Lee『101』と楢原隼人(Poor Vacation) – 都市型ポップミュージックの新鋭が語るスタンダード –

by Seiya Kato

新進気鋭なラグジュアリー・ストリートの波やインディペンデントブランド、そしてメディアに上がるスタイルサンプルの数々など、さまざまな価値観の混在するなかに身を置く僕らは、たまに何を基準に服を選べばいいかわからなくなることがある。それは服だけでなく、音楽や食べ物においても同様だ。
本特集では、Lee(リー)が開発したデニムの元祖モデル『101』を、スタンダードと所縁のある多様なミュージシャンに着こなしてもらうとともに、“スタンダード”について、彼らなりの記憶を辿りながら再考。
今回は、2018年にファーストアルバムをリリースしたPoor Vacationのリーダー、楢原隼人が登場。Poor Vacationが新進気鋭のシティポップグループとして注目される一方、2020年にデビューしたユニセックスクロージングブランド・Adult Oriented Robes(アダルト オリエンテッド ローブス)のイメージ音楽も手掛けるなど、ファッションシーンとの繋がりも見せる。そんな楢原隼人にとってのスタンダードな音楽とは。
※本特集内に掲載されている商品価格は、全て税込価格となります。

Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:Hayato Narahara(Poor Vacation) | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Seiya Kato

1 / 3
ページ

Poor Vacationはバンドというより、集合体とかコレクティブみたいな感じ

2015年に活動をスタートさせた、楢原隼人率いる都市型ポップグループ、Poor Vacation。2016年にはコンピレーションアルバム『Young Folks in Metropolis』をオーガナイズし、2018年にはグループ名を冠したファーストアルバム『Poor Vacation』をリリースした。その勢いが冷めやらぬ2019年12月には、12インチレコード『Weekend on the Moon』を発表。グループが加速度的に人気を獲得していくなか、個人での活動もまた多岐にわたり、注目を集めている。

AMERICAN RIDERS 101Z (LM5101-500) 13,200円(Lee Japan TEL:0120-026-101)、T.Cablinのアノラックジャケット(パンツとのセットアップ価格) 66,000円(OVERRIVER TEL:03-6434-0922)、Solovair for Props Storeのダービーブーツ 37,400円(Props-Store TEL:03-3796-0960)、その他本人私物

— そもそもPoor Vacationは、楢原さんのソロプロジェクトとしてスタートしたという認識でいいのでしょうか?

楢原隼人(以下、楢原):もともとバンドをやり始めたのが2009年頃なのですが、最初のバンドが2014年に一旦ストップして、そのときの反省を活かしながら……。

— 反省ですか?

楢原:(笑)。前のバンドで僕はリーダー兼ギターだったんです。フロントマンは別にいたのですが、僕が彼にいろいろと要求していて、要求すればするほど彼の持ち味がどんどん消えていったんです。彼からも「オマエは1人でやったほうがいい。そのほうが思いどおりにできるし、やりやすいだろう」とはずっと言われていたんですけど、2014年頃に「そうかもな」って思い始めて、そこで自分がフロントマンになるプロジェクトをスタートさせ、2015年に最初の音源をリリースしたんです。

— 現在のPoor Vacationはバンドとして捉えていいのですか?

楢原:一応、グループって言ってるんですけど……。集合体とかコレクティブみたいな感じなんですよね。ライブメンバーよりはバンドに近いし、バンドというよりはユニットに近いみたいな。その間の関係性という感じですかね。

— メンバーはどのように集めたのですか?

楢原:そもそもの知り合いは1人。高校の同級生が1人いて、彼女は前のバンドでもサポートしてくれていたのですが、他は全員ヘッドハンティング的に、当時近しかったバンドや好きだったバンドのメンバーに声をかけていきました。以前のバンドは仲がいいことを前提にやっている感じでしたが、そうすると当然、プレイアビリティとか感性的な部分で違和感が出てしまう。だから、Poor Vacationでは音楽性を優先してメンバーを集めたんです。

ワンウォッシュの『101Z』に同系色のアイテムを合わせ、色の濃淡と素材感でこなれ感を演出。

— 曲作りはどのような体制で行っているのですか?

楢原:基本的には僕がすべて作るんですけど、メンバーが持ってきたトラックをメンバーが膨らませて、僕は何もしないこともたまにありますね。バンマス的にアレンジだけをやるとか。だから、以前とは曲作りの意識が変わりましたよね。前はフロントマンを立たせたいという気持ちがあったので、プロデューサー的な目線で作っていたんですけど、今は自分のやりたいこと、それも企画者的な思考というか「この曲にこの要素を持ってきたらどんな感じになるだろう?」というような、サンプリングっぽい感覚で作れるようになりましたね。

— ではグループの結成はプラスに作用したわけですね?

楢原:もっと早くやればよかったと思っています(笑)。アイツ(前バンドのフロントマン)の言ったとおりだなって思いました。

— 2009年に最初のバンドを組まれたということですが、そもそも音楽活動をスタートさせたのにはどのような経緯があったのですか?

楢原:本当は、大学4年のときに大学院への進学を希望していたんです。ただ当時、僕の論文を読んだ教授に実際の研究っぽくないというか、創作物っぽいと指摘されて、研究職に就きたいというよりは何かを作りたいんだろうなっていうことを実感したんです。じゃあ、何が一番好きかと考えたら音楽だったので、音楽を作ってみようか……っていう(笑)。それまでも趣味として楽器はやっていたんですけど、ちゃんとやろうと考えたのは大学を卒業するタイミングですね。