—一方で、スタンダードな音楽については、どう捉えていますか。
荘子it:大学1年のとき、ジャズ研の集まりでスタンダードジャズをセッションしたんですけど、自分はパソコンを持ち込んでエレクトロな音を鳴らしてて、結局スタンダードにいけなかったですね。
—それは、なぜ?
荘子it:自分がやる必要はないな……って思っちゃったから。でも、キライとかではなく、むしろ由緒正しいものは好きですよ。スタンダードがあるからこそ、自分みたいにヘンなことができているっていう自覚はすごくある。逆に、自分みたいな音ばかりが世にあふれたら、スタンダードなことをやりたいですね。
TAITAN:カウンターとは違うんですけどね。
荘子it:別に、ひっくり返したいワケじゃないからね。むしろ、スタンダードジャズとかJ-POPとか、いい感じのR&Bとかが世の中にあふれてる情景はすごく好き。その中で、ちょっとしたひねりを加えたいってこと。「社会に不満でもあるんですか?」って思われがちなんですけど、決して不満はないです(笑)。
TAITAN:むしろ、握手するために音楽作ってますから。
荘子it:ヒップホップの曲を作り始めたのも、フリージャズとかプログレをガチで演っても、そういったジャンルが好きな人と仲良くなるだけじゃないですか。でも、それをビートの上に乗せると、それまで自分が関わることがなかったカルチャーの人たちと仲良くなれる。そういった人たちとの接点を見い出すために、ヒップホップはすごくありがたいツールでしたね。
TAITAN:日本にも僕らの音楽を好きでいてくれる人はいたんですよ。でも、そこに浸かっちゃうと、いつまで経ってもクローズドな空間でやらざるを得ない環境ができちゃうと思って。だから、アメリカで発信することを考えたんですよ。「海外のこういうレーベルから日本人が出ました」っていうほうが、みんな聴いてくれる可能性が高まるし、いろんな人と握手できますからね。
—普段のファッションはどんな感じ? デニムはオーバーサイズにこだわっていたけど、それはどんな理由から?
TAITAN:昔はファッションにはこだわりがなくて、普通の格好をしていたんですけど、ヒップホップを聴き始めてからオーバーサイズのスタイルには強く影響を受けましたね。機能としてもいいし、なんかザコい考えですけど……デカくなったような(笑)。歩いて揺れる幅が大きいと存在がデカくなるみたいな、些細な効果も含めていいと思いましたね。それに、僕はなで肩だし、人に見せられるような体型じゃないんで、それをごまかせるのはファッションの力だなって思います。
荘子it:もとはスラムに住んでいる子どもたちが大人になっても着られるようにデカい服を買い与えられたことが発端ですよね。それを古着屋でオーバーサイズがカッコいいから買うっていう、全然違う意味合いになったのは面白いですね。だから、自分がオーバーサイズのコーディネートをするときは、それを頭の中で反芻して「オレが今、オーバーサイズを着てるのもスラムの家庭が子どもに服を買い与えていたからなんだよな。でもオレが、こんな飽和した日本でこんなものを着ているのは何の関係もないよな」って考えるのは好きですね(笑)。
TAITAN:音楽にも共通してるけど、パンチがあるものが好き。
荘子it:自分は、そこにロジックが欲しいかな……。
—今後の活動について教えてください。
荘子it:8月にはアルバムが出ます。ちょうど今、illicit tsuboiさんにミックスしてもらっていて、間もなく上がってくる感じですね。ライブは、先日『La Magnifique Society』っていう、フランスのランスで開催されるフェスに出たんですが……そのあとは特に決めてないですね。ちょいちょい個人名義でビートライブはやるんですけど、Dos Monosとしてはおいおい決まってくると思います。
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