Dapper Danからブートレグ、セットアップまで ー ヒップホップカルチャーに魅せられた、ある偏愛家のコレクション

by Yugo Shiokawa

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7. セットアップ & More

illllllllllluss氏がとにかくこだわる、セットアップ。既出のブートレグモノをはじめ、90年代初頭にヒップホップやレゲエのシーンから生まれたブランドのモノも収集中。服を買うというよりは、「着ることもできるアート作品」という感覚で集めているそう。

i「これはFAT BOYSのデーモン(Damon ‘Kool Rock-Ski’ Wimbley)が実際に着用した、本物のステージ衣装。名前も入ってて、クリーニングのタグもついたままです。セットアップだからいいんですよね。セットアップで揃うからこそのアートピースというか、本人着用の1点ものなのでなお良しですね」

i「Clickっていう、レゲエなイメージが強いブランドのセットアップで、Gang Starrが2ndアルバム(“Step In The Arena”)のジャケットで着てるセットアップもここの服。このブランドは探しても中々出てこないですね」

i「これはDisanっていうブランドで、僕もちょっと詳細はわからないんですけど、この時代ならではの極太畝のコーデュロイとか、パッチワーク風の裏地とか、このセンスですよね。これにラスタベルト垂らして、ランキンタクシーさんやチャッピーさん、BOY-KENさんのイメージですね」

i「このふたつはMajor Damage。CROSS COLOURSとかと大体同じ時代で、日本にも当時それなりに流通していたと思います。悪趣味極まりない柄とその切り替えが、他のブランドの追随を許しません」

i「で、これがMajor DamageのなかのCHARCOAL by Major Damageっていうラインのモノ。裏地のキルティングなのかなんなのかわからない感じとか、表にも裏にもタグが一杯付いてたりっていうのが素敵だなと(笑)。あっちこっちにタグを付けるっていうのも、この頃たくさんありました。
またこの時代は、ひとつのデザインを無数にあったライバルブランドが容赦なくパクっていて。切り刻んだダメージ加工に、ガンショット系、パッチワーク系…どのブランドも同じようなデザインでリリースしてましたね」

i「80年代のTROOP、90年代のCROSS COLOURSみたいに、当時日本にもかなりの数入ってきたブランドはだいたい手放しちゃったんですけど、このGET USED BY ELIEのセットアップは、MICROPHONE PAGERがメンバー全員でこの上下を着てライブしていたのを覚えていて、それはそれはカッコ良かったですね」

i「この3つはWICKEDっていう、ダンスホール系の人たちが良く着用していたブランド。Ninjamanがここの服を着てライブしていたビデオが印象に残ってます」

i「90年代前半この辺のブランドのなかでも気に入っているのが、MACHINE。後期はブランド名をMACHINE GUNに変更するんですけど、Public Enemyの『Fight The Power』だったり、スパイク・リーの『マルコムX』だったり、Naughty By Natureの『O.P.P.』だったり、その時流行っていたものを節操なく放り込んでくる感じがいい。しかも半袖、長袖、ベースボールシャツ、ジャケット、パンツも組み合わせ自由のセットアップ。ファッションの流行は20年周期で繰り返す、なんてよく言いますけど、そういうサイクルに取り残された服にこそ、強烈に惹かれるんですよね」

i「グラフィティがペイントされたGジャンも大好きです。左が多分80年代のLeeなんですけど、ペイント後1回も洗濯していないようで、アメリカから手元に届いたときは、今まで嗅いだ事のない、ものすごいスメルでした」

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