SANABAGUN.の名が”Son of a Gun(=ならず者)”から来ていることは、ファンにとっては当然のように知られている話だ。メンバーが醸し出す厳つい雰囲気や、メンバー同士のやりとりのなかで聞かれるスパイスの効いた発言を捉えると、まさに”Son of a Gun”という言葉がぴったりなようにも思える。しかし一転、自身のスタンダードについて語り始めると、そんなイメージは皆無。ジャズに対する彼らの真摯な気持ちがビシビシと伝わってくる。
— この特集はLeeの『101』にちなんで”スタンダード”をテーマにしていて、SANABAGUN.にとってのスタンダードな音楽について話を聞きたいのですが。
高岩:音楽的なスタンダードって言ったらジャズ。”ジャズ・スタンダード”っていうくらいだから。温故知新じゃないけど、トラディショナルでクラシックなものを大事にしつつ、それで地固めて飛ばしていくみたいなのがオレらの根本にあるからね。それに、音楽はもちろんそうだけど、ファッションとか普段の言動とかもそういうのを大切にしてますね。
澤村:ジャズの精神がサナバの根底に……っていうのはあるよね。
高橋:だからヒップホップももちろん好き。ブルースがあってジャズがあって、ファンクがあって、ディスコがあって。そこからヒップホップにつながるみたいな、そういった過程もちゃんと踏まえたい人たちなんですよ。
高岩:カルチャーを大事にしてる。あ、1人だけJラップおじさんが(笑)。
高橋:ラッパーは僕らとはまたちょっと違いますけど、ずっと中坊の頃からそれしか聴いてこなかったくらいJヒップホップが好きで。だからトシキの場合は、もしかしたらジャズじゃなくて、そういうものが彼のスタンダードになるかなと思いますけどね。
谷本:ジャズの人っていろんなジャンルを演るんですけど、結局、ジャズマンがファンクを演奏しても「この人、絶対にジャズだよね」って分かる。だから、その人が何を演ってもジャズの精神だったり、ヒップホップの精神が出るっていうのがオレたちが一番大切にしたいところ。SANABAGUN.はそういうマインドを持った奴らの集まりなのかなっていう感じはしますね。
— メンバーの世代的にはマイノリティなジャンルだと思いますが、各メンバーがジャズに入ったのはバラバラですか?
高岩:バラバラですね。でも、近い世代でそろってるじゃないですか。だから、本当に奇跡のような……腐れ縁ですね。
高橋:マイノリティなものが好きな人が集まったんだなって思うときはすごくあります。
高岩:だからジャズは好きなんですけど、ジャズという音楽が好きっていうよりは、精神に惚れてる人たちが集まった気がするんですよ。
— 普段のファッションについても話を聞きたいのですが、メンバーそれぞれ好みのファッションは違いますか?
高橋:オレはわりと古いものが好きなんで、ホント、50‘s、60’s、70’sとか。それこそ、ジャズの写真集とかで着こなしとかを見たりしてますね。「あぁ、当時の人はこういうの着てるんだなぁ」とか。そこがサンプリングソースみたいな感じですね。
高岩:オレは雑食ですね。世の中にあふれてるオレのイメージはスーツでリーゼントかもしれないですけど、めちゃくちゃディズニーっ子だし、スケボーも大好きなんでキッズな格好もするし、革ジャン着るし。けど、一番大事にしてるのは、実はフンドシか着物みたいなところがあるんです。ファッションとして。でも、それはまだかなぁ……。
— (笑)。「まだかなぁ」というのは年齢的に?
高岩:そうっすね。銀座でバリバリ遊べるようになったら、ね。着物で有楽町とか歩きたいですね(笑)。そういうイメージ。
— デニムを穿くことは?
全員:穿きますね。
谷本:マストアイテムっていうくらい。
高橋:それこそ、Leeの『101』はJames Dean(ジェームズ・ディーン)が愛用してたとか、こういうファッションが好きな人たちが憧れる男が穿いているイメージがありますよね。デニムは男性のものとは思わないですけど「男だったら良いデニム、1本持っとけよ!」みたいな。
— ところで、SANABAGUN.全体の方向性については全員で話し合って決めているのですか? それともリーダーが核になって?
高岩:リーダーは(澤村)一平で。
澤村:僕が「右!」って言ったらメンバー全員、否応なしに右に進む。
全員:(笑)。
澤村:僕が「オマエ、ちょっとそこダメだからやり直せ」って言ったら、「はい、すいません!」「来週までに戻してこいよ」って。
高橋:一平のバンドだもんね。
高岩:陰で「独裁者」って呼んでるんですけどね(笑)。
澤村:いろいろダメじゃん(笑)。
高岩:でも、体当たりでオレらの方向性が決まっていく感じですね。そこらへんもジャズなのかもしれない。
澤村:話し合いながらっていうよりは肌感で向かってるけど、たまにそれが淀み始めちゃうとケンカして方向を定めるみたいな。それをずっと繰り返してる感じだよね。
— たしかにジャズ感がありますね。
高岩:融合感がすごいんですよ……疲れるっす(笑)。形がないんで。
— メンバーはそれぞれ違う活動もしていますが、そんななかでもSANABAGUN.はどういった存在ですか?
澤村:外でいろいろと活動しながらも、SANABAGUN.がホームとしてあるっていう感じ。サナバのリハとかライブの日にみんなに会うと、ほっとするというか。一番素でいられるし。常にサナバが中心にあって、毎日いろんなとこに出かけるような気分ですね。
谷本:一昔前はこういうバンドっていなかったですよね。今はいろんなところで活動してる人が多いと思うんですけど、それこそ「レペゼンゆとり教育」ってオレたちが言ってるとおり、なんかゆとり教育っぽいんですよ。あちこち手ぇ出しちゃうところが。昔の人だったら「1個に集中しろよ」っていうスタイルだったと思うんですけど、それがないところがオレたちの世代感っぽい。まぁ、でも別にゆとりだから悪いっていうわけではないし、普段はバラバラでもやれているのがSANABAGUN.のカッコいいところなのかなと。
高橋:SANABAGUN.のときにダサいって思われたくないなぁって。他の人にはもちろん、メンバーにも。外の現場のときは何て思われようが、それも勉強だし、自分の糧にしたいって思うけど、このなかにいるときはツッパリたいし、メンバーにダサいって言われるような行動はしたくない……そういう男臭い、女ウケ悪そうな考えが蔓延してるんですよ(笑)。
高岩:オレはもう1個バンド(THE THROTTLE)やってるんですけど、どっちも100でやらせてもらってます。どっちがメインっていうのはないですけど、SANABAGUN.は……少年院っすね。
全員:(笑)。
高岩:やっぱり、サグじゃないとダメっていうか、永遠に裏路地ではありたい。そのままお金が入ってきたら最高のストリートドリームじゃないですか。まぁ、少年院……ですね。
澤村:わりとマズい飯しか食ってないし(笑)。
— それはストリートで活動を始めたことが影響しているのですか?
高岩:そうですね。裏路地感っていうか、例えばニューヨークの裏路地で黒人がビバップ吹いてるとか、そういうビジョンとしての裏路地のカッコよさ。尾崎豊がバイク飛ばして埼玉の方に向かっていったとか、それも裏路地感あるじゃないですか。そういう男臭い美学みたいなものを大事にしてるので、そういう意味も含めてストリートですね。
— 今後の予定について教えてください。
澤村:SANABAGUN.として、今年は予定がいっぱいあります。
高橋:『TOUR BALLADS』のアンコール公演という形で、3月に東名阪で『TOUR BALLADS BEYOND』があります。
高岩:それに、音源も楽しみにしてほしいですね。
澤村:制作がスタートするんですよ。2020年はメジャーデビューして5周年になるので、それに合わせてサナバも気合い入れるぞ、と。ライブも制作もどっちも100でいきたいですね。