Lee『101』とインナージャーニー – 4人組ロックバンドの新星が考えるスタンダード –

by Seiya Kato

新進気鋭なラグジュアリー・ストリートの波やインディペンデントブランド、そしてメディアに上がるスタイルサンプルの数々など、さまざまな価値観の混在するなかに身を置く僕らは、たまに何を基準に服を選べばいいかわからなくなることがある。それは服だけでなく、音楽や食べ物においても同様だ。
本特集では、Lee(リー)が開発したデニムの元祖モデル『101』を、スタンダードと所縁のある多様なミュージシャンに着こなしてもらうとともに、“スタンダード”について、彼らなりの記憶を辿りながら再考。
今回は、2019年に結成されたばかりの4人組ロックバンド、インナージャーニーが登場。2021年3月にはフォースシングルとなる”グッバイ 来世でまた会おう”を発表しており、これまでにリリースした楽曲はいずれも、カモシタサラによる独創的な詞の世界と、それを支える力強いサウンドの融合が心地よい空気を生み、バンドへの注目度は急速に高まっている。メンバーはどんな音楽に影響を受け、バンドのサウンドを作り上げているのか。4人の音楽遍歴を探っていくと、インナージャーニーのスタンダードが見えてきた。
※本特集内に掲載されている商品価格は、全て税込価格となります。

Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Yumi Asakawa | Model: InnerJourney | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Seiya Kato

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相談しないままコンテストに応募して、みんなの予定を狂わせたんです(カモシタサラ)

カモシタサラ(ボーカル / ギター)をフロントに、本多秀(ギター)、とものしん(ベース)、Kaito(ドラム)がサウンドを固めるインナージャーニーが結成されたのは2019年10月のこと。以後、東京都内を中心にライブを行い、2020年3月にはファーストシングル”クリームソーダ”を配信リリース。同年12月にはファーストEP『片手に花束を』、2021年3月には”グッバイ来世でまた会おう”を発表するなど、勢いに乗った活動を展開している。

— バンドの成り立ちから聞きたいのですが、そもそもはカモシタさんのサポートのために集まったメンバーによって、インナージャーニーが結成されたということでいいのでしょうか?

カモシタサラ(以下カモシタ):そうですね。もともとソロで弾き語りをしていたのですが、次第にバンドとしての音源が欲しくなって、レコーディングのためのバンドメンバーっていう形で3人を集めたんです。そのときに作った音源でコンテストに応募したらたまたま通ってしまい、そのままバンドで出演することになり、結果としてバンドが結成されたっていう流れですね。

— 自身の作る曲がバンドサウンドに向いていると直感したのですか?

カモシタ:もともとバンドが好きで、バンドサウンドへの憧れはずっとあったんです。でも、どうやってメンバーを集めればいいのかがわからなかったので、とにかく曲だけは作ろうって思いながらソロで活動していました。

— メンバーは全員、同じ高校の軽音部出身ということですが。

Kaito:顔見知りでしたけど、学年はバラバラだったんです。当時はベースが3年、ボーカルとギターが2年、僕が1年だったので特に仲がいいわけでもなくて「みんな、楽器をやっている人たち」っていう認識でした(笑)。

— バンドを結成するにあたっては、どのように声をかけていったのですか?

カモシタ:レコーディングが前提だったから、とにかく楽器が上手い人たちに声をかけようと思って。でも全然面識がなくて、むしろ「怖い」くらいに思っていたんですけど(笑)、楽器が上手いから声をかけざるを得なくて、LINEで「デモ音源がこれなんですけど、よかったらレコーディングに参加してもらえませんか?」って。

カモシタサラ
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500) 13,200円(Lee Japan  TEL:0120-026-101)、HOMELESS TAILORのカーディガン 38,500円(Skool  Instagram:@yuk_skool)、WRAPINKNOTのリブニット 26,400円、space craftのブーツ 26,400円(ともにUTS PR TEL:03-6427-1030)

— オファーを受けたときはどのように感じましたか?

とものしん:僕は別にバンドを組んでいたんですけど、後輩から声がかかったので曲を聴いてみたら結構よかったので、「まぁ、1回きりだし」と思って引き受けた感じですね。

Kaito:バンドを組みたいっていう思いはずっとあったんです。でも、通っていた高校は一貫校で、幼稚園から高校まで同級生が15年間ずっと変わらず、コミュニティもなかったのでバンドを組みたくても組めなかった。そんな環境だったこともあっていろんな人のサポート活動を始めたんですけれど、そんなときにボーカルからこの話をもらったんです。そもそも、サポートをしていくなかで自分の活動の指針となるようなバンドを見つけられたら……と思っていたので、本当に運が良かったと思います。

本多秀(以下、本多):僕はもともとサラとバンドを組んでいたので、驚きもなく「あぁ、やってあげるよ」みたいな(笑)。

— ただ、コンテストのための1回の予定が……。

カモシタ:あ、最後までいくんだって(笑)。

とものしん:コンテストに応募していたことも知らなくて、最初は一次審査で3,000分の100組に通りましたっていう報告がLINEで届いて「応募してたんだ!? じゃあ、一度ちゃんと告知しよう」「あ、次も通過したんだ。じゃあライブをやりましょう」「あぁ、今度も受かったんだ。ファイナルですね」っていう感じで、いまいち状況を受け止められないままに進んで、引くに引けないところまで来ちゃったという(笑)。それならバンドでやろうかって。

カモシタ:何も相談しないまま送っていて、みんな、予定がめちゃくちゃ狂ったっていう……。

とものしん:本当はそのコンテストにシンガーソングライターとして応募して、サポートメンバーを呼ぶっていう形でもできたはずなんですけど、何を思ったのかバンドとして申請していて。つまり、僕らが出ざるを得ない状況を作り上げられてからのスタートだったんです(笑)。

Kaito:コンテストに出ている間はサポートっていう形式でしたが、ファイナルまでいって、お客さんに聴いてもらえる環境ができて、いろんなライブにも呼ばれるようになったときに「だったらもう、サポートじゃなくてバンドにしよう」って。コンテストが終わって、ライブハウスで活動しようっていうタイミングで、正式にインナージャーニーっていう名前をつけてバンドをスタートさせた感じですね。それまではカモシタサラバンドっていう名前でやっていたので、ファイナルにいったことがターニングポイントになったとは思います。

— 音楽性はカモシタサラバンドを継承している感じですか?

カモシタ:ソロのときはもっとゆったりしていましたね。アコギ1本でできる表現に限界があったので、当時とは作る曲も変わってきていると思います。

— それはバンドサウンドを意識した結果ですか?

カモシタ:メンバーと作っていきますからね。最初に弾き語りの曲を投げてから、メンバーがそれぞれアレンジを練って詰めていくスタイルになったので、ソロの頃とはだいぶ違うんじゃないかと。

— インナージャーニーはとりわけ、詞が独特の世界観を持っているように感じますが、影響を受けたものはあるのでしょうか?

カモシタ:影響はあまり考えたことがないですね。実は、本を読むのもそれほど得意ではないし。

本多秀
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500) 13,200円(Lee Japan TEL:0120-026-101)、HOMELESS TAILORのジャケット 49,500円(OVERRIVER TEL:03-6434-0922)、icebreakerのロンT 12,100円(ゴールドウイン カスタマーサービスセンター TEL:0120-307-560)、BLOHMのミュール 39,600円(STUDIO FABWORK TEL:03-6438-9575)、その他/スタイリスト私物

— 特に”グッバイ来世でまた会おう”は「死」の先に希望を感じさせますが、あの詞が生まれたきっかけは何かあるのですか?

カモシタ:それはよく聞かれるんですけど、あの曲ができる3年くらい前に祖母が亡くなったんです。それをきっかけに死や生きることについて考えるようにはなっていて、ずっと頭のなかにもやもやしたものがあったんですけど、その答えというか、自分を納得させるために曲を作ったということはあると思います。基本的には、生きているなかで自分の感じたことを曲にしている感じですね。

ワンウォッシュの『101Z』は、暖色をベースに構築した秋冬のコーディネートにもよく映える。