特別インタビュー:高橋盾(UNDER COVER)

by Mastered編集部

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— そこはきっとジョニオさんのコアだし、それが見えたからこそすごく強いショーだったと思うんですよね。ワッじゃないですけど、映像を通してでも鳥肌立つっていうか。お客さんの息を呑むようなワーっていう声も入ってたしね。

高橋:それが俺はあんまり思わなかったんだよね、リハ見て。

— 本当ですか?

高橋:それはやっぱり自分でしか分かんない部分で、“間”とかいろいろある。一生懸命作っていい服ができたと。それをモデルに着せてオッケーってなって。でもそれが会場行って、リハを見たら……。たとえばアーティストがいてミュージシャンがいて、リハはよくて、アルバムもすごくよかったんだけど、ライブはどうだったっていったら人によって感想はいろいろあるじゃないですか。それと一緒で、舞台としてのクオリティーっていう部分で洋服とのバランスっていうのがイマイチだったなっていう感じがある。

— 自分でやっていて思い描いているところとのギャップっていつもあると思うんですけど、その都度よかったときとそうでもないときとあって、それらと比べてもギャップがある方だったんですか?

高橋:うん。そのときにすごいよかったと思うショーでも、今考えると全然ダメだっていうのも沢山あるし、逆もいっぱいある。そのときダメだなーと思ったショーでも、いま思い返すとすごい好きだとかもあるし……だからなんだろう。それはちょっと時間が経たないと分からなくて。結局、そう考えるとデザインですよね。もしかしたら世界観ではないのかもしれない。服として自分が良かったかどうか。だから、俺が「あのときのショーがよかった」っていうよりかは「あのときの服が好きだった」っていうのしか残らないタイプなのかもしれない。でも最近は、「あのときのショーがよかった」っていうものを作っていきたいなっていう気持ちがある。だから今回はリハで見たときにすごく「ああ、服だな」って。

— (笑)。

高橋:なんかもっと違うもののはずだったんだけどなっていうのも結構あって。それを舞台でお客さんに出したときにその場で耐えられるものなのか。それは負けてる作品もいっぱいあったし。

— へえ。そう見えてるんですか。

高橋:ああーこれはまずいなっていうか。あと演出で、あの間が長すぎるとか。若槻(善雄/演出家)さんと、「あそこもっと早く出せないですかね」って。今回モデル6人だったんだけど、3人3人で。「盾くんそれ分かるけどそしたら裏間に合わないよ」と。「そうですよね」と。そういう話が結構あって。終わってもなんかバックステージ来る人の数とか結構少なくて、どうなんだろう、やっぱりだめだったかなっていう感じですごく落ち込んでたんです。でも次の日のレビューとかいろいろ見てると、なんかすごくよく書いてあるし自分で伝えたかったこととかみんなが待っててくれた感じとか、そういうものがすごく伝わってきたので安心して、ああよかったんだなって思えた。やっぱりそれは発表する分何かしらお客さんに見せたいっていうことで始めてるんで、人の言うことなんかどうでもいいっていうことはなくて、正直ものすごい気になるし。

— いやそれはもう見せる以上、どう受け止められるかは気になって当たり前ですけどね。だけどああいう思い切った、強いショーが今なかなかないっていうのもあると思うんですよね。ジョニオさんが、[UNDER COVER]が戻ってきたということと、ああこんなショーが見れたんだっていうような感動と、全部合わさってたような気がしますけどね。

高橋:そこを思うとやっぱり待っててくれた人が沢山いたんでそれはすごくありがたいし、やってきてよかったなって。逆に毎回そうだけどハズしたらまずいなっていう。

— いやだからそのプレッシャーたるやすごいですよね。

高橋:だから楽しんではやってたんだけど、結局ショーの前とかもう何週間くらい前からか知らない内に具合悪くなっちゃって。終わったらすっとそういうのもなくなったんだけど、結構具合悪くて。首、肩周りがもうがっちがっちのえらい状態になってて。でも全然やりたくないとかそういうのじゃなくて、もう「やるよ!」っていう感じなんだけど。余計力入っちゃってたのかなって。

— やー、力抜いては無理でしょうね。

高橋:難しいと思うよね。力抜いたら力抜いたものしか出てこなくなりそう。力入ったものがいいとは思わないんだけども、ある程度力を入れるというか魂が入ってないと人を動かせないなっていうか。身を削るっていうか、そういう思いでやったものしか。やっぱりなんでもそうだけど、中途半端なものを見てもしょうがないし。まあやればやるだけなんか、厳しい世界だなっていうか。

— でもそうですよね。15分ですからね。あの一回にそこまで注ぎ込むわけで。

Photo by René Habermacher

Photo by René Habermacher

高橋:でも昨日Facebookにアップしたけど、友達のレネRene Habermacherっていうフォトグラファーが撮った写真とか。物撮りっていうか、作品として写真を撮ってもらったんだけど。

— あれ綺麗でしたね。

高橋:めちゃくちゃ綺麗だった。あれを考えると、15分だけじゃなくギャラリーとかで服を作品として見せるっていうのもすごくいいなと思った。それに耐えうるものであれば、絵とかと一緒に、写真とかと同じ感覚で見てもらいたいなっていうのはありますね。それがいい写真に収まってたら余計にすごいパワーがあるんだなっていう。

— やっぱり本来は洋服自体が作品であって、ショーはショーっていう一つの見せ方ですからね。写真っていう違うメディアでの見せ方もあるだろうし。けどやっぱりショーでしかない何かカタルシスもあるわけで。

高橋:まあライブ感っていうか。それはやっぱり一個のエンターテインメントとしての要素が強い。ショーをやるからにはやっぱりそこの完成度っていうか精度を上げていきたいな。だからもうちょっと一体感っていうか、モデルとかも含めて、もっと話し合う必要もあるのかなって。自分の表現したいものっていうか、舞台として、ショーとしてどういうことがやりたいかっていうのを次からもうちょっとコミュニケーション取っていくことも必要かも。そういう感じが今回すごくあった。見せるからにはやっぱりその世界観をモデルも構築しないと。着て出るのはモデルなんで、やっぱりモデルとのコミュニケーションが必要かなって。

— そうですね。舞台にあがるのはモデルなわけで、役者みたいなもんですよね。

高橋:そうそう。だけど役者じゃない。モデルだから、そういう要素を持ってるモデルじゃないと。でもそれはそういうやり方はしてるんだよね。どれだけ頭が働くかとか表現できるかっていうのは、オーディションで歩かせれば分かるわけで、そういうモデルしか選んでない。でもそこに対してもうちょっと、「ここはこういう世界観で俺はこういう表現をしたいんだ」っていうのを説明するべきなのかなっていう。ショーでこういうことを表現したかったんですよっていうのを、見てくれた人に後で言う必要はないんだけど、表現する人には伝えないといけないことだなって。だからそれは次の課題だなと思ってる。

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