—スタンダードな音楽については、どのように捉えていますか?
Kaoru:振り返ると、”いかにスタンダードではなく、いかにオルタナティブか”みたいなマインドが続いていたと思いますね。ただ、経験値が上がっていくと、スタンダードっていう軸があって初めて異端があることが分かるようになるんですよ。ハウスでもテクノでもどんどん細分化されていますが、ハウスを例にとっても、長い歴史のなかでいろんな部分が削ぎ落とされて今のカタチになっている。だから、実はスタンダードってずっと残っているし愛されているんだなって思いますね。そういったものへのリスペクトはあってしかるべきだっていうのは、40代に入ってから特に感じるようになりましたね。
—それは音楽以外でも感じますか?
Kaoru:服とかはそうですよね。僕は夏場以外、ほとんどジーンズしか穿いていないんですけど、デニムってスタンダードの極みですよね。洋服の世界も奥が深いので、ちゃんとしたことを言える立場にはないですけど、デニムって長い歴史のなかでいろんな部分が削ぎ落とされながらずっと残っているものだと思う。だから、最終的にはそこに戻っていくというか、大事さが分かって非常に重宝するものなのかなって思いますね。
—10年後や20年後も時代を超えて愛されるように……と意識して音楽を制作することはありますか?
Kaoru:いかに残せるか、残るかっていうことを考えるようになりましたし、今はそっちに向いていますね。時代感って結構大事で、自分自身はそのときに何が起こっているかを見ているし、体験もしているわけじゃないですか。なかでも音楽制作の技術はどんどん変わっていますが、その根本的な部分を自分自身がクリエイトできれば……っていうのは考えますね。新しいスタンダードを作れたらいいなって。
—今後の活動について教えてください。
Kaoru:創作意欲が高まっているので、今は曲をどんどん作っていくタイミングかなと思っています。ハウスとかテクノに特化するのではなく、もう少し電子楽器をフィーチャーしたり、友だちのミュージシャンに参加してもらったりしつつ、自分自身でアレンジもやりながら築き上げていきたいですね。そうすると今後、例えばフェスのような、クラブとは違う環境でプレイする機会も増えてくるんじゃないかと思いますしね。