Lee『101』とJohnnivan – 日本発、多国籍メンバーのダンスロックバンドが考えるスタンダード –

by Nobuyuki Shigetake

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その瞬間の自分に正直でありたいし、そうじゃないとダメだと思う(Johnathan Sullivan)

“インディーダンスロックバンド”とカテゴライズされるだけあって、Johnnivanのサウンドはたしかに、インディーロックやダンスロックを融合したかのようだ。しかしメンバーが語っているように、そこにはかつてのアートロックやニュー・ウェイブ、90年代以降のインディーロックなどのエッセンスも盛り込まれ、それがJohnnivanの楽曲に深みを持たせている。現在だけではなく、過去の音楽をも掘り起こし向き合っている彼らにとって、スタンダードな音楽とはどのようなものなのか。

— この特集はLeeの『101』にちなんで”スタンダード”をテーマにしているのですが、Johnnivanにとってのスタンダードな音楽とは何ですか?

Shogo:たとえばThe Beatles(ザ・ビートルズ)やLed Zeppelin(レッド・ツェッペリン)、The Rolling Stones(ザ・ローリング・ストーンズ)みたいな、いわゆる定番と呼ばれる音楽がありますが、それを聴いて「カッコいいね」で終わるのではなくて、「何でこのアーティストがカッコいいと思うんだろう」とか「この曲のどこが好きなんだろう」って考えていくと、自分の好きなポイントに気づいて、自分が進むべき方向が分かってくると思うんです。僕らであれば、その方向に向かって曲を作るし、リスナーであれば自分の好きな音楽を掘っていく。そのどこかを出発点としてスタンダードを変えていくべきかなと。僕らはそのためにアルバムを作るし、リスナーの人たちにもそういった音楽との向き合い方をして欲しい。僕らもそこに影響を与えられたら意味があるだろうし。だから、スタンダードって、受け入れるものじゃなくて変えていくものだと思います。

Johnathan:David Bowie、LCD Soundsystem(LCDサウンドシステム)、Nine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ)とか、自分たちにとってのヒーローでスタンダードにしているアーティストに共通しているのは、その瞬間の自分自身に対して正直ですよね。アルバムはもちろん、ライブのプレゼンの仕方とか、髪型ひとつとってもそう。そのときの自分に正直だし、ちゃんと時代に合わせて変化している。自分もそうでありたいし、そうじゃないとダメかなぁって思います。

Junsoo Lee
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-400) 12,000円(Lee Japan TEL:0120-026-101)、STILL BY HANDのドリズラージャケッ 30,000円、カットソー 11,000円(ともにSTYLE DEPARTMENT TEL:03-5784-5430)、Parabootのレザーシューズ 65,000円(Paraboot AOYAMA TEL:03-5766-6688)

— 共通して好きなアーティストはいますか?

Junsoo:The 1975はみんな好きだよね。

Shogo:LCD Soundsystemも。

Kento:Phoenixもみんな好きだよね。

Junsoo:結成当時より、それがみんな一致してきている感じはありますね。意識して聴いているところもあるけど、寄ってきてる。

Shogo:「これを聴け」って言ってるわけじゃないんですよ。目指す方向が一緒になってきたから寄ってきたんですよね。

— アーティスト写真を見るとジャケットスタイルなので、その印象が強いのですが、普段はどういったスタイルですか?

Shogo:このなかで一番こだわりがあるのはジョナじゃない?

Johnathan:アー写とプライベートはあまり変わらないですね。基本はモノトーンでなるべくシンプルにしています。他のバンドの服装を見ると、結構飾っている人もいるじゃないですか? もちろん、ファッションに気を遣わないわけじゃないですけど、そこまではやりたくないっていうのはメンバー全員共通してます。ライブのときとかは清潔感を保って、動きやすい服装にしてますね。

— バンド名と一緒で、ファッションから何かを連想させたくないという考えですか?

Shogo:音楽に集中してほしいんですよ。

Junsoo:いわゆる下北っぽさとか、そういうのを目指しているわけではないですからね。

Johnathan:ビジュアル面についてはなるべく先入観を排除できるようにしているので、自分たちが出す音に集中してくれれば。

Shogo:もちろん、ほどほどにはカッコつけますけど(笑)。

>AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500) 12,000円(Lee Japan TEL:0120-026-101)、STILL BY HANDのアノラックジャケット 19,000円(STYLE DEPARTMENT TEL:03-5784-5430)、EYEVAN 7285のサングラス 52,000円(EYEVAN 7285 TOKYO TEL:03-3409-7285)、その他本人私物

— 普段、デニムは穿きますか?

Junsoo:Kentoと僕がよく穿いてますね。

— Leeというブランドのイメージはありますか?

Junsoo:名字がたまたま同じなんですよ。

全員:(笑)。

Johnathan:デニムって最初は硬くて動きにくいけど、どんどん自分の型にハマっていくイメージがありますね。

Junsoo:今日『101』を穿いてみて感じたのは、キレイで品があるデニムだっていうことですね。

Kento:普段はスキニーしか穿かないんですけど、『101』のような太めなスタイルもいいなって思いました。

Shogo:僕はファッションに詳しくないですけど、詳しい人って、音楽のスタンダードと同じようにジーンズに向き合う印象がありますね。

ダークトーンで統一したスタイリングには裾のロールアップで軽快さをプラス。

— 独特な音楽を作っているから聞きたいのですが、音楽以外の趣味や大切にしているものはありますか?

Johnathan:観る作品は違いますけど、映画はみんな好きかな。服の好みとも少し被るんですけど、フレームがしっかりしている監督さんの作品が好きですね。David Fincher(デヴィッド・フィンチャー)とかQuentin Tarantino(クエンティン・タランティーノ)とかDavid Lynch(デヴィッド・リンチ)とか。Noah Baumback(ノア・バームバック)も好きですね。『Marriage Story』のダイアローグとか人の写し方とか。

Kento:自分は、John Carney(ジョン・カーニー)ですね。『Begin Again』とか『ONCE』、『Sing Street』の。音楽を通してほっこりするような、あの作風は好きです。

Shogo:「音楽以外」っていう質問の回答にはなっていないんですけど、クラシックが好きなんです。3歳でクラシックピアノを始めて、中学3年まではバンドを聴いたことがなかったくらいで、今でもクラシックピアノのコンサートとか、オーケストラのコンサートに行くのは好きですね。”音が生きている”というか”音が見える”というか、そういう感覚がいいんですよ。

Junsoo:僕は時計が好きで。昨年くらいからコレクションを始めて、毎月時計にお金を使ってますね。一番好きなのはダイバーズウォッチ。最近は『Baby-G』を買ったんですけど、それは在宅続きでつまらなくなったから、家の中で着ける時計を探して……。

Shogo:誰も見てないのに(笑)?

Junsoo:着けたまま風呂場に行ったりして、24時間着けているのを楽しんでます。

— ところで、どんなきっかけで「音楽をやっていこう」とか「バンドをやろう」っていうマインドになったのですか?

Shogo:こんなことを言うのは恥ずかしいんですけど、ジョナはスターになるべきだと思ったんですよ。海外も含めて、今まで見てきたバンドやアーティストの誰よりもカッコよかったので。自分で成り上がりたいって言うよりは、なんとかしてこの良さを伝えられないかと考えて始めましたね。今もモチベーションは同じ。このカリスマ性を日本だけじゃなくて世界に伝えたいと思って始めました。

Kento:最初に誘われたときは留学していて直接会っていないんですけど「Phoenixみたいな音楽やるから」って言われて、Johnathanがボーカルっていうのも聞いたんです。彼は入学したときから「ヤバいのが入ってきた」みたいな感じで噂になってたんですけど、あのJohnathanと組めるなら楽しいかと思って、二つ返事でOKしたんですけど、そのあとで送られてきたデモを聴いたら全然Phoenixと違ってて……。

全員:(笑)。

Kento:ただ、音楽にすごいものは感じましたね。本当に面白いことが起きるんじゃないかって。

Johnathan:僕はみんなとは違って、作曲して試行錯誤するのが楽しかったから。でも、今はみんなが同じものを聴いてボキャブラリーも揃ってきているし、アルバム制作も経験したので、次からはアイソレーションで作らないアルバムになる。そのプロセスをどう充実させられるかを考えています。

Junsoo:僕はソングライティング・タイプではないので、モチベーションは、このバンドを成功させることですね。音楽のパフォーマンスもそうですけど、音楽以外でも、組織の成功を第一に考えて動いていますね。

Shogo:いい作品を長く作り続けることが最大でずっと変わらない目標なんです。そのため、音楽以外の部分でもリスクヘッジして、いい関係を築けているとは思いますね。僕とジョナだけだったら対応しきれなかった部分も、ほかの3人が対応してくれますし、とにかくメンバーバランスがいい状態です。

— 今は活動を大きく変更せざるを得ない状況だと思いますが、直近で考えていることや予定していることはありますか?

Johnathan:今はちょうどセカンドアルバムのデモを書いている途中なんですが、今までと違うのはこの段階からTakatsuさんのインプットがあること。今までのようなアイソレーションじゃなくて、ちゃんとコラボレーションで作れているんですよ。

Junsoo:制作のスパンが短くなるだろうっていうのは感じてます。ライブなどの活動もできないですからね。

Kento:本当は4月にアルバムをリリースして、そこから夏フェスまでライブして、ファーストアルバムの活動が完全に終わってからセカンドアルバムの制作に移る予定だったんですけど……。

Johnathan:そのピリオドが結構前にズレちゃった(笑)。

Kento:もう、こういう状況なので、消化不良な感じはありますけど、セカンドの制作に移って、あとは配信ライブベースでちょくちょく顔を出していくのが直近の動きですかね。

Shogo:とはいえ、ライブと制作が今までみたいにオーバーラップしないので、より制作に集中できるんじゃないかと思ってます。結構ポジティブに捉えてますよ。まだまだやりたいことはたくさんありますからね。

Johnnivan
日本、韓国、アメリカの多国籍メンバーで2017年12月に結成。”生楽器とダンスミュージックの融合”をテーマに、セルフプロデュースによる制作活動を展開。2018年より東京・渋谷や下北沢を拠点に精力的にライヴ活動を行なう。『りんご音楽祭』をはじめとするフェスにも出演し、注目を浴びる。2019年には初となるEP『Pilot』を発表し、2020年6月に『Students』でアルバムデビューを果たす。