ファーストアルバム『明日は当然来ないでしょ』に収録されている楽曲はネオ・ソウルを基調としながらも、後半に進むにつれてよりしっとりとした雰囲気が堪能できる1枚だ。独特の”yonawoサウンド”ができあがるうえで、The Beatlesやジャズが重要なファクターになっていることはわかったが、どうやらyonawoにとってのスタンダードはそれだけではないようだ。
— この特集はLeeの『101』にちなんで”スタンダード”をテーマにしているのですが、yonawoにとってのスタンダードな音楽とは何ですか?
野元:童謡かなぁ……。
荒谷:童謡に限らず子守唄とか。小さい頃に祖母が歌ってくれた”赤い靴”とか。結構哀しいんですよね(笑)。あれを子供ながらに心地よく聴いていて、歌詞も哀しい内容だってわかっているんですけど、それがなぜか心地よかったんです。それは、ずっと自分のなかで大事なものとして存在している感覚はあります。
田中:彼の話を聞くと、その感覚はたしかにわかりますね。俺は荒ちゃんが作る曲に、どことなく悲哀とかノスタルジーを感じるんですけど、その根底には童謡とか子守唄があるのかなぁと。自分たちの曲以外でも、そういう部分を感じると気になっちゃいますからね。のもっちゃん(野元)は、ドラムにおいてのスタンダードみたいなものってあるの?
野元:ドラムを始めたときは、わりと生音より打ち込み系の音の方が好きで。パターンが少なくて、気持ちいいところだけフィルがあるみたいな。”シンプルでいい音”みたいなのが僕のなかでのスタンダードですね。荒ちゃんの考えてくるドラムパターンも面白いんだけど、スタンダードって言われたらシンプルな音かなぁ。
— 和太鼓をやっていたそうですが?
野元:もともと和太鼓をやっていたんですが、音の深みが気持ちいいんですよ。叩く強弱とか腕の伸ばしかたとかで音が変わるので。その経験があるからいい音が好きなんでしょうね。だから、ドラムを始めたばかりの頃は「うるさいな!」って思ってました。
全員:(笑)。
野元:今はミュートとかいろいろ覚えたからマシになったけど(笑)、最初の頃はスタジオで練習が終わると耳がキーンとしてて「あぁ、イヤだ」って思ってた。
斉藤:親がずっと音楽を聴いてる家だったんですけど、自分のiPodを小学5年のときに買って、そこに入れて聴いてた音楽ってアコースティックな曲が多いんです。Robert Johnson(ロバート・ジョンソン)やBo Diddley(ボ・ディドリー)、Jack Johnson(ジャック・ジョンソン)とかEric Clapton(エリック・クラプトン)の『Unplugged』とか。基本的にはブルースとかアコースティックなものが一番好き。そこがスタンダードですね。だから自分たちの曲にもすぐアコギを入れたがるし(笑)。
— たしかに、アルバムを通して聴くとアコースティックの比重は大きいですね。ちなみに音楽を作るうえで同時代性を考えていたりはするのですか?
荒谷:ひねくれてますからね(笑)。たぶんできないと思います。「自分が好きじゃない」っていうことになるので。「できるもの」や「みんなに見せたいと思うもの」って、結局は「自分が好きなもの」なんですよ。
— 普段のファッションはどういったものが好みですか?
荒谷:僕はデニムが好きで、だいたいデニムを穿いてますね。
田中:自分がよく着るのはオーバーサイズですね。ただ、みんな服を買う店がだいたい同じなんですよ。福岡でよく行く古着屋があるんですけど、そこで全員で買い物するし。その店のカラーがあるから、やっぱり全員近い雰囲気になったりはしますね。
荒谷:のもっちゃんはグレー系が多いよね?
野元:グレーとか黒、茶色みたいな感じ。
斉藤:おじいちゃんのお下がりは?
田中:のもっちゃんが「おじいちゃんのお下がり」って言って着てる服がカッコいいんですよ。「それ、カッコいいね」って聞くと「あ、これおじいちゃんの」って(笑)。
野元:だいたい似たような服を着ていますね……。ただ、着心地は大事! むしろいい服をたくさん買いたい。
荒谷:服は慧と雄哉がいろいろ取り入れてますね。
斉藤:ヴィンテージとか古着が好きなんです。最近は服屋の友達が増えたので、新品の服も好んで着るようになりましたね。ただ、新しいのを1つ着るならどこかに古着は入れたいんですよ。でも、みんなヴィンテージは好きだよね?
荒谷:そうですね。今日のデニムも古着。バンクーバーに行ったとき、大きい倉庫みたいなところで見つけて。
— 荒谷さんはデニムがお好きとのことですが、ほかのみなさんはいかがですか?
田中:持っているんですけど、普段はあまり穿かないかも。ただ、荒ちゃんとか雄哉が穿いているのを見ると「デニムってカッコいい」って思うので、1本いいのが欲しいんです。「死ぬまで穿いていける!」って思えるような。そんなふうに考えると、なかなか手が伸びないですね。
— 今日穿いたLeeの『101』はいかがでしたか?
斉藤:カッコいいですよね。
田中:ひさしぶりに硬めのデニムを穿きました。
野元:出かけたくなる硬さだよね? いいデニムって、穿くとどこかに出かけたくなる。
— 音楽以外にクリエイティブに影響を与えているものはありますか?
荒谷:本は好きですね。村上春樹さんとか村上龍さん。三島由紀夫さんも。とはいえ読書家っていうわけではないんですよ。読み出したのも高校を卒業するあたりからで、むしろそれまでは国語が大嫌いでした。今は自分から学びたいくらい好きですね。バンクーバーに行ったのも、ずっと英語の曲を聴いていて、英語で曲を作ろうと思ったのが理由なんです。ネイティブの言い回しとかを勉強したいと思って行ったんですけど、結局日本語のほうがいいなって。ただ、いい経験にはなりましたね。バンクーバーで曲もいっぱい書いたし。それにほかの言語を学んだことで母国語の素晴らしさがよりわかるようになりました。
田中:音楽以外だと……サウナですね。
荒谷:頭空っぽにならない?
田中:それがいいんだよ。そのために行くんだから。あとは散歩。クリエイティブするうえでは結構重要で、ベースのフレーズを考えても浮かばないときは、散歩するといいフレーズが出てきたりする。散歩してると景色が変わっていくじゃないですか? 歩いているときに見たものからは何かしらの影響があると思うんですよね。
斉藤:俺は食事。食べて、頭のなかで分解するのが好きなんですよ。「何が入ってるんだろう?」とか。これって音楽を聴くときと似ているんですよね。「このドラム、どうやって録ったんだろう?」とか。お酒も同じですね。
— 最後に、今後の予定について教えてください。
荒谷:ツアーがあります。東京、大阪、名古屋、福岡、札幌の5大都市。それが終わったらまた制作ですね。今、福岡で自分たちが集まれる、遊び場みたいなスタジオを作ろうとしていて、みんなで物件を探しているんですけど、なかなか見つからないですね。でも、それが見つかったらもっと違った制作方法というか体制でできると思うので、一番の楽しみですね。
田中:作曲のアプローチが絶対に変わるはず。そうしたら、また違うものが生まれてさらに面白くなると思うんですよ。