#3. 「黒部エリぞうのNY通信」
お次はニューヨークつながりということで、NY在住歴16年のファッションコラムニスト、黒部エリさんによる2005年スタートの長寿ブログ「黒部エリぞうのNY通信」を。ファッション情報(レディースが中心)はもちろん、アートやカルチャー、そして現地ならではの食や生活に関する話題に至るまで、濃い内容をテンポ良く読ませてくれます。
アンケートでは、文章のプロフェッショナルがなぜ仕事以外でもブログを綴るのか、というところから、日本から情報を集めているだけではなかなかわからない、現地のファッションに関するリアルタイムな動向まで、幅広くお伺いすることができました。
Q1. ブログをはじめたきっかけを教えてください。
A1. 94年にNYに移住したことで、新しい文化に触れるカルチャーショックがあり、それを雑誌の記事とはべつに、個人として伝えたくなったというのが大きな理由です。
そこで2001年からメールマガジンやウェブジンを始めたのですが、そのうち素人でも無料で簡単にアップロードするブログ機能が出始めたので、05年にエキサイトでブログを開設しました。
ウェブジンの”NY Niche“は今でも仲間と続けています。
Q2. 今年一番印象に残ったファッションに関するニュースはなんでしょうか?
A2. リアルに影響があったのがNYコレクションが今年9月からリンカーンセンターに移ったこと。メディア側としては、移動や取材方法に違いが出て、なかなかのチャレンジでした。
その他日本に関することでは、中国企業によるレナウンの買収、ハーパース・バザー誌の休刊など、時代の推移を感じさせるニュースが多くて、感慨深いものがありました。
Q3. 今までで一番反響があったのはどんな記事でしょうか?
A3. どれが一番かというとよくわからないのですが、大きな流れでいうと、NYコレクションの速報、セレブがらみのファッション、それからカルチャー的な記事が人気あるようです。
ファッション情報コラムよりも、生き方や人生に対する考えについて書いているようなコラムのほうが、より反響がある感触があります。
Q4. 最近注目しているトレンドやスタイル、その他コト・モノ等ございましたらお教えください。
A4. 今年のNYで目立ったのは「プラザ・フード・コート」や「イータリー」といった、イートインができるグルメ・マーケットが次々とオープンしたこと。日本でいうデパ地下がなかったNYですが、外食に比べて「内食」や「中食」への需要が増えているのではないかと感じました。
ファッションについては、来季はロングスカートやワイドパンツといったシルエットがガラッと変わる服装が出回りそうで楽しみです。
デザイナーとしてビッグになりそうなのが、プラバル・グルンとアルツザラ。
新人で注目したいのが、キンバリー・オービッツ。ジュエリーではパメラ・ラブが躍進株。
メンズではビリー・リード、ロバート・ゲラーが注目。
ブランドで今年躍進したのは、店舗を増やしたラグ&ボーン。
人気絶頂のアレキサンダー・ワンも路面店をオープンする予定。
やはりそこそこリーズナブルな商品が強くなっていると思います。
またアレクサ・チャンとコラボしたメイドウェル、あるいはキャンバスのラインを出したランズエンドなど、従来ファミリーむけの老舗アパレルが、若い層に向けてイメージチェンジしているのも目につきます。
日本では男性のパンツが細身でブーツにインするスタイルが流行っているようですが、NYでは一部でしか見られないので、おもしろい違いがあるなと感じました。
Q5. よく行くショップ、好きなブランドは何でしょうか?
A5. よく行くのはJクルー。ジェナ・ライオンズが手がけるようになってから、デザインが小洒落ていて、使える日常着が多いです。またVinceもリアルに使えて、よく買うブランド。
好きなブランドはマルニ、3.1 Phillip Lim など。
NYブランドではマーク・ジェイコブス、アレキサンダー・ワン、タクーン、プロエンザ・スクーラーも観るのが楽しみ。
コレクションが気になるのは、フィービー・フィロのセリーヌ、アルベール・エルバスのランバン、ニコラ・ゲスキエールのバレンシアガなど。コム・デ・ギャルソン、マルタン・マルジェラも好きです。
Q6. 影響を受けた人・映画・音楽・書籍などがあったらお教えください。
A6. 物書きなので必然的に小説になりますが、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」にもっとも衝撃を受けました。
好きな作家はジョナサン・キャロル、トニ・モリソン、ジャケット・ウィンターソン、カズオ・イシグロなど。
日本では内田百間、三島由紀夫、村上春樹など。
最近ではイーユン・リーの短編集「千年の祈り」がすばらしかったです。
映画ではジャン・ピエール・ジュネの「シティ・オブ・ロストチルドレン」がいちばん好きな作品。
他にテリー・ギリアムやティム・バートンも好き。
■Cluster的チェックポイント
さすがファッションジャーナリズムに関わる方だけに、ナマの濃密な情報が満載。あぁ、ニューヨークに行きたいっ!!
次のページは『#4. Elastic』編です。