Kazumiに訊く、『Richardson』とセックスパーティーの話

by Saori Ohara and Keita Miki

1998年に、アート、セックス、カルチャーを探求する過激なインディンペンデントマガジンとして創刊した『Richardson』が、今秋12号目のA12を刊行。”California Issue”と題した最新号には、カリフォルニアに紐づく夢とエロスとアートとジャーナリズムが詰め込まれている。
中でもカリフォルニアのセックスパーティー特集は、Instagramアカウントのフォロワーが100万人を優に超えるアダルトコンテンツクリエイター・Kazumiと、セックスジャーナリストのKarley Sciortino(カーリー・シオルティーノ)の対話を軸に、グループセックス界隈にまつわるノウハウや体験談が掲載されており興味深い内容に。
全篇英語なのでありのまま楽しむにはややハードルが高くはあるが、親日な発行人兼編集長・Andrew Richardson(アンドリュー・リチャードソン)は、A12の日本ローンチを盛り上げるために来日し、サイン会を敢行。その傍らには、アダルトコンテンツを発信する傍ら、セックスパーティーのホストもこなすKazumiも登場し、会場となったアートフェアのHi Bridge Booksブースは比類なき盛り上がりをみせた。
今回、Masteredはグローバルなポルノスターの来日に際し、サイン会の会場であるEASTEAST_TOKYO 2025に赴き、セックスについて、『Richardson』について、Kazumiに独占インタビューを実施。日本からはなかなか伺い知ることの出来ない、LAのリアルなポルノ事情、セックス事情を話してもらった。

Photo:Akiharu Ichikawa | Interview&Text:Saori Ohara | Edit:Keita Miki | Special Thanks:EASTEAST_TOKYO 2025, Hi Bridge Books

— まず自己紹介をお願いします。仕事の肩書きとか、好きなこととか、なんでも。

Kazumi:ハ~イ、カズミです。私はアダルトエンターテイナーです。それが私のやっていることすべてを最も包括している言い方だと思います。私はほとんどの人から”ポルノの人”として知られてると思うんだけど、実際はアダルトシーンの領域全体に関わってる。拠点はロサンゼルスだけど、かなりデジタル・ノマド的な生活をしてるから、ひと月に数回ずつしかロサンゼルスにいないこともザラで、ほとんど常に旅をしている感じ。あとはそうだな、水瓶座で、バレンタインデー生まれで、あと丑年。だから勤勉でちょっと変わった人間なはずです。あ、何が好きかって? 私は人が好き。「People are the best books(人は最高の本)」だっていつも言ってるんです。だから他人を知ることは大好き。さっき丁度、アートフェアでヨーヨーをやってるグループに会ったから、私の頭の中は今ずっと「彼らにDMして、今夜何してるか聞かなきゃ。彼らとハングアウトしたいし、どうしてそんなにヨーヨーに夢中なったのか聞きたい」ってそればっかり考えてます。

— Kazumiは本名?

Kazumi:ううん。Kazumiはステージネーム。本名はユニセックスな名前で、私はフィリピン系だから苗字はヒスパニック寄りなの。たけど、見た瞬間にアジア系だってわかる名前にしたくてKazumiにしたんです。

— 今のキャリアを始めたきっかけも教えてください。

Kazumi:前職はマーケティングのエグゼクティブだったんです。その前はフィルムスクールに通ってました。でもその前から、セックスパーティーシーンというか、LAのセックス界隈にはいました。19歳のときに初めてセックスパーティーに行って以来、もう10年ぐらいになるかな。で、コロナ禍で全部がまとまったというか。リモートでできる副業が欲しかった時期にOnlyFansという選択肢を見つけて。セックスも好きだし、マーケティングも好きだし、撮影も好きだし、ピッタリ!って感じで。

— アダルトコンテンツではカメラの前に立つだけじゃなく、撮影の裏方とかもしているってこと?

Kazumi:そう。OnlyFansで気に入ってるのは、自分好みの性的ファンタジーを自由に作れるし、人の注意を引くための奇抜なマーケティングを思いついたら、そのまま全部実行できることなんです。私はポルノのために生まれてきたって感じるくらいだから、本当に天職なんだと思います。「ポルノをやるか迷う」って言う人には、「迷うくらいだったらやめときなよ」って言いますね。だって私には全く迷いがなかったから。ポルノをやる前から既に何百万ドルか稼いでたけど、それでも「ポルノをやりたい」と思ったからやってる。必要に駆られてとかじゃなく、純粋に自分の自由意志でやっているんです。

— Kazumiさんもカリフォルニア出身ですか?

Kazumi:生まれたのはクウェート。サウジアラビアの近くですね。でも、LAネイティブ。生後間もなくLAに来たから、ロサンゼルス出身です。LA育ちだし今もLAベース。移住者のつもりは毛頭ないですね。時々人に悪気なく「アジア人っぽくないね」とか言われるんだけど「それ、私に二度と言わないで」って感じ。私は完全にアジア人だから。同時にアメリカ人でもあるけど。

— あなたにとってカリフォルニアとは?

Kazumi:そうですね、ロサンゼルスに来て文句ばっかり言う人って割と多い気がするんですけど、正直そう言う人たちにはもっといい友達や、ちゃんとした境界線が必要なだけだと思います。私はLAで育ってきたし、友達は昔の同僚やルームメイトとか、仕事関係じゃない人ばっかり。その中で努力したり成長したり成功したりしてる人たちを見てきました。私にとってLA……というかカリフォルニアって夢の土地なんです。いろんな夢が叶う場所で、何でも実現できる場所やコミュニティがある。どんなに小さな集団でも大きな集団でも、それぞれがちゃんと表現したり主張できるし、多様なコミュニティを作り出す能力がある。どんなに風変わりな人生でも、存在しないなら自分たちでその居場所を作るっていう気質が、カリフォルニアの人たちにはあると思うんです。

— Kazumiさんが知っているLAのセックスパーティーシーンのことについて教えてください。そもそもどんなものなのか。

Kazumi:10年近くLAのセックスシーンに関わってきて、あらゆるタイプのセックスパーティーを経験してきました。ボウルにコンドームが山盛りに入ってて、床にマットレスが置いてあるだけ、みたいなパーティーもあれば、『Eyes Wide Shut』みたいな、全員タキシードと仮面を付けて、NDAにサインして、みたいなパーティーもあるんですよ。ミステリアスな雰囲気づくりとか演出が好きな人がいるのもわかるんだけど、私的には、観光客じゃないし、演出を楽しみに行くわけじゃないから、もっと直接的なのが好きなんですよね。裸で肌と肌を重ねるダイレクトさとか、ダイレクトにエロい会話とか、クレイジーでグライミーなパーティーの方が好き。だって私はファックしに行ってるんですもん。私は昔、Gangbangもやってたんです。イベントに申し込んで、ホテルとかに行って、100人くらいの知らない人たちとファックするっていうやつ。それって、誰かに頼まれたり強要されてする事じゃないですよね。私はただ、やりたくて楽しいからやってたんです。それに対して批判的な視点を持つことはないですね。こういうテーマをメディアで扱うと、人はすぐ「汚い」とか「自分はそんな下品じゃない」みたいに上から目線な反応をしますよね。でも性欲って人間として、生き物としての機能や体験の一部だし、私はその快楽と本能に身を委ねてるだけなんです。だから責められたりジャッジされる筋合いってないですよね。

— 仰る通りだと思います。自分でもセックスパーティーを主催するって書かれてましたけど、どうやってやるんですか?

Kazumi:LAのセックスパーティーってちょっと特殊なんです。ヨーロッパだと普通にクラブがあって、Googleマップで調べて行けるし、日本でもほら、ハプニングバーってあるじゃないですか? でもLAはもっと口コミというか人伝てで、秘密主義な感じ。場所を確保したら、そこからは雰囲気づくりと人選。Feeldとか他の出会い系サイトで人を探して、何度か会話して、安全な人か、実際に興味とやる気がある人なのかどうかを確かめる。それから家具やベッドの数を整えて、いい空気を作るんです。今年のハロウィンで行ったセックスパーティーなんて、何百人もいるのに寝室が2つだけで、「は?何これ?」って感じだったんですよ。だからそう、ベッドの数は超重要。

— あなたにとってAndrew Richardsonってどんな人?

Kazumi:本当に不思議な生き物(笑)。実は私とヤりたいんじゃないかなって思う事もあって面白いです(笑)。初めて会ったのは数年前で、Pornhubと空山基のキャンペーンの撮影時。私はモデルで、彼がフォトグラファーだったんです。その時「この人は一生の友達になるな」ってすぐわかりました。彼に時々「君にはもっと深い部分があるはずだ」みたいな事言われるんですけど、私はすごく自然体でこういう性格なだけなんですよね(笑)。でも彼はいつも私の味方だし、インスピレーションを与えてくれる存在。変なジョークと風変わりなオーラの奥には「変わったコミュニティやユニークな人たちをきちんと紹介したい」、「既存の価値観に挑戦したい」、「奇妙で面白い人たちに光を当てたい」っていう強い意志を感じる人です。私はどんな場面でも情熱がある人や、自分自身であろうとする人が好きなんです。

— もし自分が『Richardson』のエディターだったら、どんな特集を作りたいですか?

Kazumi:今回のセックスパーティーみたいなニッチなサブカルチャーを掘る流れの延長で「どこまでが許容されるのか」みたいなラインの考察をしたいです。尊厳とか「尊敬に値する存在」みたいなものは誰が作って、誰が守って、なんでそうなるのかっていう特集です。例えば、私はGangbangが好きだけど、魅力的で経済的にも成功してるからリスペクトされやすい。でも、無名の路上の女の子が1ドルで500人とギャングバングしてるとしたら、その子はリスペクトされる? みんなそれぞれ境界線があるけど、それってどこまでが「いきすぎ」なの? そもそも「いきすぎ」ってあるの? それとも全部、個人個人の許容範囲の問題? でもそれってどんな影響で差が出るの? とか、そういうのを深掘りしてみたいですね。

— 東京にはよく来るの?

Kazumi:日本には年に2回くらい来てると思います。今年も既に東京と大阪に行ったし、日本は全部好きです。ウィアブー(オタク)的な意味じゃなく。自分が作りたいものを表現できるし、ありのまま存在できる感じがLAとも似てると思うんです。公共に迷惑さえかけなければ好きなことをとことん追求してもいいっていう空気感があると思います。

— 日本の縛りとか緊縛も好きだと伺いました。

Kazumi:大好きです。昨日も友達で緊縛アーティストのBeniのショーに参加しました。すごくキュートな体験でした。

— 最後に、セックスが上手な男性と下手な男性の見分け方があったら教えてください!

Kazumi:自分に自信がなくて不安定かどうかでもわかるし、話を聞かない男かどうかでもわかります。相手に奉仕する気持ちがあるか、気持ち良くしてあげることに興味がないかっていうのは態度にも出ます。セックスが上手い男性って細部に気を配るし、同時に自分の何かを証明したり誇示しようとしない特有のオーラがあるんです。うーん、まぁそう言う私も、自分がセックスが上手いのかもよくわからないですけどね(笑)。証明することでもないって思うし。相手とのケミストリーみたいなことは体験しないとわからないし、体験してもわからなければそれはそれです。セックスって一種のエネルギーの交換とか交流だから。