Photo: Takahiro Otsuji(go relax E more)、Styling:Hisataka Takezaki、Hair&Make-up:Naoyuki Ohgimoto、Model:odol、Edit:Atsushi Hasebe、Text:Marina Haga
—はじめに、odolの2人が音楽を始めてから今に至るまで、軸となっている音楽感があったら教えてください。
森山公稀(以下、森山):ミゾベとバンドを始めてここ8年間ぐらい大切にしてきたことは、新しいこととポップであることを両立させるということですね。スタンダードなミュージシャンといえば、The Beatlesが挙げられることが多いと思うんですが、彼らも革新的かつポップさがあったからこそ、スタンダードとして根付いたのかなと思っています。
ミゾベリョウ(以下、ミゾベ):あとは、音楽を始めた高校時代からずっと森山が隣にいたってことが自分の中で結構当たり前になっていて、これもある意味自分の軸となっている気がします。独りよがりで作っているのではなく、森山と一緒に作ることでodolのバランスが保たれている感じはありますね。
—2人の関係性が、ずっと変わらないスタンダード的なものであるかもしれませんね。具体的にポップさをどう表現しているのでしょうか。
森山:まずひとつは「歌っていること」ですかね。これはかなりポップな要素だと思っています。人の声で言葉を発すると全然意味のない単語の羅列でもストーリーを連想してしまうし、どんなに前衛的なサウンドでも言葉があるだけで聞きやすくなるっていうのはあるのかなと感じていて。ただポップにおいてこれだけは外せないみたいな具体的なプロセスがあるわけではないので、ポップだと思って作ってどこかで違うと感じたら途中でやり直したり、手を動かしてやっと形になってきている感じがします。
—それでいうと先日発売した1st EPである『視線』はポップだったということでしょうか。
ミゾベ:そのポップさが必ずしもサウンド的なところかっていうのはまたちょっと違うんですが、伝えようとする気持ちがあってそこがポップさの根源みたいになっているのかもしれません。
森山:実際に人々の生活に馴染んでいく様に伝える気持ちで作ることは、精神的な意味でポップな気がするんですよね。
ミゾベ:もちろん歌詞もなんですが、サウンドも含めて誰かが聞いてくれるということとその人がどういう感情になるのかっていうことを、以前よりも意識して作ったのがこのEPでして。前作の方がサウンド的にはポップかもしれないですが、今回の方が精神的にポップさを極めた作品だと思っています。
—いい話ですね。曲作りはどの様なプロセスで行っているのでしょうか。
森山:基本的に、僕が作ったメロディーラインにミゾベが詩を乗せていくのですが、メロディーを作る前の段階からあえて曲について議論しなくても日頃のお互いのモードを自然と感じ取ってそれを音にしていることが多いです。あとはそこでもし足りない要素があれば、メロディーを渡す時に言葉で意図などを伝える様にしています。バンド全体と聴き手の空気感みたいなものから、こういう音が今の気持ちにフィットしているなっていうのを組み立てながら、合致したところで一旦手を止めるみたいな作業の繰り返しですね。
—odol TOUR 2017 “視線”が終わったばっかりだと思うのですが、2014年にフジロックで『ROOKIE A GO-GO』に出た時から変わったことなどはありますか。
森山:当時は、同世代なら誰にも負けないってくらい音源へのこだわりがあって、絶対1番いい音源が作れてると思ってたんですけど、その分ライブへの意識が低くて。『ROOKIE A GO-GO』に出演してかなりショックを受けました。
—その年はちょうどSuchmosが出ていた年でしたよね。
ミゾベ:そうなんです。その時のSuchmosのパフォーマンスを見て、「バンドやめるか!」くらいの衝撃を受けました。当時、活動年数やSNSのフォロワーが似たような規模感だったので安心しきっていたのですが、格の違いを目の当たりにして「これはアカン」となりました(笑)。
森山:それからライブパフォーマンスに対してもいろいろ試行錯誤して、最近やっとライブという作品を作る楽しさにのめりこめるようになってきたんです。これまでは、いかに丁寧に純粋なまま音楽を形にできるかということの方を重要視してきたんですが、ここ1年ぐらいでお客さんと僕らと音楽があって音楽がその場で急成長していく感じを実感できるようになったので、もう少し人にフォーカスできるようにになったかもしれません。
ミゾベ:多分初期の頃は、あまり自分たちの音楽を聴いている人の顔が分からなかったのが、最近は聴いてくれる人がいるのがしっかり分かる様になったのでそれがかなり大きいのかなと思っています。
—では、これから先もバンドの軸として持っていきたいことはありますか。
森山:1stアルバムを出したのが今から2年前なんですが、ポップであるということはその時から言い続けてきたことで。そのポップの定義がようやく今ぼんやりと見え始めているので、そこをより明確にして誠実に突き詰めていきたいです。そこをodolのスタンダードにしていければいいなと。実験的だったり、革新的なことは僕らの興味によるところなので比較的簡単にできるんですが、聴き手のことをちゃんと見て理解するということや、誰かのことを想像するということをきちんと丁寧に続けていきたいです。
—2人は中学の時からの同級生とのことで、2人の関係性で当時から変わらないことってありますか。
ミゾベ:僕らは中学2年生の時からの仲なんですが、バンドを始めた時から仕事仲間的な付き合い方だったんですよね(笑)。
—といいますと?
森山:普通友達だったら、関係を維持することにパワーを使うじゃないですか。でも、もう”音楽を作る”という同じ目的があるので、必要なことだけを発言して余計な話はしないみたいなところがあるんですよね。
ミゾベ:適度に距離感があるんです。僕の人生で1番仲良い友達は森山なんですけれど、”友達”としての森山と”音楽の場”での森山は無意識に分けていて。例えば、高校生なら友達同士で好きな子の話とかするじゃないですか。でも森山にはしないし、彼女ができたことも何ヶ月か後に”友達”として接するタイミングでいったりするんですよ(笑)。
森山:基本会うときは音楽のことで会うので。
—ベテランの漫才コンビみたいですね。モードが自然と切り替わっているわけですもんね。
ミゾベ:でも曲を作る時の赤裸々な気持ちとかは森山以外の人にはいいたくないとかはあります。逆に森山には100%さらけ出せますし。
森山:そうですね。曲作りってお互いをさらけ出さないとうまくいかないじゃないですか。そこに恥やプライドでストップをかけるよりは、衝撃的なことでも、それは作品のために還元していかないとなと思っています。
ミゾベ:これが今だからではなく、当時からこういう関係なのが不思議ですよね。森山には、100いったら200ぐらい理解してもらえるのは分かってるので、曲作りも同じなんですが、必要ないことはあんまりいわないんですよね(笑)。
—ミゾべさんはデニム好きと伺っているのですが、デニム遍歴について教えてください。
ミゾベ:中学生の時に、親に買ってもらって穿いたのがきっかけだったんですが、そのうちいろいろなデニムを調べる様になって。Leeもですが、それぞれのブランドのキャラクターや特性を、高校3年生ぐらいまでにひたすら調べたりして。
—高校生ですごいですね。当時、どの様なデニムを集めていたんですか。
ミゾベ:自分が服を選ぶ動機のひとつに”他人と同じ服を着たくない”というものがあって、1番スタンダードなアイテムであるデニムなのに人と被らないのは、ヴィンテージだと思ったんですよね。だからLeeをはじめヴィンテージを徹底的に掘っていきました。ヴィンテージのデニムは色がすごく良くて。逆に、シルエットはどんなものでもサイズ次第でかっこよく穿けるので僕は色を重視しています。
—では、森山さんは自分の軸となる様なスタイルはありますか。
森山:ただ奇抜だったり新しいというところで人と被らないというより、形はスタンダードでも生地やディテールでさり気なくひねりがあるものが好きですね。あとは、服に限らず音楽もなんですが、好きなアーティストや俳優が着ていたら今まで許せなかった着方や服装が許せる様になることがあるじゃないですか。YMOが着ているからかっこいいとか。ミゾベも純粋にそう思える1番近い存在ですね。
ミゾベ:価値観とか美学を信じているからこそ、その選択やこだわりを信頼できるんですよね。
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