ストリート経由のミックス感覚
— ウェスタンを最初に意識したのって、いつ頃だったかって覚えてます?
片庭:渋カジじゃないですかね。そこでウェスタンを知りましたね、おそらく。
それこそ浅野ゆう子さんじゃないですけど。
(一同笑)
片庭:結構自分のなかではショックでしたね、あのスタイルは。で、その後に銀座のラルフ・ローレンのショップに行ったら、本当にそういう方がいて。あと高架下のシップスにもそういう方がいて(笑)
そういうのはかなり覚えてますね、子どもながらに。シップスはもっと後になるんですが、銀座のラルフは子供の頃親父に連れて行かれまして…。
— いつ頃だったか覚えていますか?
片庭:小学校5〜6年生の頃ですかね。
ショップ内に生花、大きな花が飾ってあって。あぁいう典雅なものっていうのは映画の世界だけだと思ってたんですよ。マホガニー色の内装とか、今までまったく触れたことがなかったんで。そういう意味ではやっぱりラルフ・ローレンですかね、ウェスタンっていうものを知ったきっかけは。その後にランチウェアとかRRL だったり。そういうスタイルを知ったのもラルフ・ローレンだったのかなぁ。大きいですね。
あとはラングラーが好きっていうのも。最初は「人と違うものを」っていう入り口だったんですが、ラングラーだけヴィンテージでも(あまり人気が無く)安めだったので、競争も少なくて済んだんですよね。でもそこには何かしら後付けの理由を付けがちで。「ラングラーだけ両方巻いてるからイイんだよ」とか、まるで自分が作ったモノかのように。
(一同笑)
— マーベリック(Maverick)とかは行かなかったんですか?
片庭:あのヒップポケットのステッチが「M」なのが、あんまり…
(一同笑)
— 僕は一時期行きかけましたよ(笑)あれも安かったから。全然似合いませんでしたけど。
片庭:それはスタプレやブーツカットの話と一緒で、穿きこなせればイイんですが。それほどの自信はないから。
でも、もっとマニアックな方に突き進むようなタイプだったら、違う感じのお店だったり違う仕事をしてたでしょうね。
なんとか専門店とか。
— ちょっと意外なのは、割とマニアックな商品が多いイメージのあるネペンテスのなかで「僕は自信がない」っていうのがおもしろいなぁって。
片庭:基本的にすごく詳しい人がいると「そうなんですね」って比較的柔軟に受け入れますよ。
すごく知ってる人の前であんまり下手なこと言うのって、一番カッコ悪いかなって。
あんまりマニアック過ぎるのも、逆に幅が狭まってしまうんじゃないかなって。怖いと言いますか。
— でも、マニアックに振り切りそうだったところを、片庭氏の世代がうまくバランスを取っている気はしてるんですけどね。
片庭:それがミックスカジュアルというかストリートというか。もう一度言いますが渋カジというのがミックスを生んで、その前はVANとかみゆき族とか、(マニュアル的で)分かりやすかったんですよね。
その後の北村さん(編集部注:スタイリスト北村勝彦氏)の「ワイルドシック」や「ミスマッチ」っていうスタイルは今でもリスペクトしてますが。ミックスやハズしのパイオニアですから。
でもストリートが細分化の走りだったし、細分化したからこそ原宿・渋谷の先輩方が個性を発揮できたと思うんです。だから今も全然古くないですしね、アップデイトの仕方が。ちゃんと自分のところを押さえるのと取り込むのとが巧いから。それぞれがきちんと記号になってるので、そういうのを見てると『あぁなりたいな』とか『これがイイな』とかを感じますね。
小木くん(編集部注:Liquor,woman&tears ディレクター 小木基史氏)なんかもうアイコンだから、ああゆう自己表現って重要だと思いますし。自分では絶対出来ないですけど。
(一同笑)
— 最後に、ちょっとだけ別の話を。
最近も若手のスタイリストとかと飲みに行ってるんですか?
片庭:最近は大御所と飲みに行ってますね。貧乏性じゃないですが、どうせこの業界に入ったなら触れてみたいっていう方はたくさんいますから。そんなことするの他にはなかなかいないでしょうし。
— そういう席を設けるのは、すごいですねぇ。なかなかやれないっていいますか、勇気いりますよね。
片庭:でも目指して入ったからには、やらないとなって。
— その場での会話とか、となりの席で聞いてみたいですよ。
それでは最後の質問なんですが、最近何か買いましたか? それは服以外でも結構なんですが。
片庭:全然買ってないなぁ……。あぁ、でもSONYのノイズキャンセラのイヤホンは買ったかな。
— それはiPod用にですか。ちなみに最近は何聞いてるんですか?
片庭:デトロイトテクノですかね。結構集中的に聞きますよ。その前の前の月は現代音楽しか聞かなかったですし。来月辺りはサウスロックかなと…
— (笑)その転換は何がきっかけで起こるんですか?
片庭:全部好きだから、なんとなくですよ。飽きてきますよね、ヒップホップばかりとか聞いてたりすると。その間はそればっかり聞いてるんですが。
で、iPodの中身が全部変わりますね。総入れ替えします。
— 新たに足すのではなくですか? わざわざ抜いてしまう?
片庭:抜いちゃいますね。カードケースなんかでもそうなんですが、必要に応じてカードを出し入れするんで、使わないときは抜いちゃってます。
その感覚がちょっと違うんだと思います。
— それはすごいなぁ。僕の場合は突発が怖いので、つねに常備してますよ。他の方でも、圧倒的にそういう人が多いと思いますけど(笑)
他に何か買ったものは?
片庭:他には買ってないですねぇ。あぁ、アメリカのニューバランス(New Balance)ショップで、ウェア一式を買いました。
— それはジム用にですか? まだ継続してたんですね?
片庭:ずっと行ってますよ、週一くらいのペースで。あとクリスマスとか、お盆とかに行ってます。
(一同笑)
— そういうときって誰がいるんですか?
片庭:結構いろんな方がいますよ。そんな感じがおもしろかったり。日曜日の朝のヨガ教室とか、やりませんけど見てるとおもしろい。
— なんだか意外ですね。でもこのままだとくだらない話にまで発展してしまいそうなんで、この辺で(笑)
ありがとうございました。
実際はこの後も、出張時の話などなど結構プライベートな話題にも触れたんですが、それは割愛(笑)
しかし、普段雑誌などで見せる一面とは異なる片庭氏が見れたのではないでしょうか?
そして小木氏に引き続き、やっぱりきてるんでしょうか、ウェスタンな流れ?
もしホントにきたら、片庭氏はまた違う何かに変化してしまうんでしょうけど…