Leeの『101』を通して考える、僕らのスタンダード – Ovall –

by Atsushi Hasebe

2 / 3
ページ

受け入れられている曲って、周りの反応で気づかされるんです(mabanua)

Lee『101Z』
アメリカを代表する老舗デニムブランド、Leeのアイコンであり、最もスタンダードなモデル。
史上初めてジップフライが採用されたモデルで、そのストレートなシルエットは100年近く愛され続けている。

mabanuaが話すように、メンバー3人のベーシックな部分がちょっとずつズレたり重なったりしていることで、Ovallの楽曲には絶妙な化学反応が生まれている。その根底には、ジャズやヒップホップ、R&B、フォークなどのスタンダードなエッセンスが感じ取れる。

—Ovallが考えるスタンダードな音楽は、どのようなものですか?

mabanua:時間に淘汰されないものですかね。僕らだったら、ファーストアルバムを出してから8年が経ちましたが、今まで演ってきたものを聴いたときに残っているものがスタンダードな曲なんだと思います。

関口:それって、作ってるときには分からないよね。

mabanua:分からないねぇ。あとになって「今、これは演らないな」とか、「あぁ、ちょっと恥ずかしいな」って感じるものは……。

関口:スタンダードじゃなかったんだと思う。人に言われてみると「ちょっと奇を衒ったかな」とか「無理したかな」って感じるんですけど、作っているときには分からないですから。

mabanua:「イケてる!」と思ってるからね(笑)。

—ファーストやセカンドアルバムのなかでスタンダードだと感じる曲はどれですか?

関口:今、ライブで演っている曲は、たぶん僕らのスタンダードだと思うんですよ。”Take U To Somewhere”とか”mistakes”とかは自然とセットリストに入れたくなる曲だし、一方でお客さんの反応を見て「きた!」って感じる曲はスタンダードなんでしょうね。

Suzuki:オリジナリティとか、新しさとか、自分らしさを出すうえで、土台は変えずにグルーブやフレーズのアイデアを寄せ集めてひとつの方向に作っていった一例が”mistakes”なんです。それぞれのパーツはベーシックなフレーズなんですが、ちょっとしたスパイスとか構成が「あ、これってOvallらしいね」って感じてもらえるんじゃないかと思いますね。

mabanua:”mistakes”は全然推し曲じゃなかったし、スタンダードにするつもりもなかった。でもライブで演ると、お客さんがすごくいい雰囲気で聴いてくれてるって毎回感じられるんですよ。

関口:フジロックでもそんな感じがしたよね。

mabanua:受け入れられてる曲だっていうのは周りの反応で気づかされて、結果「これはスタンダードなのかな」っていう気分になってきたんです。音楽って「これだ!」って思っているものが周囲からは反応がなかったり、逆に「これじゃない」と思っている楽曲に反応があったりして、難しいんですよ。「今日はどんな曲を演ってほしいですか?」って聞くのもおかしいし(笑)。お客さんを裏切ったうえで「すごく新しいOvallのサウンドですね」って言ってもらうのもアーティストの使命だと思うし。そこはいまだに解決できないですね。

Suzuki:シンガーやラッパーをフィーチャリングすると、推し曲みたいになりがちだと思うんですけど、ライブだとメンバーで作った曲のほうが……。

mabanua:そうそう。お客さんにとってはそんなに関係ないんですよね。仮に自分たちがビヨンセをフィーチャーしたとしても、それがスタンダードになるかって言ったら絶対ならないだろうし(笑)。

Suzuki:ならない(笑)。

関口:バックバンドになっちゃう(笑)。

mabanua:そこが音楽の難しいところであり、面白いところですよね。

シンプルなニットと合わせても、101Zのシルエットの良さを体感できる。
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500)12,000円(Lee Japan TEL:03- 5604-8948)、crepusculeのニット 19,000円(OVERRIVER TEL:03-6434-9494)、IcebreakerのTシャツ 12,000円(GOLDWIN Customer Service Center TEL:0120-307-560)、COMESANDGOESのキャップ 9,000円(alpha PR TEL:03-5413-3546)、ptarmiganのモックシューズ 24,000円(face co.,ltd TEL:03-5738-1872)

—普段のファッションにこだわりはありますか?

mabanua:適度にラフに……っていう感じですね。「Ovallきてるよね、売れてるよね」って言われてジャケットとか着始めたらイヤじゃないですか(笑)。

関口:ステージもそうですが、旅が多いからあまりカチッとできなくて、ある程度、着心地の良いものを手に取りますね。あ、宣伝じゃないですけど、アーティスト写真でもLeeのTシャツを着てます(笑)。

mabanua:お店で自分が着たいと思って手にするものって、周りからすると「それ、持ってるだろ!」って感じるらしいんです。だから最近は「これ似合うと思うよ」って言われたものを、最初は違和感があっても着るようにしてますね。

Suzuki:カチッとしているよりは、ラフな格好が好きですね。そのほうが自然なので。最近は、奥さんに「これ、いいかもよ」って言われたのを着てますね。

—デニムを穿くことは?

mabanua:冬になるとけっこう穿きますね。

Suzuki:デニムって、ごはんに例えると白飯みたいな感じ。いちばんベーシックだけれど何にでも合うし、リラックスして穿ける。

mabanua:そういえば、ちょっと高めのデニムを穿いているときと、ファストファッション系のデニムを穿いてるときでは、友だちの反応が違うんですよね……。

関口:スタンダードなものほど、いいものって違いが出るんだろうね。蓄積が細かいところでものを言うんじゃないかなぁ。

Suzuki:楽器とデニムって似てますよね。初めから古い楽器を買うのもいいけれど、新品を買って弾きこんでいくと、自分の手の形とか剥げ具合とか、古くなるとそれが良くなってくる。リジッドのデニムを買って、穿きジワがついたり色が褪せていったりして味になるのがいいみたいな。自分色になって愛着が湧くのは楽器とつながります。楽器も、味を出したりダメージをつけたりするレリック加工があるんですけど、デニムのダメージ加工と同じ。そういうデニムの価値観とか感覚もいいなって思いますね。

—今後の活動について教えてください。mabanuaさんは8月29日にニューアルバムをリリースしましたね。タイトルは『Blurred』。ぼやけた……というような意味がありますが。

mabanua:サウンド的にもそんな感じにしました。ジャンルは限定したくないんですよ。エレクトロっぽさもあれば、ヒップホップ的な要素もあるし、フォークっぽさもある。境目がないので”滲んだ(=Blurred)”という意味のタイトルにしたんです。それに、インディーやメジャーを問わず、特定のフィールドで活動しているわけではない自分のスタンスも”Blurred”なのかなっていう思いもあって。

—Ovallとしてはいかがですか?

関口:今年はフェスへの出演がいくつかあります。あとは今、音源を作っている真っ最中ですね。

mabanua
ドラマー、ビートメーカー、シンガー。
さまざな楽器を操る他に類を見ないスタイルのアーティスト。プロデューサーとして100曲以上の楽曲を手がけ、CM楽曲や映画音楽の作品も数多い。Toro y MoiやThundercatなど海外アーティストとも共演も多く、2010年代のトレンドを作り上げたクリエイターの一人とも評される。この8月末にニューアルバム『Blurred』をリリースしたばかり。朝霧JAM 2018にも出演が決定した。
http://mabanua.com

関口シンゴ
ギタリスト、コンポーザー、プロデューサー。
ギタリストとしてChara、秦基博、矢野顕子など様々なアーティストをサポート。2015年には初のソロアルバムをリリース。iTunesオルタナティブチャートで2位となるなど各所で話題となる。ソロアーティストとしてもFUJI ROCKを始め大型フェスに数多く出演した他、アジアやヨーロッパでもライブ行い評判を呼ぶ。
http://shingosekiguchi.com

Shingo Suzuki
ベーシスト、キーボーディスト、プロデューサー、トラックメーカー。
2008年にリリースした1stソロアルバム『The ABSTRUCT TRUTH』はヨーロッパ各国のHIP-HOPチャートでTOP10入りするなど世界中で大ヒットした。矢野顕子からPUNPEEまで、ジャンルも多彩な多くのアーティストをベーシスト、プロデューサーとしてサポートする他、CMの楽曲も数多く手がけている。
http://shingosuzuki.com