GUILTY PARTIES SOUND INC.〜Gaz Mayall&Baby Soulを招いた[WACKO MARIA]初の主宰パーティーを徹底レポート!〜

by Mastered編集部

2 / 3
ページ

音楽の街、ロンドン。先日、ロンドン五輪の閉会式に登場した錚々たるメンバーを思い出してみると、そのイメージはより具体性を帯びてくると思うが、そんな世界中の誰もが認める音楽の聖地で、Gaz Mayallという1人の男が実に32年もの間、1つのクラブイベントを続けている事をご存知だろうか?

自身の名を冠したこの『Gaz’s Rockin’ Blues』というパーティーはこれまでに数多くのアーティストに影響を与え、近年の世界的なスカ・リヴァイバルを語る上でも欠かすことの出来ない存在となっている。また、ギャズ自身もここ日本ではFUJI ROCK FESTIVALにおいて、今は亡きあのジョー・ストラマー(Joe Strummer)と並ぶ盛り上げ役として広く知られる存在だ。そんな男の中の男、Gaz Mayallに音楽、パーティー、男の作法について聞いてみた。

僕は若者が好きだし、どんなジャンルにおいても“次の世代“っていうのは常に出てくるべきだと思うんだ。

— まずはFUJI ROCK FESTIVAL、お疲れ様でした。Gazは今回で実に7回目のフジロック出演だったそうですが、今回のステージ、そしてフェス全体の雰囲気はいかがでしたか?

THE TROJANSのアルバム『CELTIC SKA』


Gaz:今回も例に漏れず、最高だったね。フジロックは1999年に初めて出演して以来、ずっと大好きなフェスティバルだよ。たしかにもう7回も出演しているから、言うならば体の一部みたいなものだね(笑)。
そんなフェスティバルはグラストンベリー(英国・ピルトンで開催されている世界最大級の野外型ロック・フェスティバル)とフジロックぐらいのものだよ。ステージに関してはお世辞抜きに今までの中で最高の出来だったね。本当に最高だったんだ。前回日本に来られなかったルーディー(The Trojansのオリジナルメンバーである御年82歳の名サックスプレイヤー、Rudy Jones)を連れてくることが出来たし、彼のお陰かは分からないけれど、天気も最高(笑)。
とにかく暑かったけど、誰一人途中で演奏を止めることは無かったし、暑さを全く気にしていなかった。それが最高のステージだったという何よりの証拠じゃないかな? メンバー全員が最高の時間を過ごせたよ。毎回感じることだけど、またこのステージに立ちたいと思った。君もまた来たいと思っただろ?

— えぇ、もちろん。オファーがあってからすぐに出演を決めたんですか?

Gaz:そうだね。断る理由は無いからね(笑)。
でも、これまでの7回の中で今年が一番“世代の移り変わり“を感じた年だったかな。出演者とオーディエンス、両方の意味でね。そういう意味ではすごく刺激を受けたし、やっぱり来て良かったと思っているよ。

— なるほど。それでは、このパーティーに出演が決まった経緯は?

Gaz:正直に話せば、久々に日本に来ることになったから、すぐに帰るのが嫌だったんだ(笑)。
Baby Soulも同じ意見だったから、日本に来る前から僕らは少し残って遊んでいくことにしていたんだけど、そんな時に森(ワコマリアのデザイナー、森敦彦)から今回のパーティーの話を聞いた。実はこれまでにも森からは何回か話をもらっていて、僕自身も何か一緒にやりたいとは思っていたんだけど、お互いなかなかスケジュールが合わずに実現することが出来なかったんだ。だから、今回は出来るだけビッグなパーティーをやろうって話をした。結果、これだけ多くの人が集まってくれたし、僕らは1週間も長く日本に滞在することが出来た(笑)。
本当にハッピーな気持ちだよ。

— ワコマリアの存在を知ったのはいつ頃のことですか? また彼らが作り出す洋服はGazから見てどう?

Gaz:恐らく、4年ぐらい前かな。共通の友人を通して、彼らの存在を知ったんだ。洋服に関しては細かいことは分からないけれど、ワコマリアの洋服は大好きだよ。来日している間に最新コレクションも見せてもらったけれど、今回のコレクション(2012年秋冬コレクション)はこれまで以上に個性的だし、型破りだ。すごく良かった。

— Gazはいつもオシャレだし、個性的な洋服も上手に着こなしますよね。いつも洋服はどんなお店で買っているんですか?

Gaz:特に決まったお店で洋服を買っている訳では無いんだ。世界中のあらゆる場所で、気に入った物があればその都度買う。「シャツを買おう!」とか「ジャケットを買おう!」とか決めていくわけでも無く、ただ何となくお店を見渡して、好きな物を見つけたら買うって感じかな。そういう意味で言うと、僕は決して買い物上手じゃないかもね。ただの買い物中毒だ(笑)。
でもあえてファッションに関するこだわりを挙げるなら、ハットと靴は必ず良い物を買うようにしているよ。

Gaz Mayallの著書
「Gaz's Rockin' Blues - The First 30 YEARS」

— たしかに今日も素晴らしいハットと靴ですね。ところで、Gazが主宰するパーティー『Gaz’s Rockin’ Blues』はもう32年も続いているそうですね。これは本当にすごい事だと思うのですが、パーティーを長く続けるコツのようなものがあれば教えてもらえますか?

Gaz:素晴らしい人達と出会うことかな。年齢を問わず、色々な世代の人と常に出会い続けること。これはパーティーだけに限らず、そうすれば、より多くの幸せを共有できるし、結果楽しい生活を送れることにも繋がると思うんだ。DJだって同じだろ? 古い音楽と時代と共に成長している新しい音楽、どちらも知っている方が次の曲をかけるときに、より良い選択が出来る。僕は若者が好きだし、どんなジャンルにおいても“次の世代“っていうのは常に出てくるべきだと思うんだ。

— ではGazにとっての最良のパーティーとはどんなパーティーなんでしょうか?

Gaz:簡単に言えば、最高のサウンドと仲間達、そしてオーディエンスが揃った無料のパーティーかな。入場料が高い豪華なパーティーってたくさんあるけれど、タダでみんなが気軽に来れるパーティーが僕にとっては一番なんだ。具体的な名前を挙げるとするなら、ノッティングヒルカーニバル(1964年からイギリス・ロンドン西部で行われている世界有数のカーニバル)とかね。毎年200万人もの人が訪れて、みんなが笑顔になる。そんなパーティーは世界中を探し回っても、なかなか見つからないよ。

— ぜひ足を運んでみたいですね。ワコマリアにとっては今回が初の主宰パーティーとなる訳ですが、Gazは自分が初めてパーティーを開いた時のことを覚えていますか?

Gaz:もちろん! 忘れる訳は無いよ。1980年の7月に西ロンドンのクラブで初めての『Gaz’s Rockin’ Blues』をやったんだけど、その時の事は今でも鮮明に覚えている。現場にはタクシーで向かったんだけど、距離が近づくに連れてすごくドキドキしたし、興奮した。「これから何が起こるんだろう」って感じで、口から胃が飛び出そうなぐらい緊張したな(笑)。
ありがたいことにオーディエンスがたくさん来てくれて、狭いクラブだったから、ぎゅうぎゅうだったし、すごく暑かったけど、何ものにも代えがたい最高の時間だった。今年の7月に丁度、アニバーサリーパーティーをやってその時にも少し緊張したけれど、初めての『Gaz’s Rockin’ Blues』に比べれば、可愛いものだね(笑)。
だから今日の彼らもすごく緊張していると思うけど、これは一生忘れられない思い出になるだろうし、その一員としてここに居られることを誇りに思うよ。

— 少し話は変わりますが、最近の日本では草食男子なんて言葉も流行っていて、それに反発する形で“男らしい男”を求める声も多くあります。Gazにとっての、“男らしさ”とはどんなものでしょうか?

Gaz:難しい質問だね…うーん、一言で言うならハートが熱い奴かな。本当の男っていうのはそういうものだと思う。僕の友人にも“本当の男”と呼べる人が何人かいるけど、何よりもハートが全然違うよ。熱いハートさえあれば、見た目だとか、ファッションだとかは大した問題じゃない。

— なるほど。Gazもそうですが、“男らしい男”というのはいつの時代も女性にモテますよね。パートナーであるBaby Soulとはどんな風に出会ったんでしょうか?

Gaz:僕らはもう10年近く一緒にいるんだけど、初めて出会ったのは、彼女がノッティングヒルゲイトの小さなクラブでDJをしていた時。最高のDJだった。今でもそうだけど、女性であそこまでプロフェッショナルなDJを見たのは初めてだったよ。「どうやったらあんなに若い子がこんなに格好良いニューオーリンズやファンク、ソウルをかけられるんだ!」ってすごく驚いたのを覚えているよ。まぁ、要するに一目惚れってことになるのかな(笑)。
その日、彼女がダンスフロアに降りて踊っているのを見かけて、迷わず誘ったんだ。

黒澤明が監督した映画「用心棒」のDVD

— 10年以上経ってもこんなに仲が良いのは羨ましいことですね。Gazは日本に良く来てくれますが、日本のどんなところが好きなんですか?

Gaz:日本は最高だね。食、文化、人と全てにおいて言える事だけど、線や形、カラーが上手に掛け合わさっていて、とても面白いよ。日本人は動作がすごくシンプルで美しいんだ。黒澤明監督の映画『用心棒』が大好きなんだけど、その中に出てくる人々の動作がとても魅力的で、それが現代にも続いているように思う。西から東にかけてのコントラストも素晴らしいね。

— それでは逆にGazの故郷、ロンドンの魅力はどんなところだと思いますか?

Gaz:18歳でお酒もタバコも出来ることかな(笑)。
というのは冗談だけど、ロンドンは何時でも色々なカルチャーがミックスされているんだ。ステレオタイプに思われることもあるけれど、本当は常に生き生きとしている若者の街。だから、僕は新しいことは何でも試して、街に適合していくようにしているよ。

— 最近の若いバンドやアーティストで何かオススメがあれば教えてください。

Gaz:The Strypesっていうアイルランドのバンドがいるんだけれど、彼らはすごく若いし、良い音を出すよ。他にもバンドでは無いけれど、良いDJはたくさんいる。

— 最後に、今後の目標や夢といったものが何かあれば教えて頂けますか?

Gaz:僕ももうこんな歳だし、特に無いな(笑)。でも、『Gaz’s Rockin’ Blues』やこういったパーティーを変わらずにこれからもやっていければ良いよね。さっきも言ったけれど、僕は若者が好きだし、これからも色々な世代の人たちとの出会いを大切にしていきたいと思っているよ。

次のページは『GUILTYなPARTY SNAPと共に振り返る狂乱の一夜』です。