「アウトサイダー」が起こす、ファッション業界のフランス革命。

by Mastered編集部

Dany dos SantosとMaxime Schwabという2名の若者が2014年にフランスでスタートさせた[DROLE DE MONSIEUR]。デザイナーとしての経験がある訳では無く、世界の4大ファッション都市(Paris、London、NY、Milano)に住んだことも無いという異色の経歴を持つ彼らは、自らを「アウトサイダー」と称し、フランス中部のディジョンという街で、密かにファッション業界のフランス革命を企む。

目立った宣伝活動はインターネットと口コミのみにも関わらず、ブランドスタートから僅か2年で、様々な海外メディアに「Best French Brand」として紹介されるまでになった[DROLE DE MONSIEUR]。2016年秋冬シーズンからの本格展開に先駆け、先日、吾亦紅~WARE-MO-KOUで開催されたポップアップストアの為に来日した彼らにたっぷりと話を訊いた。

Photo:Takuya Murata、Text&Edit:Keita Miki

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僕らはアウトサイダーなんです。ファッション業界がフランス中心に動いているなんて考えは持っていません。(Maxime Schwab)

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— まずはお2人の出会いから教えて頂けますか?

Dany:[DROLE DE MONSIEUR]はフランス中部のディジョンという場所で生まれました。僕たちは、その隣の小さな町で育ったのですが、元々は僕がMaximeのお兄さんと知り合いだったんです。Maximeとは、かれこれ7年ぐらいの付き合いになりますかね。

— ブランドを始めることになった経緯は?

Dany:2人ともスニーカーが好きで、当時、市場に自分たちが魅力的だと思うスニーカーが少なかったので、スニーカーのブランドをやろうという話になったんです。けれども、僕らにはコネクションもお金も無かったので、まずはスニーカーと比較するとコストのかからない、洋服から始めてみようと。2人で話し合った結果、2014年から[DROLE DE MONSIEUR]をスタートさせることとなりました。

— ブランドを始める前はそれぞれどんな仕事を?

Dany:僕は学生で、主にファイナンシャルの勉強をしていました。

Maxime:レストランでマネージャーをしていましたね。ファッションとは縁遠い職場でした。

— では、当時はファッションの世界に足を踏み入れることは考えていなかった?

Dany:ファイナンス関係の仕事に就こうと思っていました。学生の頃はファッションを仕事にするなんて考えもしませんでしたね(笑)。

Maxime:同じく。レストランのフランチャイズ展開を画策していました(笑)。ファッションは好きでしたが、あくまで消費者側としての話であって、仕事にするとは夢にも思いませんでした。

Dany:僕たちは都会の人間では無く、アウトサイダーなんです。幼い頃から、日常的にファッションの情報を得ていた訳ではありません。でも、インターネットが発達したお陰で、アウトサイダーでも多くの情報を得られるようになった。それが嬉しくて、いつも2人でファッションの話をしていたんです。

— この間、[sansnom.(サンノム)]の2人にもインタビューをさせてもらったんですが、その辺りの感覚は彼らと非常に近いのかなと感じました。

Dany:たしかに。[sansnom.]の2人の出身地であるリヨンはディジョンのご近所ですしね(笑)。年齢も近いし、感覚は似ているのかもしれません。パリ=ファッションキャピタルというイメージが先行するのも分かりますが、パリの人間では無くてもクールなモノを創り出せるということを示したかったんです。

Maxime:フランスはパリだけじゃないということをファッションを通して見せたかった。皆がパリで同じような音楽を聴いて、同じような建築物を見て、同じようなインスピレーションを受けていたら、自然と出来上がるモノは似たり寄ったりになってしまいますよね。実際、色々な人から「君たちはディジョンを拠点にした方が良い」とアドバイスを受けたりもします。

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— そういった2人の考えが、コレクションのアイコンでもある「Not from Paris madame」というメッセージとして表れていますもんね。

Maxime:その通りですね。先ほどDanyが言った”アウトサイダー”という言葉には、田舎町出身という意味の他に、ファッション業界の外部の人間であるという意味も含まれています。スタートした時は、本当にファッション業界に1人も知り合いがいなかったんですよ。

— 洋服作りに関する知識はあったんですか?

Dany:いえ、僕もMaximeも本当にゼロからのスタートでした。クリエーションに関してはもちろん、経営に関しても知識を持ち合わせていませんでした。

Maxime:周りの人の手助けと、あとはインターネットあってこそですね(笑)。

— クリエーションに関する意見は、2人の間で一致しているのでしょうか?

Maxime:基本的に好きなモノは同じなんですが、その中で小さな好みの違いはあって、時にはやり合うこともありますよ。でも、モノを作る上でそういうのは大事なことだと思うので、良いバランスなんじゃないでしょうか。

Dany:Maximeの方が僕よりもミニマリストな傾向があります。なので、Maximeのアイディアに僕がアレンジを加えていくことが多いですかね。お互いの考えをミックスすることで、2人でやっている意味が出てくるのかなと思います。

— 来シーズンから本格的に[DROLE DE MONSIEUR]のアイテムが日本に上陸することになると思うのですが、自分たちのブランドの魅力をそれぞれの言葉で表現すると?

Dany:スタイルとして見ればヨーロピアンテイストになるとは思うのですが、その中でも型にハマらず、どこかリラックスした雰囲気をコレクション全体を通して提案しています。色々な意味で、常にインディペンデントな存在であるというのが、一番の魅力ですかね。

Maxime:繰り返しになりますが、僕らはアウトサイダーなんです。ファッション業界がフランス中心に動いているなんて考えは持っていません。もちろん、自分たちの故郷に愛情はありますが、そういう意味ではフランスという国に特別なこだわりを持っている訳では無いんです。これからも固定観念に囚われず、良い意味で自由にやっていけたら、と。

— ブランドのキーワードとして”ユニセックス”という言葉が1つ挙げられますが、これにはヨーロッパ特有の固定的な概念に対するアンチテーゼ的な意味合いも含まれているのでしょうか?

Dany:おっしゃる通りです。例えばヨーロッパの女性は身体にフィットした洋服を着ることが多いですが、僕らはリラックスした洋服を着ている女性も素敵だと思います。僕らの世代では、ボーイフレンドの服を女の子が着ていることは極々普通のことですし、そういう今の感覚を大事にしていきたいなと思っています。

— それでは最後に[DROLE DE MONSIEUR]の今後の展望について教えてください。

Dany:今の段階では春夏、秋冬というファッション業界の流れに合わせてコレクションを作っているのですが、今後はシーズンやタイミングをあまり気にしなくても良いアイテムを増やしていきたいですね。

Maxime:日本の生地を使って、MADE IN FRACEでモノづくりをするというアイディアが進行中です。日本の皆さんも、仕上がりを楽しみにしていてください。

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