなら、何か一緒にやりたいですね」という話になったのが、今回色々なタイミングが重なって、めでたく実現したという感じです。

—ジーンズ2型、オーバーオール1型の計3型が『Lee by NIGO®』のデビューコレクションとして発表されましたが、この3型はある程度NIGO®さんの頭の中に最初からあったものなのでしょうか?

NIGO®:なんとなくですが、「この辺からやりたいな」というのはありました。古着が好きな人にとっては王道と言うか、いわゆる”幻のピース”ってやつですね。[Lee]さんも僕の意向を汲んでくれて、忠実に再現したい部分はそのまま再現してくれたし、かなり満足度は高いです。ジーンズメーカーならではの細かいサイズのバリエーションを実現出来たのも嬉しいことですし、個人的に一番嬉しかったのはボタンに『Lee by NIGO®』のネームを入れてくれたこと。中々ここまではやらせてもらえないですし、[Lee]のファンの1人として、これには本当に感動しましたね。

101 Cow boy 23,000円 + 税 131 Cow boy 26,000円 + 税

101 Cow boy 23,000円 + 税 131 Cow boy 26,000円 + 税

以前にインタビューをさせて頂いた際に「[HUMAN MADE®]ではレプリカではなく、そこに自分らしさを加えたものを作りたかった。」という発言をされていましたが、『Lee by NIGO®』ではそれとは異なるコンセプトでものづくりを行ったのでしょうか?

NIGO®:そうですね、例えば[HUMAN MADE®]でこれをやってしまうと、ただのコピーになってしまう訳で、それでは面白くないですよね。だから、[HUMAN MADE®]ではそこに自分なりの解釈をプラスしていたんですが、これは[Lee]のオフィシャルで行うプロジェクトですからね。僕も1人のヴィンテージ好きとして「探しても出てこない」という悔しさは十二分に分かるし、オリジナルを買ったら数十万円するものが2~3万で買えるというのは単純に嬉しいはずだと思って。広く売れて、それでいてマニアにも届くもの。そういうものが作りたかったんです。変な話、[Lee]のヴィンテージが好きだけど僕に抵抗があるという人は、タグとか切っちゃえば良いんですよ。古着でもタグを切ってあるものなんて良くあるし、ボタンのネームはあまり目立たないし。実はそういうことも考えて、こういう仕様にしてあるんです(笑)。

—世界的に見て、NIGO®さんのような[Lee]のコレクターというのは多く存在しているのでしょうか?

NIGO®:かなり多いと思いますよ。ヴィンテージ好きの中でも[Lee]が好きって言う人は結構多いはずです。だからこそ、[Lee]を愛する1人としてアイデアは本当にたくさんあって、今後まだまだ作りたいものや、このデビューコレクションの進化系が既に頭の中に浮かんでいるんです。個人的にはウォッシュがすごく好きだから、このプロジェクトでウォッシュもやってみたいと思うし、発表後の反響の大きさを考えると将来的にもっとバリエーションを増やしても良いのかなと、個人的には思っています。まぁ、最終的には[Lee]さんの判断なので、その辺は断定は出来ませんが…(笑)。

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—今日はNIGO®さんの私物の中から、お気に入りの[Lee]のアイテムを1点持って来て頂きましたが、こちらについて解説をお願い出来ますか。

NIGO®:すごく悩んだんですが、このピエロシャツを選びました。一般的に流通していたものでは無く、その名の通りロデオショーの合間の盛り上げ役のピエロが実際に着用していたものです。本来は丈があと30cmくらい長いんですけど、これは誰かが着やすいようにカスタムを施したもので、50年くらい前のものだと思います。これも色々なバリエーションがあって6枚くらい所持しているんですけど、全部ディティールが異なっていて、年代が新しくなると胸ポケットの文字が刺繍では無く、フロッキーになっていたりして、面白いシャツなんですよ。今でも良く着ています。

—これまでのキャリアで様々なデニムを作ってこられたと思うのですが、NIGO®さんがデニムを作る際に何か気を配っている点はありますか?

NIGO®:最近自分が作るデニムに関して言えば、必ずサイドポケットを付けるようにしています。デニムって元々ワークウェアの印象が強くて、それにサイドポケットを付けると更に作業着としての意味合いが強くなってファッションの域を逸脱してしまうようにも思えるんですが、実はサイドポケットって、今の時代にあるとiPhoneを入れるのにすごく便利だったりするんです。基本的にデニムを作る時はそこまでいじらないようにしていて、そういった現代ならではの便利機能を付けるぐらいが理想ですかね。

—デニムという素材は多くの男性にとって普遍的なものだと思うのですが、NIGO®さんのワードローブにおいて、デニムはどういう存在になっていますか?

NIGO®:基本、僕は1年のうち300日以上はデニムを身に着けています。スーツを着るにしてもデニムに合わせるし、多分ラルフ・ローレンにも負けないくらいデニムを履いていると思いますよ(笑)。要は空気みたいな存在ってことですね。

—コレクションの規模としては、毎回これくらいの型数で発表を続けていく予定ですか?

NIGO®:うーん、そこは何とも言えないですね。ただ、時代感や空気感としては良いタイミングで出せたのかなと思っています。最初に出した『Lee by NIGO®』の情報は、僕のInstagramのアカウントでのボタンのアップなんですが、多分みんなジャケットが出るんじゃないかと考えたと思うんですよ。そこであえて、ボトムスからスタートさせたのも良かったと思うし、良い意味で今後への期待感も持ってもらえたかなと思っています。

—それでは最後に125周年を迎えた[Lee]に何かメッセージを頂けますか。

NIGO®:僕も今年25周年を迎えるので、[Lee]は丁度100年先輩にあたります。今回の『Lee by NIGO®』というプロジェクト、自分にとっては大変光栄です。70年前のアイテムが今でも普通に着られる素材はデニムしかないと思いますので、出来ればこれからも楽しい取り組みを継続出来ればと思ってます。

【商品のお問い合わせ先】
Lee Japan
TEL:03-5604-8948
http://www.lee-japan.jp/

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