Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:SANABAGUN. | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Nobuyuki Shigetake
ジャズとヒップホップを融合したサウンドを武器に、2013年に活動をスタートしたSANABAGUN.。独自のスタイルはもちろんのこと、結成直後から渋谷で数多くの路上ライブを行い、着実にファンを獲得してきたことでも知られる存在だ。2015年にメジャーデビューを果たしてからこれまで、4枚のアルバムと1枚のEPを発表。現在は、高岩遼(ボーカル)、岩間俊樹(MC)、大林亮三(ベース)、隅垣元佐(ギター)、澤村一平(ドラム)、谷本大河(サックス)、髙橋絋一(トランペット)に新メンバーの大樋を加えた8人編成となり、最新作『BALLADS』のリリースを契機に、その活動はさらに勢いを増している。
— これまでの作品はライブを感じさせる音作りでしたが、一転、最新作の『BALLADS』は洗練された厚みのあるサウンドに仕上がっています。これはやはり、外部プロデューサーを起用したことが大きいのでしょうか?
高岩遼(以下、高岩):今まではジャムで生まれた曲がベースになっていたんですけど、『BALLADS』は作り方が全く違って、メンバーの1人1人がまずは打ち込みで曲を持ち寄るスタイルにしたんです。以前はそういったプロセスがなく、スタジオリハを、その都度めちゃくちゃ汚い音でレコーディングして……。だから「何日に録ったあの曲、聴いてみようか」って再生してみると……「何弾いてるか分かんねぇよ」みたいな(笑)。
澤村一平(以下、澤村):リハを重ねるたびにちょっとずつ変わっていくんで。
高岩:「これ、いつの録音だっけ!?」みたいな。これまではそういうふうにネタを作っていたんですけど、今回は1人1人が責任を持って、最初から最後までその曲の面倒をみるようにしたんです。そこで大事にしたのが「SANABAGUN.の音楽を聴きやすくするにはどうしたらいいか?」っていう部分。これにはみんな奮闘してたし、苦しんでましたね。
— 具体的にどういった”聴きやすさ”を狙ったのでしょう?
谷本大河(以下、谷本):ライブは観てもらえれば分かると思うんですが、今は音源先行の時代だと思っているので、ライブ感となるとどうしても音源では伝わりにくくなる。そこがオレたちの課題ではあったので、じゃあそこから脱却するためにはどうすればいいかを考えましたね。たとえば「どうすれば、イヤホンで聴いたときに音の厚みが出るだろう?」とか。ならば「今回はプロデューサーにアドバイスをいただこうか」という考えで発進した感じです。それに、今までは全員のエッセンスを入れたがために、リハを重ねていくと最終的に当初の思いとは全然違う曲になってしまうこともあった。だから、今回は1人ずつが曲を持ってきて、面倒をみて、その人の頭のなかにあるものを一度ちゃんと具現化してみようと考えたんです。
高橋絋一(以下、高橋):だから順序としては真逆だよね。プロデューサーを入れたからそうなったというより、そういうサウンドにしたかったからプロデューサーを入れた。
— クレジットを見るとプロデューサーは楽曲ごとに違いますが、1つの作品としてはまとまっていますね。
澤村:普通、プロデューサーに制作を依頼すると、わりとプロデューサーのカラーが強く出てしまうと思うんです。ただ、今回は作曲者がプロデューサーを選んで一緒に作り上げていったので、完全に外注でお願いしたというよりは、その曲の魅力やポピュラリティを上げるために”プロデューサーの手を借りる”という方法だったので、曲によってカラーが違いすぎるようなことはなかったのかなぁと。それともうひとつ、今回、レコーディングエンジニアを土岐彩香さんという方にお願いしたのはデカかったなぁと思いますね。土岐さんは僕たちの趣味も理解してくれるけど、それ以上に今回作りたい作品の方向性を理解してくれてた部分がかなりあって。僕たちのやりたいサナバのカラーを残しつつ、でもアップグレードしたサウンドに仕上げてくれた。
谷本:それで統一感が出たのはあるね。
高橋:いい意味で、公私混同しながらやってもらった感じはあります。エンジニアの方って、人によっては「仕事だから」って割り切っちゃうタイプもいると思うんですけど、土岐さんにはかなりがっつり入ってもらいましたね。
— このサウンドの変化に対して、周囲、あるいはファンの方からはどのような反応がありましたか? 驚かれた人も多いと思いますが。
谷本:賛否両論じゃないですかね。「すごい頑張ったね」っていう意見もあるし、「こういうのは求めてないんだけど……」みたいな意見もある。ウチのラッパーのトシキ(岩間俊樹)がよく言うんですけど、いろんなチャレンジをしているなかで、今回はこういうチャレンジをしてるんで、賛否両論あるのはむしろいいことなのかなっていう。ただ「応援してます」とか、ただ「いい」っていう人だけじゃないっていうのが。それがあるから、オレたちも「次回はもっとこうしよう」っていう判断もできるし。
澤村:自分たちのジャム的な作り方をどんどんアップグレードさせていったのが前作の『OCTAVE』で、あれを作った時点では「おぉ〜」みたいな感じはあったんです。でもそこからもう一段階、今のサナバをより良く見せていくためにはあの方法だと限界があるんじゃないかっていう話になって、全く新しい手法でチャレンジしてみたんです。結果、自分たち的にも手応えを感じてるし、手応えがありつつも「もっとこういうふうにできる」っていうアイデアもすでにあるんですよ。逆に「ジャムで作る良さもあったよね」みたいなのも。だから「次回以降の作品ではこうしてみようか」みたいな話はもう出てるし。
— 満足はしているけれども、ブラッシュアップできる余地はまだまだあると?
澤村:逆に、もっと課題が見えちゃったみたいな。
高橋:ただ、次に進むためにはやってよかったと思いますね。